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コロナ第五波を生き抜く為に#4[DAY 18] 目覚め

10日間のICU内での治療の末に僕は目覚めた。とにかく火照るように体中が熱い。それを伝えたいが人工呼吸器を取り付けているが故に声が出せない。それよりも最初にパニックに陥ったのは、深夜のICU内を下から見上げると、目の前に何故か外人がいる。

「なぜインド人がいるんだ!? 深夜は外人が担当なのか?」

僕は彼に意識が戻り、何かを伝えようとすると彼は、紙のボードにペンを渡してくれた。そこに書けというのだろう。だがこのペン1本さえが持てない。手が鉛のように重たく文字が書けない。それでも必死に10分ほどトライをした。ようやく文字が書けた。

「Are you Gaijin?」

「いや、俺日本人だし」

なぜそれを早く言わない。てっきり逆光の中見上げていることもあり、そんな勘違いに10分近くも費やした。そんな笑えない笑い話のあと、ようやく彼に文字で「アツイ」と伝えた。すると彼は「アイスノン持ってきますね」と優しく対応してくれた。そのアイスノンの枕に冷やされて、また眠りに落ちた......。

次に目覚めると、今度は地獄が待っていた。30分おきくらいに鼻の中にチューブを挿入されて「痰を取りますね」の死ぬほど痛い苦痛が延々と繰り返された。だがこの時はまだ身体中に麻酔が施されており、この地獄シリーズはここからが本番だった。

兎にも角にも10日間の末に先生が僕に声をかけている。

「ZIONさん。いいですか? そろそろICUを出ないと、リハビリに数ヶ月かかってしまうので、いよいよ今夜抜管(ばっかん=人工呼吸器を取りはずして、自発呼吸モードに切り替えること)します。重要なのでタイミングをしっかりと! じゃあ行きますよサン・ハイ! 息を止めて!!」

映画マトリックスで「Neoが仮想現実から目覚めるシーン」と同じ想像をしてもらうと良いだろう。

僕は再びこの世に息を吹き返した。

その瞬間、ICU内の担当医と、多分ナース総勢4〜5名ほどから歓声が沸き起こった。

「ZIONさん!! よく戻ったわね! ねえ、私このICU内で抜管するのみるの初めてよ! もう涙がでちゃう! とにかく良かったわ。これで何とかなるわよ。お帰りなさい」

俺にはあまり意味が理解できなかったが、なかなか人工呼吸器からの復帰というものは難しい物なのだろうとだけ理解した。そしてまた眠りに落ちた。

だが次起きたあとにまた地獄は続く。

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