【爆速お嬢様(※)】壱百満天原サロメはどこまで行くのか【快進撃やまず】

(※一般人)

チャンネル登録者130万人に到達

 再度ではあるが、VTuber「壱百満天原サロメ」嬢の話をさせて頂く。
 タイミングとしては、最新デビューのはずがにじさんじのトップライバーになるというところ。執筆時点ではYouTubeチャンネル登録者数130万人に到達しているが、最上位に132万人の「葛葉」がいるため未達……といってもこれを追い抜くのも時間の問題だろう。また、ホロライブ所属の「がうる・ぐら」がVTuber初の登録者数400万人を達成したという件もある。にじさんじを運営する、5月末に東証上場を果たした「Anycolor株式会社」の資産時価総額がフジテレビの持ち株会社「フジ・メディアHD」を上回ったというニュースも同日に報じられている。なおAnycolor社の代表取締役CEO田角陸(たずみ・りく)氏は、サロメ嬢の初回以降数度にわたり配信の待機画面に登場したTシャツ姿の男性である。所属会社の社長をあんな使い方するのもおかしい訳だが。

ペースは下がっているものの、1日あたり3万人

 さて、噂につられて3回目から配信を見始め、100万人到達の瞬間を見届けた者としては、さすがにそれまでの勢いと比べれば少し落ち着いたような印象を受けている。受けてはいるが、それでも30万人加増まで10日である。異常なハイペースといって何も差し支えない。数字的比較で言えば、その10日間でがうる・ぐらが新たに獲得したチャンネル登録者は4万人。これも相当だが、単純に計算すれば7.5倍のスピードだ。増加率で言えば30倍となる。
 前回エントリでも言及したが、サロメ嬢は国外のVTuber視聴者にも市場を広げている。もっと言えばVTuber市場そのものの拡大を、実質「請け負っている」状態だ。VTuberの登録者数についてのデータを分析したYouTuberによると、にじさんじ所属ライバーだけでも5月24日からの2週間7%の登録増が認められたとか(サロメ嬢を除く)。ホロライブぶいすぽ等の他プロダクションについてのデータ分析は寡聞にして見ていないのだが、おそらくそれなりに増加傾向にあるものと考えられる。推定だが、がうる・ぐらの400万達成にも「サロメショック」の後押しがあったと見てよいのではないだろうか。

コンテンツ取り扱いに関する「慎重」論

 その裏で、にじさんじとしては「ローレン・イロアスの失言問題というネガティブな話題もあった。差別的な文言を、本人はそれと知らずに配信で発言してしまったとのことで、大きな処分こそ受けていないが、活動を現状のまま継続することを良しとしない向きもあるようではある。以前にも違法ダウンロード問題で1か月半以上の「謹慎」処分となった経緯もあり、おそらく「3度目はないぞ」という執行猶予状態で扱われているものと思う。特にVTuberであるとはいえ、プラットフォームがインターネット配信であるだけで本質は芸能活動なのである。イメージを損なうことは即株価下落、マイナスイメージの呪縛という、上場企業として最も避けるべき陥穽に嵌まり込むこととなる。そうした危うさを孕む状態で活動を継続させる判断をしたことは、イロアス本人の改悛意識とAnycolorにとっての収益性・話題性バランスを考慮した結果であろうから、相応の危機感をもって臨んでいるはずではある。
 このあたりは同じ所属ライバーである「イブラヒム」も懸念しているようで、サロメ嬢のデビュー間もなくの自身の配信で「慎重に扱った方がいいと言及していた模様。ちなみにその際、イブラヒム自身はサロメ嬢の名前を覚えておらず「あーだこーだサロメ」という濁し方をしていた。これに目くじらを立てる向きも当然あるにはあったが、おそらくサロメ嬢初配信の直後なので致し方ないものと考える。こんなものまで失言扱いしていたらとてもではないがコンテンツ産業自体が成り立たなくなるだろう。ましてやイブラヒムという人物像が、他者に対する解像度の低さという側面を持ち合わせているコンテンツである……と筆者は把握しているので、相当数いる後輩ライバーの中の特異点ひとりに関する曖昧な捕捉は当然の範囲で、言うなれば織り込み済みと言うしかない。もしイブラヒムがそれを改めて撤回するような気持ちが生まれれば、そのようにすればいいだけのことと思う。
 こうした諸先輩ライバーらに対する姿勢、またコンテンツとして視聴者へ向ける姿勢に関してだが、サロメ嬢はここについても傑出した感性を備えている。100万人登録達成時も「おバイオ7クリア達成時も、視聴者はさることながら、にじさんじのみならずVtuberとしての礎を築き上げてきた先人たちに対する感謝の言葉を述べていた。一般人を自称するにはコンテンツとしての振る舞いが優秀すぎる。

現実とのリンク・地震編

 特に大きく取り上げておきたい事象をひとつ。
 当エントリ執筆時は2022年6月17日夜間であるが、前夜(同日0時/前日24時)の配信で「バイオハザード7」に次ぐゲームとして「絶体絶命都市2」の実況を開始した。舞台が2010年のジオフロントに造成された「地下都市」で、落成記念パーティの最中に水害が発生して主人公(パーティ会場のホテルのウェイター)達がその中から逃れるというシナリオ。……なのだが、豪雨の影響でホテルの広間のフロアが浸水し建物の崩壊が進んでゆく場面をプレイ中の0時51分徳島県を震源とする最大震度4を記録する地震実際に発生した。推定M4.8、震源の深さは同50km、東海北陸から中国四国に及ぶ広範囲で揺れが観測された。震度4は震源地至近の徳島県阿南市山口町1ヶ所のみ、ほか徳島県・香川県・高知県・兵庫県淡路島・和歌山県の各県内で震度3が観測されている。下記リンクは気象庁の記録である。

 サロメ嬢は関西在住であることを公表しており、おそらく震度1か2を観測したエリア在住かと思われるのだが、地震の発生に際しては視聴者に落ち着きと速やかな避難行動を強く呼びかけ、配信はアーカイブでも視聴可能であること、揺れの大きかった地域の視聴者へは大きな揺れが続くこともあるという警戒自らの命を守る行動とを勧奨して、丁度ゲームの区切りがついたタイミングでもあったが、直後に配信を終了させた。
 直接被災したかどうかは分からないが阪神淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震(1995年1月17日、最大震度7)についてはよくよく聞き及んでいると思うし、また大阪府北部地震(2018年6月18日、最大震度6弱)も経験していて、東日本大震災(2011年3月11日発生の東北地方太平洋沖地震、最大震度7)についてもその惨状は当然知っているはずなので、そうした災害への心構えがあるというのは当然と言えば当然なのだが、リアルタイムの発災に対するコンテンツ発信者の対応としてはそれこそ満点であったと言える。
 配信終了に際して「また皆様と楽しい時間を過ごしたいので、絶対に生きてまたお会いしましょうね」という旨の言葉を視聴者に投げかけてもいる。その壇上の人っぷりは実に見事で、「ああ、たまたまとはいえまた伝説が積み上げられたな」と感じた。このような胆力を見せられるコンテンツとしての存在は非常に稀有であろう。
 そのあたりの「底力」は、コンセプトのひとつである「皆様に100満点の笑顔をお届けしたい」という言葉を実現するものとして作用しているようにも見える。

配信コンテンツの現況と視聴者の評価

 さてデビュー発表からおよそ4週間、配信動画も「shorts」を含め23本となり、中には「英語のお勉強」「空気読み」等で出してきたゴリ押し感もあるが、サロメ嬢への評価がおおよそ固まりつつある様相がある。即ち、「頭の回転が速くトークスキルが高い声質が良い時間配分が良いときどきぽんこつ」という具合である。配信の最初や最後で出すべき画像・映像を間違えたり、マイクやBGMを入れ忘れたり、配信開始のボタンを押し忘れたりなど、「ぽんこつ要素は既に愛嬌の要素として受け入れられている(あるいは「胃カメラ」に並んで語るべきかもしれない「虫耐性の高さ」や「おしっこ談義」についてもそうした要素と捉えた方がいいだろうか)。もしこれらの要素がなければ、もう少し視聴者層は狭まっていたのではないかとも考えるところだ。
 実績を数字で見ると、初回配信(5/24)は本日時点で最多395万回再生、最も少ない再生数でも「おバイオ7おつかれさま会」(6/15深夜)で同40万回となっている。ゲーム実況配信において特に顕著だが、総じて日付の浅い動画ほど再生回数が低いのは後追い再生・アーカイブ視聴でそれだけ伸ばしているということにもなり、自然な現象と言える。
 しかし雑談配信である「初回配信振り返り」(5/31深夜、同132万回)と、本来雑談になるはずだった「100万人登録記念焼肉回」(6/8深夜、同179万回)の再生数が逆転しているのは興味深い。
 これについては、後者が結局「焼肉シミュレーター」のプレイ実況動画になっている点と、しばしば配信途中で「事前に決めたゲームスコアに応じて自分が食べる肉を焼きに行く」(結果として実際に焼いていたのはソーセージと卵だけなのだが)という、記念配信としてもかなりの離れ業を見せたためかと思われるが、その、なんというか、やることがやはりかなりの規格外品感を出しまくっていて、見ている方としても困惑していたというのが正直なところだ。スコア上は達成していた「スーパーの肉」は冷凍されたものしか見つからずにパニクっている様子も丸聞こえで、むしろ「おバイオよりハラハラしてしまったような気がする……。
 サロメ嬢本人も終了直後にこのような述懐ツイートを投稿している。

 ちなみに「焼くはずだった肉」は野菜室に入っていたそうで。

今後の展望をこじつけてみる

 ことに初回配信が24日経過した段階で約400万回に至らんとしている点は特筆に値するもので、これがどのくらい凄いのか……ということを示そうとすると、どうしても数字としての比較というのが付き物になってしまうのだが。

  • 壱百満天原サロメ130万人/初回配信2022/5/24、395万回(24日経過)

  • がうる・ぐら400万人/初回配信2020/9/13、508万回(642日経過)

  • 森カリオペ207万人/初回配信2020/9/12、161万回(643日経過)

  • キズナ・アイ308万人/自己紹介動画2016/12/1、384万回(2024日経過・2022/2/26より休眠中)

 ひとまずこの4者の顕著な数字を並べてみた。もう「親分」の数字を超えてるのおハーブですわ
 こうした数字から正比例的なものを求めるのは乱暴だが、おそらくYouTuber・VTuberともに、一定以上の登録者数を獲得できて以降、ある程度の活動期間を経る初回配信の再生回数チャンネル登録者数の間に何らかの「揃い」が生じるような気がしている。あくまで無検証の仮説であるので、信じ込まないでほしい。見出しの通り、こじつけなので。
 森カリオペオリジナル曲の配信が相当回数を伸ばしているらしく(初回の翌日に公開された動画は3200万再生)、それらがチャンネル登録に繋がりつつも初回配信の回数リンクしていないという状態であるようだ。
 今後のサロメ嬢の活動内容にも依る所はあろうが、少なくとも初回配信の再生数のみを見ると、現在の登録者数より最低でも2倍~2.5倍ほどは逓増があってよいポテンシャルを持っていると見るのが妥当、と勝手に考えている。
 なおがうる・ぐら森カリオペも主に英語での配信であるために可視聴層の母数が大幅に異なるという面があるにはあるのだが、サロメ嬢に関しては切り抜きツイート英訳・中国語訳を付して補足投稿をする「勝手連」も結構な割合で確認できるため、その市場とする範囲が他の多くの日本人VTuberとも英語話者VTuberとも条件が異なるというのが筆者の見立てだ。つまり、上記の仮説による計算を超える部分については全くの未知数
行くところまで行ってほしい」というの発言をそのまま飲み込むとすれば、ファン心理としてはやはり世界一かそれに準じた所まで活躍の度合いを伸ばしてほしいという気持ちは否定できない。あと、限定的な年代のオタクムーブにどれだけの人がついて来られるのかという心配もないこともないが。
 とにかく、配信を享受する側としては彼女の「真のお嬢様への道」を見守るしかないのだろう。

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