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洋館の中で見つけた日記 52 【図書室から始まる回想】

20☓☓年。
研究所にて自分らしさを忘れてしまうP-ウイルスが流出した。
瞬く間にウイルスは蔓延。
世界はポカンハザードに陥る。
ポカンから逃れるため古い洋館に駆け込んだ。
そこである日記を見つけた。

読んでいただき、ありがとうございます。
ポカンハザードの世界で日記を書いております。
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◆図書室から始まる回想

誰もいない静かな図書室。

窓からオレンジ色の柔らかい夕陽が差している。

壁際には古くて大きい背表紙の本が部屋を丸く囲む。

入って右奥。本棚の後ろであぐらをかいている私。

目を閉じる。


学校の前の桜の木。

胸には入学祝いのバッジがついている。

手を引いて歩く母。

学校の前の10段ほどの階段の下に2人並んで立つ。

富士フイルムのインスタントカメラのフラッシュがパシャっと光る。


川沿いの土手に家族並んで座る。

銀紙に包んだゆで卵とタッパーに入れた塩。

ゆで卵の黄身はボソボソ。

塩を付けすぎ顔がゆがむ。

雑草を手に取り、自然と始まる草相撲。


団地の我が家。

一つは寝室兼、姉と私の子供部屋。

窓には落下防止のために鉄の棒が並んでいた。

その奥に雨の日も佇む巨大な煙突。

手前には不気味な熱帯植物と薔薇の温室。

その横には一段30センチほどの長い階段。

厚く黒い雲。強い風。ゴロッと稲妻が光る。


団地の真ん中にある公園。

大きな松の木を登る。

てっぺんには何かがある確信があった。

手についた松脂。


団地の向えにある駐車場。

割れたオレンジポールの中に溜まる雨。

そこにとまる赤とんぼ。


夕方、テレビを観てると聞こえてくる。

「石焼きいもー。おいも。熱くて美味しいお芋だよー。」

財布を持って駐車場に向かう。


誰もいない静かな図書室。

ゆっくり目をあける。

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