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コロナ第五波を生き抜く為に#5[DAY 19] 精神と時の部屋

かくして僕は目覚めた。だがICU=集中治療室での日数が長かったことが入院期間を伸ばす羽目になるとは......。

翌日目覚めると息が吸いづらかった。どうも抜管した際に、「喉の中の胃瘻系の配線」がズレたみたいで、何度か先生に直してもらったが残念ながら痛くて仕方がない。

「すみません......。息を飲む度に痛いんですが、どうにかなりませんか」

「んー、これ以上はなあ......。また全部やり直しになる苦痛よりマシだと思うので、我慢するしかないですね」

とにかく我慢をするしかなかった。今日は金曜日。いよいよ病院内は週末に入る。僕にとって長い長い我慢の時間が始まる。

結論から言うと「5秒に一度涙が出る痛み」を、20時間ほど一睡もせずに土日を過ごした。あまりにも痛くて痛くて、ずっと涙がポロポロでていた。すると1人の優しいナースさんが不憫にでも思ったのだろうか......。深夜の集中治療室に暖かいおしぼりを持ってきて、何度も顔や口を拭いて、涙を拭ってくれた。

「ごめんね......。何もできなくて」

その優しげな声に、天使を見た気がした。

そんな苦難の長い週末を終える頃には、喉の痛みにも慣れ始めた。苦痛の週末を乗り越えて月曜日、抜管時にとても喜んでくれた麻酔科の女医先生と30分ほど話し合った。

「もう本当に凝りました......。1人で生きることや、本当に皆さんに助けられたこと。これからの生き方を考えます」

そして僕は今年の春に父を亡くしたばかりで、母に心配をかけ、兄にも、友にも心配を掛けたことを嘆いた。

「あなたがね、戻ってこれたのは、結局お父さんが『お前はまだこっちに来なくていいよ!』って言ってくれたのよ」その言葉を聞いて、また30分泣いた。

「とにかく先生、ナースさん、全ての医療従事者の方々に感謝しています。命を救ってもらい、本当にありがとうございました」

冒頭に話を戻そう。ICU=集中治療室にいることの難しさを、リハビリ専門の先生が説明してくれた。

「いいですか、人間は歳をとるにつれて、通常毎年1%づつ体力を失っていくと言われています。ですが、ICU内での時間は現実世界と違い、ドラゴンボールで言うところの『精神と時の部屋』にいるのと同じで、時間の進み方が違います。何とICUにいる間は1日で1%筋力を失います。ZIONさんは10日間ICUにいたので、今猛列に筋力を失ったお爺さんと同様の体力になっています」

実際に起こされると、体が左右で釣り合わず、鉛のように重く、数秒も自分で体を自制できなかった。

「この急激に失った体力を、これから頑張ってリハビリしながら取り戻していきましょう」

亀仙人の言葉は心強かった。頑張ろうと心にきめた。

次回、いよいよ急激な復活を復活を遂げます。乞うご期待。

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