メモり癖。

最近、よくメモを取るようになった。出掛けるときは小さなメモ帳を持ち歩き、メモ帳がなければスマフォに打ち込んでいる。

いつからだろうか、メモを取り始めるようになったのは。

たぶん、最初は授業の黒板をノートに書き写すときだったと思う。書き写しながら、気になった言葉はメモしていた。先生の板書と自分のメモをあわせて、試験勉強用にノートに纏めていた。
頭で纏めたことを、手で書くことで、書いたことを口に出すことで、記憶していた。

今の学生はどうなのだろう。きっとスマフォで撮るのだろう。いつからか、メモを取るからスマフォで撮るに、変わっていった。試験対策も自分のノートでなく、人のノートを借りたり、買ったりするらしい。

イベントやトークショーでも、やたらとスマフォで撮る人も多い。私はスマフォでは決して撮らない、ひたすらメモを取る派だ。汚い字で、私以外読めないような殴り書きで、メモを取る。取ったメモを家に帰ってからみて、謎ときをするように読み解き、整理しながらパソコンに打ち込んでいく。
変わったのは、ノートからパソコンになったぐらい。


よく耳にするが、メモをする習慣がなくなっているのかもしれない。

そういえば、仕事でメモをとらない後輩が一人いた。今から10年ぐらい前の、後輩に仕事の説明をしていた時の話。

新入社員だった彼は、新しい年に変わってから私の下にやってきた。係長の指導を受けていたのが突然、私の下にやってきた。途中で私の下にきた理由は、すぐにわかった。

間違った処理をしたので、20分ぐらい近くかけて説明をしていた。説明しながら、あることが気になった。そのあることに気になりながらも、説明をし続けた。
彼はノートを開けることなく、メモを一切しなかった。一見、私の話に集中しているように見えるが、話し終えた後、思わず言った。

「君は、なぜメモを取らないの?」
「君は、そんな記憶力がよかったっけ?」

すると彼は机の引き出しからノートを突然取り出して、メモしようとした。一気にイラッとして、ぶっきらぼうに言ってしまった。

「君は、もう一度俺に20分説明をしろと言う訳?」
「仕事を、人を舐め過ぎだよ、君は」

そう言って彼への説明を終え、自分の仕事をし始めた。ノートを持ったまま、彼は茫然としていた。
ちなみに彼はその後メモをとるようになったが、取ったメモを見ようとはしなかった。一度説明したことを、時間が経ってから聞いてくるときがある。

「それは以前説明してメモしていなかったっけ?」
「メモしたのを、まず見てみよう」

決して、性格が悪い後輩ではなかった。ただ、いろいろなところで、どんな学生生活を送っていたのかは気にはなった。

前の係長は優しい訳ではなく、基本人に関心がないので(周りの全員がそう言っている)、後輩に関心もなく指導する気もなかった。同じ優しい訳ではなくても、人には関心があって、厳しく指導する私に、上司が彼をつけた。


最近、メモしたいと思うことが増えた。

一つは圧倒的に自信のあった記憶力が弱まってきたから。これは年には勝てない。弱まったことを嘆いても何にもならない。弱ったことを前提にして、さぁーどうするかだ。

もう一つの理由が、今までにはなかった理由でメモをしたくなっている。noteを始めてから、メモをしたくなった。

嘘のように、突然言葉が降りてくる。それも言葉が書かれた紙切れが、空からひらひら舞い降りてくる。手に取ってしばらくすると、雪のように紙が、言葉が消えていく。

降りてきたメモにある言葉をnoteに綴ろうとパソコンに向かうと、もう言葉を思い出せない。消えていった言葉は、なかなか顕れてくれない。

言葉は、私の“中”から顕れるのはでない。
言葉は、私を“通して”顕れるだけ。

このフレーズは、ある本で知ってから、よく使うようになった。

言葉が消える前に、言葉を残したい。
昔なら数日は記憶できたが、今は難しい。

そういう訳で、残したい言葉、いや正しくはnote用の言葉をメモするようにしている。メモした言葉を並べて、想像力を働かせて言葉を紡いでいく。

noteを始めてから、想像力(妄想)が豊かになった気がする。昔から想像することは好きだったが、いつからか何かを生み出す創造の方に意識が向いていった。

よくアーティストっぽい人が、メモを取る話を耳にする。
ノートに書いたり、スマフォに記録したり、言葉を引きこんだり。

アーティストは作品を創造する人だと、ずーっと思っていた。しかしアーティストで一番大切なのは、想像力だと思う。想像する力が、自分を自由にさせてくれる。

そう考えると、誰でもアーティストにはなれる。
私も自称アーティストって言っていいかもしれない。

誰もがアーティストになると、きっと面白く楽しい世界になるように思う。

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