読書メモ「AIvs.教科書が読めない子どもたち」
1 読んだ本
本名: AI vs. 教科書が読めない子どもたち
作者:新井紀子
2 感想
(1) AI技術の入門書
タイトルから勝手に連想して、AIはとにかくすごい!AIが人間を超える日が近い。AIに使われないように、頑張れ!!(何を頑張るのかは不明?)、というような、単に危機感を煽る本かと思って、読まないでいました。
しかし、読んでみると、良い意味で期待を裏切られ、非常に学びの多い本でした。
前半部分、全体の3分の2くらいは、現在のAI技術について、わかりやすい言葉で具体例も豊富にあって、「現在のAI技術入門」という内容で、面白かったです。
私は、この本を読むまで、漠然と「AIは万能だ」と思っていました。けれど、この本を読んで、現在のAI技術がどのような仕組みで動き、苦手な分野があることも知りました。
(2) AI(人工知能)>機械学習>ディープラーニング
現在、AIと呼ばれているものは、機械学習(更にディープラーニング)という技術が使われています。
機械学習は、コンピュータ(機械)に大量の学習データを渡たすと、機械が自動的に学習し、統計・確率を用いて、何らかの法則性を見つけ出したり、判断しているそうです。
つまり、「統計・確率的に判断」という所がポイントで、コンピュータが何かしら意味を理解しているわけでもないという所が、現在の技術の限界だそうです。
(3) 具体例、翻訳するときの処理
例えば、コンピューターに翻訳作業をさせる場合の処理は、
1 機械学習ができる以前
人が文法ルールを一つ一つコンピュータに設定して、その論理に基づいて、言語を翻訳させようとしていました。
そのため、翻訳前の文をコンピュータに理解させるために、文をどこで区切るかなど、機械的に判断するデータ処理をするのは、困難を極め、非常に精度が悪いものでした。
確かに、昔、Yahoo!翻訳で翻訳すると、日本語が面白かった記憶があります。
2 機械学習による翻訳
機械学習という技術、更にディープラーニングという手法では、コンピュータに、文の構造とか意味を理解させようとするのではなく、たくさんの事例から統計・確率的に正しいと判断する処理が行われます。
グーグル翻訳などはこの技術を利用していて、たしかに、今は英語を日本語に翻訳すると、理解できるものになっています。
(4) AIへ置き換わるシゴト
この機械学習は、多数のデータから一致する点が多いなどの観点から判断し、これが正解に近そうだ、とコンピュータが答えを出します。そのため、データが集まれば集まるほど、統計的に精度が高まります。
この技術は、すでにコールセンターなどで利用されており、このAI技術が得意とする分野の仕事は、効率化のもと、人からAIへと置き換えられていくことが想定されています。
(5) 後半、「教科書が読めない子どもたち」
本の後半部分は、「教科書が読めない子どもたち」についてです。
今後、AI技術に置き換わっても、失職しないためには、AI技術が苦手とする分野の力をつけることが求められています。その力が、文を読み取ることや意味を理解することの「読解力」です。
そこで、作者が、AI研究の知見を用いて、読解力を調査したところ、大学生の多くが読解力が不足していることがわかります。
更に中・高生の読解力を調査すると、「読解力」を身につけられていない現在の教育問題が明らかになります。
本ではその調査方法のテストが書かれています。挑戦してみたところ、いかにいい加減に文を読んでたか、はっ!とさせられました。論理力だとか、英語だとか、それ以前の問題だったのか、と作者の「教科書が読めない子どもたち」という問題提起にずばっと刺されました。(本当に語彙力がないので、不思議な文書となっています)
(6) 教科書を読む方法
作者はこの本で、その問題提起に終わるのでなく、中高生に読解力をつける活動のため、社団法人を設立しています。
各学校や教育委員会などと一緒に取り組みを行っているとのことです。
また、この本「AIvs.教科書が読めない子どもたち」の続編「AIに負けない子どもを育てる」も発刊されています。
この本も気になります。
教科書が読めない大人なので、本の趣旨や説明間違えがあるかもしれませんが、この本を読んだ感想は以上です。
ベストセラー本なので、すでに多くの人が読んでいる本だと思いますが、私のようにタイトルで読まず嫌いせず、読んでほしい一冊です。