3000年前のイーストを使ったビールがイスラエルで発売される―
最近、イスラエルという土地の歴史をまさに凝縮したようなビールが発売されました。
ビールという事で、はじまりはバーでの会話
さかのぼること数年前、友人であるビール職人とヘブライ大学の歯学部教授があるバーでビールを飲んでいた時、こんな話になったのです― 古代のビールのつぼに付着したイースト菌を復元したら、古代のビールが復元できるのでは?
2人はその後「まさか~」となって、その場はそれで終わったのですが、歯学部の教授はその後同じ学部の微生物学者たちと話し合い、実験を行うことにしました。
中東におけるビールの歴史と重要性
ビールは紀元前4千年紀(前4000~3000年)から、メソポタミアとエジプトでは飲まれていたことが分かっており、古の時代より老若男女を問わずに貴重な栄養源や(時には)水に代わる水分補給の手段として、親しまれてきました。そしてメソポタミアとエジプトという、最古のビール文化がある文明の狭間に位置するイスラエルでは、多くの遺跡から注ぎ口にフィルターのあるビール用のピッチャーが出土しています。
日本のお茶のための急須と同じ要領で、ビール=濾して飲むものだったのです。
そうするとフィルターの穴の部分や、ピッチャーの内部にイースト菌が付着している。それをどうにかして取り出し、培養できないものか―
そんな疑問からヘブライ大学の歯学部は実験を重ね、研究チームは古代のビール用ピッチャーからのイースト菌の摘出・培養に成功したのです。
他大学へ広がった、協力の輪
実験成功を受けてヘブライ大学の研究チームは、考古学庁やテルアビブそしてバル・イラン大学の考古学者たちに協力を要請。すると各大学から、様々な時代と遺跡から出土したビール・ピッチャーが提供されました。
ベエルシェバとガザ地区の間にあるネゲブ砂漠の遺跡-
紀元前3000年ごろのエジプト人による遺跡。国内で最古のビール醸造所跡が発見されている。ペリシテびとの町の1つガテ―
ペリシテびとの間ではビール文化が盛んだった。ラマット・ラケル(エルサレム南部)―
ユダ王国時代後期の町。ユダ王国の領地だったが、その後アッシリアやバビロニア、ペルシャ帝国から送られた統治者が住み、エルサレムを監視した。
という3つの遺跡から、エジプト第1王朝時代(前3100年)から、紀元前4世紀(ペルシャ時代後期)までのビール・ピッチャーが提供され、まずは各々の時代・文化の製法に沿った方法で作られた『当時のビール』がそれぞれ完成。
そしてその後は、アシュケロンの南にある「シクマ・ブリュワリー」との商品開発を経て、この度「ハ・ミシュテ(ヘブライ語で祝宴の意)」というビールが完成しました。
ハ・ミシュテ(祝宴)
イスラエルの歴史をこの一瓶に詰めた、このハ・ミシュテ(祝宴)。ビールとしてはベルギー風エールビールに分類され、ベースはイスラエル産の大麦麦芽が使用されています。ほのかな甘みと苦みがマッチした味わいで、アルコール度数は平均的な4.7%なのですが、古代イースト菌の持つ分解能力からフルボディに近い味とコクが楽しめるとのことのようです。
現時点では、限定品としての発売のようです。
しかし反響があれば同ブリュワリーのレギュラー商品となり、豊富なラインナップを誇る『イスラエルのクラフトビール』の定番の一本になっていくかも知れません。
レギュラー化されることを願いつつ、もしそうなったらお知らせしますので、イスラエルに来た際にぜひご賞味ください!!
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