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フロントエンドコーダー代書屋

相変わらず古いところをば、聞いていただきます。

「儲かった日もコーダーの同じ顔」
川柳というものは、なかなか面白いところに目を付けるもんで。
そう言われてみますと、このコーダーという商売、「今日は儲かった」と言うて、あまり嬉しそな顔をしてる人おません。
大抵陰気な顔をしパソコン向かってなんやわからん文字打ち込んでる、てなもんで。


「こんちわ。おたく、フロントエンドコーダー屋はんで?」
「へえ。うちはコーディング、商いにしておりますが」
「あーさよか。ほな、書いてくれるか。ホームページ言うやつ」
「へいへい。書かせてもらいま。」

「書いとぉくなはるか。さよか。
 いえ、あんたとこ書いてくれなんだら、どないしょうかしらん思てたんで。へぇ。
 そのホームページちゅうのんやったら、客がもりもり入る聞きましてん。
 家帰ってかかに言うたら「うちにそんなもんないで」こない言いまんのんで「何やったら、隣り行て借りてこか」言うて、隣り行たんだ。
 隣りの人がまた親切な人でな。家中探してくれたんだ。
 おまけに、仏壇の引き出しまでひっくり返して見てくれたけどおまへん。「確かこの終戦まではあった」と、こない言いまんねん。「ひょっとしたらもう空襲で焼けたかも分からん」

「あんたホームページを隣りへ借りに行く人おますかい」

「へぇへぇ。そうだんねんて。
 それで、人に聞いたらな「あんたがよう書かんねんやったら、コーダー屋へ行きなはれ。すぐに書いてくれる」言うて教えてくれはったんで。
 そんで来ましてん。
 えらいすんまへん、ちょっと書いとくなはれ。」

「あ、さよか。
 へぇ、書かしていただきま。
 どうぞそこへお掛けやす。
 すると何ですか?こたびは、このなんぞEコマースでも始めはんのでっか?」
「いや、そんなことせえしまへんねや。ちょっとこの、ネットで商売しまんねん」
「それをEコマースと言いまんねん」


「えぇ~っと。まず、名前何にしましょ」
「河合浅治郎」
「あんさんの名前違いますがな」
「倅はハジメ言いまんねん」
「それも違いま。ホームページの名前で」
「メルカリ」
「わからん人が出てきたな。
 あんさんのホームページに名前要りますねん。」
「この前ジモティでソファただでもろてん。もうわたいこれでITできるわ!」
「あんさんが何もらおうが、どうでもよろし。
 ちょくちょく居はりますねん、あんさんみたいなおかた。
 「ワイは技術はようわからんがネットでよく物買うてるから、ネットのこたあようわかる!」言うて、私ら困らせるかた。
 あんさん、ご商売してはりまっしゃろ?屋号おまへんのかいな」
「西大阪スチール工業」
「それを先に言いなはれ...ほたらnishi-osaka-steel.com、と、こうしときましょか。」
「google.comのほうが体がええな」
「それ、できませんねん...言うてもおわかりになりまへんやろなあ、あんさんでは。で、何売りまんのん?」
「そら何でも売ります。古着古本古道具。こん前は米売ってましたわ」
「ちょい待ちちょい待ち。あんさん、ほんまに売ってはったん?」
「メルカリで見ましてん。はー2700円やったら安いなこれ500円ならへんかな言うて」
「メルカリから離れなはれ!難儀なお人やな。」
「ジモティでは...」
「ジモティも離れなはれ!」


「はあはあ、金属加工してはりまんのやな?ここ聞き出すまで、ひと苦労やな。
 で、商品写真とか商品名とか型番とか、持ってきてますのん?」
「写真はこれだんねん」
「なんでやす?この写真」
「金属パイプの断面」
「こんなんただの黒丸ですがな」
「こっちは表面研磨した金属板」
「これ、ただ銀色がベターッと写ってるだけだっせ」
「これがわたいの猫だんねん」
「猫の写真はどうでもよろし。ぶっさいくな猫やなあ。ちょっともバズらんやろうなあ。」


「SEOどないしますのん」
「瀬尾はんやったら裏のメッキ工場のおっさんや、もう14年の付き合いだっせ、ビールようけ飲むおっさんでな」
「おまはんのご近所の話はどうでもよろし。かなわんお人やな。どない言うたらわかるかな。どないなワードでお客呼びまっか?聞いてますねん」
「うちのん、プロテクトはずしたoffice2003でワードまだ使うてます」
「知らんがな。買いなはれ、それぐらい。そのワードと違う。どんな言葉でお客呼びこまはりまっか?と尋ねてますねん!」


「で、あんさんとこは、よそさんと、何が違いますのん?」
「住所が違う」
「そら誰かて違うがな。そうやのうて、ご同業と比べ差別化なんだっか?聞いてますねん」
「差別はよくない」
「要らん知恵だけ、ついとるな。違うがな。これやったらウチならでは!いうもん、なんぞおまへんのん?」
「あ、それやったらあるわ。
 うちの工場の前、排水溝が長いこと詰まってますねん。ほんで雨降ったあとは、うちの前だけ水たまりごっついの、いつまでもある。ドブ掃除ひとつようせん言うて、よう誉められます」
「ひとっつも誉めてへんがな。けったいなお人やで。「当社はドブ掃除してません」ではコーディング書けへんがな。」


「やれやれ。なんとか載せる要素だけはコーディングできたわ、ほんま難儀なお人やで」
「うは!できましたかいな!
 これで今晩からむちゃくちゃ毎日お客来るんやな!来なんだら、あんた、代わりに客呼んでこい」
「むちゃくちゃ言うてるわ」

わあわあ言うております、おなじみの『代書屋』でございます。

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