「洗礼」
浴槽で洗礼ごっこ。清めるやつも、その逆もいない。くぐもった鏡はその正体を知っているのだろうか。言葉で問いかけるほどまだおかしくはない。
救ってくれって誰に言ってるのかは分からないけど、自分ではないことは確かなんだ。だけどその言葉を知ってるやつも自分だけ。
鏡に写る白髪が体の歴史を刻んでる。ならば心の方はどこいった。合図をくれたら探しに行くよ。合図があるのか知らないけれど。
怒りと情動が自分を深く落としていく、そうしていつもありきたりな言葉に変わりきってしまう。その数を数えるべきだった。そう気が付くのは、いつも言葉になってから。
どこかで聞いたようなセリフを借りて、どこかの憧れが吐いた言葉を紡ぐ。そこから逃げたがっても、そこに出口はないんだって。
それも誰かのお言葉か。
ああ、そろそろ限界だ。嫌いなアイツが記憶の中で笑ってる。
引き戻してくれるやつは誰だ。一体どこで何してんだ。
溺れる前に救ってほしい。寒いセリフでもなんでもいい。
誰かに手を引いてもらいたい。
でもそれができるのは自分だけ。
遅すぎた気づきを抱えて沈むのみ。
ああ、ジーザス。その魂に救いあれ。
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