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コロナでもあきらめない。全員参加のハイフレックス型授業の作り方

オンライン授業か対面授業か。
そのどちらがベストな選択か、今学校現場の対応が試されています。

そこで今回紹介するのは、第3案として注目を集めている”ハイフレックス型授業”です。今回は、実際にこれまで試してみて分かったハイフレックス型授業の方法と失敗を皆さんと共有できればと思い記事にしました。


ハイフレックス型授業とは

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※画像は、京都大学高等教育研究開発推進センターが作成

ハイフレックス型授業とは、オンライン授業と対面授業をかけ合わせた授業の形のことです。通常の授業のように対面で授業を受ける生徒と自宅からオンラインで参加する生徒が同時に授業を受けるという新しい授業の形です。

コロナ対策としてこれまで研究されてきた授業スタイルは他にもあり、日によって登校日を分ける「ローテーション型授業」や、自宅で学習し学校で復習をするという「反転授業」、クラスを2つに分けて分散して登校する「分散型授業」などが行われてきました。ハイフレックス型授業とはそれらのハイブリッド授業といわれる方法の一つです。

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ハイフレックス型のメリットは、なんと言っても子どもや保護者が選択できることです。登校に不安を感じている方はオンラインで、登校や支援を必要とする子は対面で、とそれぞれのニーズに合わせて選択できます。

また、今多くの子どもが自宅待機を命じられています。本人は元気でも学校に行けないという子どももいます。ハイフレックス授業はそうした子の学ぶ機会を保証することもできます。

ハイフレックス型授業に必要なもの

ここからは、実際に行っている方法を紹介します。
公立の学校でもできる手軽な方法です。どなたでもできると思います。

必要なもの
・Chromebook5台(iPadやWindows機でも可)
・電子黒板1台(大型テレビでも可)
・机2つ

使ったアプリ
・Google meet 
・Google classroom

必要な役割
・カメラ係(黒板担当)
・カメラ係2(電子黒板担当)
・サポート係・・・オンライン参加者を声を聞く係

あると便利な物
・全方向集音マイク・webカメラ

詳しくは後ほど。


機材の設置

機材はこんな感じで置いています。
「そんなに教室にパソコンないわ」とツッコミが来そうですが、撮影用とサポート用は子どものパソコンを借りて使います。

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事前に

まずGoogleクラスルームのストリームで、オンライン参加が可能な時間割を児童に知らせます。一日中だと子どもも疲れてしまうので、2コマか3コマだけにするといいと思います。参加希望者はコメントを入れるルールにしておくと把握がしやすいです。

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次に、授業前の準備です。
使用する5台をMeetにアクセスします。
Googleクラスルームからのアクセスが簡単です。
もちろんZoomやTeamsでも応用可能です。

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ここでのポイントは2つあります。
まず1つはハウリング防止です。
複数台を一つの教室でMeetにつなげると「キーン」というハウリングが起きます。これは簡単に説明すると声だけじゃなく、スピーカーから出た音をマイクが拾ってしまうことが原因です。

この対策として、マイクと音量をオンにするのは1台だけにします。そうすることでマイクが必要以上に音を拾ってしまうことを防ぐことができます。

ただしマイクとスピーカーはパソコンのものだと性能が十分でない場合があります。その場合は、外部マイクを使用するとより聞こえやすくなります。スピーカーとセットのタイプがオススメです。

私はこれをサポート係の端末につなげています。
後の端末はマイクと音量オフにしています。これでハウリングを防げるし、聞こえにくいという問題を解決できると思います。

2つ目のポイントは、Meetのアクセスや設定を児童にやってもらうことです。
一度使い方を教えたらできるくらい簡単な操作なので、児童の役割にしておくと教員の負担が減ります。

オンライン参加者がアクセスできたかどうかもサポート係の子に確認してもらいます。参加できていない子にはメッセージを送ってもらっています。

ここまで聞くと、「子ども任せにしすぎじゃない?」と思うかも知れませんが、ここが一番大事なポイントです。

少し話がそれますが、実は初めてやった時は、全部自分一人でやろうとして失敗しました。慌ただしくて、対面でいる子にもオンラインで参加している子にも無駄に待たせてしまう場面がたくさんありました。

その時クラスの子が「先生、それ俺できるから変わるで」と手伝ってくれたんです。それを見た他の子も「じゃあ私カメラするわ」と自分のクロームブックを開いて撮影を始めました。気づいたらオンラインで参加する子も「見えない、もっと右にして」とか「ごめん今の説明もっかい言って」と子どもたちが自分たちで進めていました。そんな経験の中で全部先生がやる必要はないと気付かされたんです。

きっと、皆さんの学校でも手伝ってくれる子どもはたくさんいますし、目の前に助けてくれる子どもがいるのが、ハイフレックス型の一番のメリットだと思います。

授業中

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ここからは、どうやって授業を進めるかについて紹介します。

授業は特別なことはしません。オンライン授業のようにパワポなどで資料を用意することもしません。いつも通りの対面授業をベースに進めます。

オンラインの子に合わせて講義型の授業にすることもできますが、準備が大変ですし、子どもはすぐあきてしまいます。

オンラインでも受け身ではなく主体的に学び、かつ教員の負担を減らすために、普段通りの授業のように、子どもの意見を拾い上げながら進めていきます。

ハイフレックス型授業は、その学びの空間にオンラインで参加するというスタイルです。

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少し分かりにくいかも知れませんが、イメージはこんな感じです。
ちなみに余談ですが、文科省が発行している科学白書2021によると、20年後にはこんなホログラム会議が実現するそうです。しかも同時通訳で。

ただここまでの技術はまだないので、それをChromebookで構築します。

ここからは各係の役割も紹介しながら構築の仕方を説明します。

カメラ係

まず、黒板や友達の発表をカメラで伝えます。その役割がカメラ係です。通常Meetに参加すると自分の顔が映りますが、カメラを切り替えて板書や電子黒板を映すようにします。

例えば算数では、子どもが黒板に立式を書いて説明するとき、その様子をカメラ係(黒板担当)が撮影します。また別の児童が自分のノートを電子黒板に映して説明する時には、カメラ係2(電子黒板担当)が撮影します。

テレビのように1カメと2カメが自動で切り替わることはできないので、オンラインの参加者がモニターを選んで大きく表示します。この作業がやや難しいので学校に来ているときに練習することをオススメします。

「カメラが1台でもいいのでは?」と思うかも知れませんが、カメラの距離や画角の調整が結構難しいので、1台だとカメラ係の子の負担が増えすぎてしまいます。
授業中はできるだけ固定で済むように、2台あったほうがスムーズです。

サポート係

次に、ハイフレックス授業の一番の難しさは、オンラインで参加する子の様子まで見れないということです。目の前にも子どもがいるので、画面ばかり見ているわけにはいかないのです。

そこで児童にサポート係をお願いし、オンライン参加者の手助けをしてもらっています。「先生、〇〇さんが今のところ聞き取れなかったと言っています」などとフォローしてくれるのでオンラインで参加する子も安心して授業を受けることができます。

質問やSOSはMeetのチャット欄でも書き込めるので、この使い方も事前に練習しておくと、オンライン参加者は、授業を中断せずにサポート係にこっそり質問することもできます。

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成功のポイント

ここまでのやり方で授業の形はできると思いますが、ハイフレックス授業は、成功するかどうかのポイントがあります。それが「オンライン参加者が見学者にならないための仕組み」です。

聞いてるだけ、見てるだけだとつまらないし、学びにもなりにくい。そこで、オンライン参加者の声を聞き、そこから「〇〇君はこう言ってるけど、みんなはどう思う?」と意見をつなげたり、「〇〇君の質問に答えれる人いる?」と対面とオンラインの児童をつなげてあげることが教師としての大事な役割です。

また、ペアトークやグループ活動を積極的に授業に取り入れ、オンライン参加者はモニター越しに参加してもらいます。
皆さんも経験があると思いますが、オンラインだと意見を言うことはいつも以上に勇気がいります。人数が多いと発言するタイミングも難しいですよね。だからペアやグループで話しやすい環境を作ってあげることが参加意識を高めるために大切です。

ただしペアやグループ活動には一つ注意点があって、それがハウリングです。オンライン参加者がいるペアやグループには、音を出す時にイヤホンをつけないとハウリングをしてしまいます。

ここが少し大変ですが2.3回やれば慣れると思います。

またクラウドベースのロイロノートやGoogleスライドなどを使って、アイデアを共有したり、共同編集したりするとオンラインでも参加しやすくなります。

このようにオンライン参加者が見学者にならないように工夫することで、空間は違うけれど自分も授業に参加している、授業を創っているという実感を感じさせることができると思います。

実際、これまでChromebookの持ち帰りで様々なことを試しましたが、1学期末に子どもに行ったアンケートの結果では、一番満足度が高かったのは、このハイフレックス授業でした。

「家から授業に参加できたのがとっても楽しかった。」と喜んでいました。学校に来ていた子もオンラインで来れない子の役に立てて良かったと話しています。

元気なのに学校に行けない、そんな辛い思いの中、家からみんなと授業ができる。そして何より友だちとつながりながら学べる。それがこのハイフレックス型授業の魅力です。

今回紹介したのは、ハイフレックス型授業の一つの案ですが、対面✖︎オンラインというこの授業スタイルはコロナ対応だけでなく、不登校の児童や、学校に通えない児童にとってもメリットがあると思います。

学びの空間は学校という建物ではない。もしかしたら、これが、これからの新しい授業のスタンダードになるのかもしれません。

あなたも、ハイフレックス型授業で、学校に選択肢を増やしてみませんか?

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