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腐女子バツ1オンナのカレシが結婚してるかも知れません1

ことのはじまり

先週、三井さんから突然DMがきた。
なにやらアタシの店に向かったのに場所がわからず帰ってしまったそう。

三井さんは広告代理店の社長で、3年前、webデザイナーのアタシに仕事を振ってくれていた。三井さんのお陰で他の案件も増え、最後は依頼を断るという気まずい別れ方をしたんだ。

何故に今更…?

3年のブランクが走馬灯の様に当時を過えらせる。
懐かしさでイッパイなのにそこはクールに大人の女を装って

『LINEしてくれればイイのに』

とレスしたと思う。それから1週間くらいした夕方に

『今日、友達とお店に行きたいんだど…その後飲もうよ』

とLINEがきた。

アタシは両親が営んでいた純喫茶をバルにリノベして受け継ぎながら
夢だったwebデザインの仕事も諦めきれずにグダグダしていた。

やりたくなかったバルが思いのほか順調で
やりたいデザインができない状態。
人生の不条理に失望し、欲や感情さえなくなりつつあった。

そんなだから、三井さんの誘いにも白目でOK。
この会わなくなった3年間の原因が最後に仕事を断ったアタシにあると思うと少し胸が痛かった。

フリーランスでやっていると、仕事の依頼を受けて納品し、入金を確認したらお付き合いもなくなる。まして、一人でできる量にも限界がある。

外注の一人であったアタシを、社長が憶えていてバルに来ようとして
その後、一緒に飲みたいと言われたことに正直驚くばかりだった。

そして、なぜあの頃アタシを幾度となくご飯に誘ってくれていたのかも不思議だった。

アタシは仕事に恋愛を持ち込むタイプではないし、まして大きな仕事をもらっている人との男女関係はあり得ない。主な収入源ともなれば男化する。

まあ、三井さんからしたら単なるコミュニケーションの一端かも知れないが。

とりあえず、バルに現われた二人を見て寸死したよね。
バルには来ない類のイケメンだから。
一瞬、店内に静寂が訪れたもん。

まず二人とも身長が高い。七難を隠すのは色白ではなく高身長だ。
そしてオシャレ。だから見栄えがする。単純にカッコいい。

からの夜なのにサングラス…

なのに、アタシときたらチビだしノーメイクでリタッチしていないプリン頭を隠すベレー帽にチグハグなコーディネートときたもんだ。
女子力はおろかオヤジ力を遺憾無く発揮していた。
速攻スタッフのメイク道具をひったくってトイレに駆け込んだよね。

3年という月日はいやがおうにも人を変える。良くも悪くも…

トイレの中で鏡に映る自分を見ながら親を恨んだ。身長は高ければブスでもモデルという道がある。チビは競馬の騎手くらい。チビでブスは…
今まで囚われた宇宙人化現象が何回もあった。

とりあえず、このままあの二人を放置しているわけにもいかないので意を決して鼻息荒く店内に戻った。

そして、三井さんからアキトくんを紹介されたのだ。名前を聞いてまた驚いた。偶然にも前の晩に名刺を整理していて目に止めた人だった。以前、1回だけ三井さんの仕事の打ち合わせで名刺交換をしていた。

なんだ~!友達っていうから誰かと思ったら同じプロジェクトをしていたアキトくんじゃな~い。と無理やり安堵したフリをする。

そうか、そうか。懐かしいね~なんて言いながら、名刺を気にとめた翌日、その人が来たシンクロに予知能力が開花したかと心臓がバクバクした。

3年前に一度打ち合わせをしただけの人だから、名刺と顔は一致しなかったけど、印象的な唇をみて記憶が蘇った。カーキの軍用のJKを羽織って猫背でメモしていた人だ。真っ黒でサラサラの前髪が目にかかるくらい長かった。

アタシは記憶力がイイのだ。

でも後に打ち合わせで派手なスカートの女だと思っていたとアキトくんに言われた。そうだ、zuccaのファミセで定価5万円のを5千円で買ったヤツだ。憶えていたのね。

二人が席に着き、オーダーはお任せするというのでお店で人気のトルティージャ・デ・パタータス、ハモン・イベリコ、クロケッタと、その日のオススメを出した。

二人が会うのも久々らしく、大声でおしゃべりしてビールを何杯も飲んでいた。

新しいiMacを買ったことや格闘技を見に行った話など女子会さながら会話が弾んでいる。

ある格闘家の名前が聞こえた。
その格闘家と仕事で交流があったアタシはツカツカと席に行きドヤりながらスマホのアドレス帳を見せた。

イッキにアキトくんのボルテージが上がり、早く場所を変えて飲もうという雰囲気に。他のお客さんが帰ったので早めにバルをクローズしていきつけのタイ料理屋に行った。

向かう途中、アキトくんは、

「オレ、これでもかなりグルメだけど、スバルの店の料理マジで全部美味かった」
「家の近所にあったらしょっちゅう来るよ」

と褒めてくれた。嬉しかった。

タイ料理屋に仕事から帰宅途中のミユを呼んだ。
容姿端麗、士業で忙しい才色兼備の彼女。
即OK。
関係ないけどミユも高身長(泣)
またもや囚われた宇宙人現象。

ま、それは置いといて。
三井さん、アキトくん、そしてアタシ。

かつて三井さんから請け負った大企業のホームページをアキトくん、アタシ、あと数人のデザイナー陣で制作したんだ。

アタシたちはミユが来るまで3年のブランクを埋めるように記憶の限り話をした。

下町の六本木のドトールで初対面の打ち合わせ。
アキトくんは、その時集まったデザイナーみんなが前の職場のチームと同じ苗字で不思議な縁を感じたらしい。

それぞれ担当に分かれて締め切り前は引きこもり徹夜で作業した。
打合せの1度しか会っていないが、いつしか仲間意識が生まれた。

それがフリーになって初めての仕事だったから、完成したwebページを見た時の達成感はハンパじゃなかった。

しばらくして、ミユ到着。
仕事終わりだというのに肌がツヤツヤ、後光が差していて眩しい。
それもそうだ。アタシよりだいぶ若いのだから。

「そーいえば、みんな歳いくつなのー?」

とアキトくん。

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