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コロナ第五波を生き抜く為に#6[DAY 21] 神の恵み

ようやく安定期に入り始めた。いよいよナースステーション近くの個室から、大部屋に移動した。そんな僕にとって、毎日の苦痛の時間。それが食事の時間だった。なぜなら僕自身は鼻からのチューブによる栄養のみで、飲み物も食い物もまだまだ誤嚥性肺炎になる恐れがあると禁止されていた。よっていつも食事の時間は部屋中のみんなの食事の音を聞きながら、退屈そうに寝ているだけの日々。これが地味に辛かった。

「先生、飲み物とか食事とかまだダメなんですかね?」

「んー、数値的にまだ微妙だけど......。ZIONさんはだいぶ奇跡的な回復してるし。何とか明日の昼からトライしてみましょうか」

その言葉に心が躍った。翌日、リハビリの専門家が現れて、全メニューゼリーを元にした「嚥下食」という物からはじまる。

「さあ、まずはこのスプーンの水から始めましょう。絶対に慌てず、ゆっくりと」

数週間ぶりの水は心の奥まで沁みた。水というものはこんなに有難いものなのだと。そしていよいよゼリー食にトライする。

「これ全部食べれたら合格にしますよ」

この先生なかなかのドSである。そしてこれがなかなか辛い。全てゼリーな上に味もあまり味もあまりしない(コロナの味覚症状ではなく)僕は一生懸命に食べた。総勢5名に見守られながら......。

「了解です。じゃあ明日から少しづつ通常食に切り替えていきましょう」

結局、このゼリー食は3回食べた。そして翌々日より通常食が始まった。ここまでくれば体力の回復も望める。頑張って退院せねば。

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