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ブーメランのような

あなたのままでいい
そんな言葉を口にできる人は、案外少ないのではないかと思う。二十数年ではあるが、これまでの人生で滑らかに「それでいい」と言ってくれた人は、ただ一人。

大学生、または大学院生と教員は、親しくなれば何でも話すようになる。私とその教授―M先生は、割と気が合うので、ゼミの後やちょっとした時間にぽつぽつと思っていることを話すことがある。

こんな会話を覚えている。M先生と私=Yとしておこう。

「この一年はどうだった。五点満点で言えば?」
「四点です」
「結構高評価。どうして」
「・・・自分で、研究のことやそれ以外のことを、自分で考えられたと思うので」
「そう、それがYの良さ。じゃあ、あと一点は何が足りなかった?」
「考えるだけでは駄目でしょうという意味です」
それでいいんですよ

それから数か月後には、こんな場面があった。

「また二年、よろしくね。ゼミでは、一つ下の子たちに今までみたいに意見を言ってやって」
私は後輩と接するのが苦手だったが、それ以前に。
「私、思っていることしか言えないです」
いいよ、それで
本当かなあ。

あなたのこんなところが良くて、そのままでいいと言われるよりも、M先生のように私の発言に反応して「それでいい」と言われた方が、恐らくは自信になるのだ。実際に、私は吐いた言葉を頭の中で反芻して、より自分が大事に思うものに気が付いた。

他人の思考に対して「それでいい」と言えるためには、私もあなたも受け入れるという姿勢が必要で、どちらか一方では俯瞰すると辻褄が合わないのだ。そして、誰もが自分と他人の思考を受け入れていることには何の問題もないはずだ。

私なら、どんな風に「それでいい」と言えるだろうか。


#やさしさに救われて

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