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接客における「心を守るリスト」

金融機関で窓口をやっていたころ、私は自分の心を守ることに余念がなかった。

接客業をしている人ならわかると思うが、毎日いつ・どんなお客様が来るかわからない。ゆえに、その日何が起こるかわからない。

この恐ろしさったら、ない。

もうすぐ閉店、「今日は平和だったなぁ〜」と小さく伸びをした瞬間に入ってきたのはクレーマーチックなアイツ。

普通に接客したら「俺の顔を知らんのか!」と恫喝してきたアイツ。

例を挙げればキリがないが、あれは襲撃である。

来たる襲撃に備え、当時の私は『心を守るリスト』を作っていた。

休憩中あるいは帰宅後、どうしても許せないアイツ、怖かったアイツ、嫌な気持ちを一時的でも、無理矢理でも、とにかくなんでもいいから忘れさせてくれるコンテンツを日頃から集めていたのだ。

例えば…

・インド映画のダンスシーン
・空耳アワー
・布袋寅泰


などである。

まず、インド映画。
ダンスシーンで信じられないくらいの人数がウワーッと出てくる。そして、目がチカチカするくらいカラフルな衣装を着た踊り子たちが、トップ俳優と思しきおっさんと妙な振り付けを元気よく踊る。色々潔くて落ち込めない。

次に、空耳アワー。
言わずもがな、ハガキ職人さんとVTRのエキストラさんの技が光る。そして本当に聞こえる。感動と笑いで落ち込めない。

さいごに、布袋寅泰の曲は基本アップテンポで歌詞が”真っ直ぐ前向き”なので聴きながら落ち込めない。

以上のように、あらかじめリスト化しておいて襲撃の際に負った傷を即座に癒すのだ。

ちなみに、私が嫌だなーと思う客にはタイプがある。大きく分けると3つ。

・どこにでもいる恫喝タイプ
(入ってきた時から顔が怒ってる)

・たぶん家ではモラハラしてる論破タイプ
(なぜか怒ると敬語になる)

・セレブ気味な方に多い上から目線タイプ
(実際、本当にセレブな人はやらない)

『恫喝タイプ』は慣れてくるが、たまに本当に狂気な怒り方をしてくる奴がいて、手が震えるくらい怖かった。

『論破タイプ』は、はじめ気持ち悪いくらい丁寧に来て、無理なお願い・揚げ足取りに精を出す。男性に多く、偉い人が出てくると急に大人しくなるので、なるべく上司に代わってもらって対応した。

『上から目線タイプ』は中途半端に預金のある、旦那さんがそこそこ良い会社に行っている奥様か、公的な職業の方に多かった。

すぐこちらの学歴を聞いてくるので面倒くさいし「別にここに預けなくてもいいのよ?」等、いちいち脅してくる。個人的には他に持っていって構わんよ。

こういう襲撃が一定のラインを超えると、こちらも窓口から逃げ出したくなる(逃げないけど)。そこで、さっきのリストを使ってどうにか切り替え、心を守っていた。

ちなみに仕事を辞めてからは『落ち込んだときリスト』『楽しみたいときリスト』などにして活用している。

(最近のお気に入りはイトコに教えてもらった「パペットスンスン」)

思い出すと、私にとって窓口での日々は大変スリリングだった。

感謝を口にしてくれたり、優しくしてくれるお客様もたくさんいたが、そういう喜びを一瞬で消し去るのが襲撃。客になると人間、嫌な奴になるのか?と思ったりもした。

さいごに…
窓口に立って確実にわかったことがある。

性格は顔や雰囲気に出るし、店員さんへの態度はその人の本性である。
特に、歳をとったとき顕著に現れる。

だから、たとえば彼氏が店員さんに態度悪かったら絶対やめたほうがいいと思うし、自分もなるべく快い受け答えができる人間でいようと思う。

世の中の接客してるみなさん、いつもありがとうございます。

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