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【第4話】YOKO



お客さん連れてきたよ!
この言葉には正直参りました。
暖簾の先に 厨房があるであろう
暖簾が開いた瞬間

「おお!ようこ、えぇの上がったがか?」

土佐弁 なのか「ガ」とか「キ」とかが多い。
(ようこ?陽子?洋子?って名前なんだ。)

店主の視線の先はこちらに移動する
「あら? あんたさっきの、、、。」
恥ずかしさでいっぱいになる。
なにせ、
「鶏の唐揚げ定食 大盛り」を食べながら
号泣するお客ですから
暖簾の奥からまた
「あらあんた!さっきの兄さん」

この世界は広いようで狭い。

そんなこと考えていると
私 の袖から弟さんが
発泡スチロール 抱え込んで
厨房の方に入っていく。



ようこさんは
「あら?おばさん、この人知ってるの?」
「知ってるも何も さっき来ていただいたお客さんだよ」
ようこさんは目を丸くし私を見て
「うんうん 世界はちっちゃいき」
と大笑いしたのでした。
私も笑ってる場合ではないのですが
もらい笑い 照れ笑い
続けて ようこさんは
「今日ここに泊まんなよ!本来なら食事付きで2万だよ
だけど兄さん ラッキーだねぇ!
もうここで食事してるんだったら
食事付き1万8000円ってところで
手を打つんじゃないの?ねぇおばさん!」

と勝手に薦める。

女性版 フーテンの寅さんばりに薦めてくるのだ。
頓挫した自分の人生これからどうするか
この死にぞこない】
は、少し疲れた 自分を
落ち着かせるためにも この旅館で
この先を考えてみるのもいいのかもしれない


☆一番星☆


そう思った私は 軽くおばさんに会釈した
「とにかくあんた お風呂に行きんさい」


おばさんは 私が寝る部屋を案内してくれた
襖を開けると布団が1枚
簡易的なタンスが1つ ちっちゃい冷蔵庫が1つ
木造の畳部屋6畳、物がひしめきあっている
荷物のない私は とりあえず 風呂場に行った。


家族4人が入れそうな露天風呂が一つ
汗か雨かわからないものが私の体にへばりついていて
それ以外のものも
私の心の中にへばりついているもの全て
洗い流せたら
どんなにか楽だろう
そんなこと思いながら体を洗った。

露天風呂に浸かりながら
空を見上げていると
夕暮れに
一番星
見つけて
「綺麗だなぁ、、、。」

人は自分の死を悟った時、 周りの景色が変わって見える


一番星見つめ

「何でもないようなことが幸せだったと思う」

というその当時、流行り歌であったように
何度も何度も心の中でリフレインするのでした。

すると、

どこからともなく私の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「〇〇さん!」
(名前を呼ばれドキドキする自分の後ろめたさよ)
「あんたパンツのサイズ L か M どっち?」
え?と思ったのだが
とっさに「 M です」と答えた。

先ほど名前を知ったようこさん
性格が男みたいな人で
そんなこと言ったら殴られそうでもあるが
野球のピッチャーで言うところの直球 投手とでも言おうか
変化球は投げそうにない。

高知の女性はこういう人が多い気がする
私は湯船に浸かりながら
実家のこと、 友達のこと、会社のこと、
そして彼女のこと
1年後に結婚の約束までして、、、
考えれば考えるほど涙が出そうになる

もう泣くな!泣いてどうなる!

それもこれも全部自分にあるのだ
私はなんてバカなことをしてしまったのだろう。

一瞬にして そういった人たちを裏切ってしまった
そしてまた 私はここに居て
人の温かさに触れ
それゆえに また自分を責めるのです。

別な意味でのぼせてしまいそうなので
私は風呂から上がることにした

脱衣所のかごに M サイズのパンツが置いてある
思わず 「ありがとう」と手を合わせるのです。

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【第5話】カツオ


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