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問いをつくる|これから求められる力

ファシリテーターの役割の違い。

いろいろな場でよく耳にする、「ファシリテーター」。どのような役割を持った人だと思っているだろうか。実は、大きく二つに分かれる。

多くは、会議などの場を円滑に動かす人だと思われている。特に、ビジネスセクターではそのように思われていて、私もそのように思っていた一人だった。しかし、実際は違う。ビジネスセクターからソーシャルセクターに移ってから、本当の役割を知った。

2016年、某大手広告会社のコンサルティング会社のある座談会に参加した。その場でファシリテーションの役割について話があった。私を除いてビジネスセクターの人ばかりの会だったので、円滑に動かす役割だと全員が思っていた。
その時にソーシャルセクターでのファシリテーターの役割を話すと、全員が意外そうに思われていた。その役割について、これから話していきたい。


ファシリテーターの本当の役割。

社会変革ファシリテーターのボブ・スティルガーの次の本の冒頭に、監訳者がボブの紹介の中で示している。何かをつくりだすことを仕事としている人はぜひ読んでほしい一冊でもある。

『未来が見えなくなったとき、僕たちは何を語ればいいのだろう
 ~ 震災後日本の「コミュニティ再生」への挑戦』

ファシリテーターという同じ仕事をしている者として、私がボブの最大の強みとして疑わないのは、問いかける力である。それは、問いをつくる力と呼んでもいい。

この本の出版記念イベント(2015年)で、ボブの場づくりを初めて体験した。もう一度、ボブの場づくりに参加した記憶がある。ともに、京都のある場所で。
ボブの問いかけを実際に目にした。問いをつくる前に、何を大切にしているかを目にした。それは相手の話に耳を傾けること、いや相手と向き合うことの方が正しい。

私の周りには場づくりのファシリテーターが多く、優れたファシリテーターは圧倒的に問いをつくる力があることを感じてきた。問いのたて方一つで、こんなにも違いがあるのかと思った。
私はファシリテーターではないが、ファシリテーターの問いに注意を向けるようになった。問いをつくることを意識し始めて、いい問いをつくれるようになった。

いい問いとは、何か。

では、いい問いとはどのようなものかということになる。そのことについては、大学院(ビジネススクール)で学んだ。マーケティングの授業で、受講の心構えとして「いい質問」をすることがあった。教授いわく、珠玉の質問とは次のようなことになる。

① 話し手をやり込めるものでもなく、質問者の自己顕示でもないこと
② 聞くに値する発言を引き出すこと
③ 「よくぞ聞いてくれた」と話し手が思えること
④ 「よくぞ聞いてくれた」と聴衆が思えること
⑤ その質問をきっかけに面白い展開があればなおよい

よく目にする質問は、話し手をやり込めたり、質問者である自分を顕示しようとする“悪い質問”をしていないだろうか。
私自身、ビジネスセクター時代は悪い質問をしていた。質問を議論の道具にして、対話のための質問ではなかった。悪い質問の例として国会の質疑があるので、ぜひ見てほしい。

今私が意識している問いの条件は、次の三つ。

● 相手の無意識を顕在化すること
● 相手に気づきや発見を生み出すこと
● 相手に変化と行動を促すこと

なかなかこのような問いをつくるのは難しい。ただ難しいは、できないこととはイコールではない。できるように常に考えることが大切になる。
noteを書き始めたときの「私は扉でありたい」でも綴ったが、今書くことでそれを日々意識しようとは思っている。過去の記事、特にデザイン×マネジメント×アカウンティングやイノベーション思索の旅に無の探究の旅の連載記事では、問いをたてながら記事を書いている。

問いをつくるので一番面白かったのは、知り合いの大学教授の授業アンケートづくり。その先生は場づくりの第一人者でもあり、二人で時間をかけて問いを考えたのは、面白くいい経験になった。先生はその後本を出版され、アンケートの問いや結果からの学生の意識の変化をみえるようにみせた。

いきなり、問いをつくることは正直難しい。いい問いをつくれるようにするには、いい問いをつくる人から学ぶこと、日常何気に問いをたてて(疑問を言葉に出して)答えを思索していく中で、うまくなっていく。後は、哲学者の本を読むことも。哲学者によって相性があるので、合う人の本を読むことが大切。

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