書籍の編集者って何をしてる人なの?
書籍編集の経験を積んだ編集部員が運営している、ZIEL。「本を書きたいけど、どうやって書けばいいのかわからない」そんな悩みを抱えている方たちの力になれたらと思い、連載「本の書き方、つくり方」を立ち上げました。
……と、ここでみなさんに質問です! 本づくりにおいて、編集者は何をしている人かご存知ですか? 実は、私もよくわからないまま編集アシスタントとしてこの会社で働き始めました(初告白)。本日は、みなさんに編集者が何をしている人なのかを紹介していきます!
文:出口夢々
「突き合わせ」、知っていますか?
私が編集アシスタントとして働き始めたのは、大学3年生、20歳のとき。5年前です。時の流れ早っ。採用面接時、(ZIEL編集長の)金丸に「編集の仕事のイメージってある?」と、聞かれたのを鮮明に覚えています。とにかく採用してもらいたい——その一心で私は、こう答えました。「あります」と。
半分、嘘です。著者と打ち合わせをしたり、原稿を届けたりと、なんとなくのイメージはありましたが、具体的なことは何もわかりませんでした。でも、受かりたかったから「あります」と答えてしまったんです。ごめんなさい。
そんなこんなで無事に採用してもらました。そして、編集アシスタントとして私が最初に行った仕事は「突き合わせ」です。これは、修正前の誌面と、修正後の誌面を “突き合わせて”、指示通りに修正されているかを確認していく作業。誌面の修正をするのはデザイナーさんの仕事なので、確認作業が必要になるわけです。
では、ここでみなさんに再び質問です。この「突き合わせ」の作業、本をつくる工程において、どの段階で生じる作業でしょう?
正解は、ここです!
〈本づくりの流れ〉
①著者・編集者:打ち合わせ
②著者:構成案の作成
編集者:誌面レイアウトの見本(フォーマット)の作成
③編集者:構成案の確認
④著者:原稿執筆
⑤編集者:原稿確認
⑥編集者:テキスト化する
⑦編集者:誌面を確認する
⑧著者:原稿確認
⑨編集者:著者からの赤字を確認、修正する
表紙のデザインを発注する
⑩著者:再度、原稿確認
⑪編集者:著者からの赤字を再度確認、修正する
⑫編集者:データをまとめ、印刷所に送る
そう、突き合わせは、本づくりの終盤で行われる作業なのです。突き合わせ前には、8工程ほどありますね。ここからは、これらの工程を説明しながら、編集者が何をしているのかをお話していきます!
本づくりの流れ
①著者・編集者:打ち合わせ
まずは、どんな内容にしたいか、誰に読んでほしいかを著者と話し合います。自伝を編集する場合、著者の人となりを詳しく知っておいて損をすることはありません。むしろ、その人らしい1冊にするために、これまでの人生について事細かにお伺いします。お話を聞いたうえで、一緒に構成案の大枠を決めます。そして、打ち合わせの最後の一言は、「では、構成案をお待ちしています」となるわけです。
②著者:構成案の作成
編集者:誌面レイアウトの見本(フォーマット)の作成
著者に構成案を考えてもらっているあいだに、編集者はフォーマットを作成します。フォーマットとは、誌面レイアウトの見本のようなもの。1ページあたりに入る文字数やデザイン、本のサイズを決めて、ページ全体の要素を確定させるのです。ちなみに、この段階で1ページあたり何文字入るのかを確定させないと、大変なことになります。1冊あたりの文字数が決められなくなり、何文字で原稿をまとめてもらえばよいのか、著者に伝えられないからです。
本は16ページ1セットになっていて、1セットのことを「1折」と読んでいます。基本的には、1折ずつページが増えていきます。560ページ(35折)の予定だったのに、原稿を書きすぎて、3ページ分文字数がオーバーしてしまった。でも、削る要素はもうない……。そんなとき、ページを増やそうとしても、16ページからしか増やせません。泣く泣く576ページの本にするとしましょう。そうすると、今度は印刷代が増えます。みなさん、もうおわかりですね。3ページのために、16ページ分の料金を追加で支払わなければならないのです。予算以内に本をつくるのも、編集者の仕事。なので、この段階でフォーマットをつくるのです。
③編集者:構成案の確認
著者から構成案が送られてきたら、内容を確認していきます。ここで、打ち合わせでの会話が生きてきます。「打ち合わせで教えてくれたあのエピソード、些細な内容だけど、ここで触れるとおもしろい内容になるな……!」「この話はここでせずに、後で別の話をするときに触れたほうがおもしろいかな……」と、打ち合わせ時に伺った著者の人生と照らし合わせながら、構成案を確認するのです。著者が考えた構成案を、編集者がさらにブラッシュアップしていくイメージですね。
④著者:原稿執筆
そうして構成案が決まったら、いよいよ原稿執筆です。書き方について著者から質問があれば、いつでもアドバイスさせていただきます。答えを出すのがむずかしいときは、一緒にうんうん唸りながら悩みます(喫茶店で1時間ほど悩んだこともあったなぁ)。著者と編集者が助け合いながら、本をつくっていくのです。
⑤編集者:原稿確認
⑥編集者:テキスト化する
⑦編集者:誌面を確認する
著者から原稿をいただいたら、それを一通り読み、第三者が読みやすいように適宜調整をします。話の流れは通っているか、言葉の使い方は間違っていないかなど、確認する観点はたくさんあります。確認したうえで、「このエピソードの細部をもう少し書き加えてほしい」などと、追加で執筆を依頼することもあるでしょう。また、「この話はカットしたほうが全体の流れがよくなる」とお願いすることもあるかもしれません。「せっかく書いたのに……」と気を落とされることもあるかもしれませんが、そんなときは「カットしたくない!」とおっしゃってください。何度も打ち合わせをして、内容を確定していきましょう。
そうして原稿がまとまったら、編集者がテキストを作成します。誌面は編集者ではなく、デザイナーがつくるので、デザイナーが作業しやすいように体裁を整えるのです。テキスト化が済んだら、データをデザイナーに渡し、誌面を作成してもらいます。そして、デザイナーから上がってきた誌面を確認します。内容に不備がなければ著者に送り、確認をしてもらいます。
⑧著者:誌面確認
編集者から誌面が送られてきたら、一通り読んで、内容をチェックしてください。読み直してみて、「ここはもう少し言葉を足したいな」「このセリフはカットしたいな」と思ったら、訂正を入れて、編集者に戻します。この訂正を入れる作業を「朱入れ」と言い、その訂正書きのことを「朱字」と呼びます。ですが、「赤入れ」「赤字」と呼ぶ編集者も多いですし、私もそう呼んでいます。ベテラン編集者は「朱字」と呼ぶことが多いみたいですね。赤字だと縁起が悪いから、くらいの理由みたいなのですが……。
⑨編集者:著者からの赤字を確認、修正する
表紙のデザインを発注する
著者からの赤字が届いたら、編集者がそれを1つずつチェックします。そのまま修正して問題ないか、問題があるなら、どうやって著者の意向を反映した内容にするか——確認と検証の繰り返しです。すべての赤字を解決できる状態になったら、赤字をデザイナーに渡し、修正してもらいます。そして、修正前の誌面と、修正後の誌面を突き合わせます。
ここで出ました! 出口がはじめて取り組んだ作業、「突き合わせ」です!! きちんと修正されているかを、心を無にして、機械的に確認していきます。心を無にすることで、ミスを見逃すリスクを下げるのです。すべての赤字が修正されたのを確認したら、再度著者に誌面を送ります。
そして、この段階でデザイナーに表紙のデザインを発注します。デザイン案が上がってきたら、著者に確認を依頼し、デザインを決めます。
⑩著者:再度、誌面確認
⑪編集者:著者からの赤字を再度確認、修正する
⑧⑨同様、著者の確認と編集者の赤字確認を行います。
⑫編集者:データをまとめ、印刷所に送る
⑪で修正点が消え、著者も編集者も納得のいく内容になったら、ついに「校了」です。編集者がデータをまとめ、印刷所に送ります。あとは本になるのを待つだけ。ここで本づくりは終了です。
本づくりにおいて、編集者は何をしている人か——ズバリ、本づくりのサポートです。本づくりにあたって、著者の存在は必要不可欠。著者がよりよい原稿を書けるように、そしてその原稿がよりよい1冊の本となるように、編集者がサポートさせていただくのです。突き合わせも、サポート内容のうちの1つ。1つ1つ、修正がなされているかを丁寧に確認させていただきます。
さらに言えば……おこがましい言い方かもしれませんが、著者と一緒に泣いて、そして笑う仕事だとも思っています。執筆作業は楽しくも孤独でつらいもの。そんな著者の執筆作業を伴走し、一緒に苦労して泣いて、よいものができて笑う。そんな仕事をしています。そして、そうあり続けたいと思っています。
自伝づくりで悩んでいることがあったら、コメント欄でいつでも相談してください! うんうん一緒に悩みながら、最善策を出しましょう。下記の記事も参考にしてみてください!
▼自伝を書きたいけど何から始めればいいかわからない方はこちら
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