面白いコンテンツ、気持ち良いコンテンツ
面白いコンテンツと気持ち良いコンテンツについて。
少し前にメイドインアビスの著者である漫画家つくしあきひとさんのX(Twitter)ポスト(2024年3月15日)で紹介されたYoutubeリンクです。
この中で漫画編集者の千代田修平さん(東大卒?小学館?)が以下のように言語化されていて、興味深かったです。
・気持ち良い漫画とは、自分を肯定してくれる漫画
ハーレムものでの全肯定・異世界でチート無双する・エロやグロ等の自分の内部での快感がある漫画。(映像になった時の、バトルや戦闘シーンの勝利も気持ち良いカタルシスの一種かと思います。)
・面白い漫画とは、自分にとっての異物・肯定してくれない他者に気付かせてくれる漫画
今までの自分にない価値観・世界・快感原則が提示されることにより、読後に自分の世界観・価値観・考え方が変化する漫画」
これは別に漫画だけに限定した話ではなく、アニメや小説、あるいは文学や各種表現などの創作・著作物全般に言える話かと思いました。
勿論ジャンルや想定読者・コンテンツ内容により方向性は変化するものですし、2方向だけで語れるものではないと思っています。動画内で千代田氏が語っているように方向性に優劣をつける様なものでなく、読者の状況・気分等により選択されるコンテンツも左右されるでしょう。
交感神経と副交感神経がバランスを取って自律神経系の恒常性を維持しているのと同様に、「面白いコンテンツ」で世界観や価値観といった自分の内部モデルを変化させ、「気持ち良いコンテンツ」で不安定になった内部モデルを安定させるといったループモデルで、内部モデルをバランス良く進化させて行くことが理想的だと考えています。
私がアニメなどのコンテンツに求めるのは面白さの荷重が大きい
私がアニメなどの物語に求めるものは、原作者の世界観・キャラ魅力等による没入感・作品の背景や物語の隠喩等から導かれる驚きと発見です。
アニメ作品は、漫画・なろうやラノベ小説、オリジナル等の幅広い原作表現者群から人気作を抽出して、毎期新作が多数提供される裾野の広いプラットフォームだと考えています。
新たな世界観を持った表現者(原作者)に出会う場であり、原作者独自に構築された世界観・アニメ制作者の訴求表現力が伝わる良い作品に効率的に出会う事のできる場所だと捉えているのです。
初見の導入と設定で「驚きと興味」を惹き、序盤の展開で「没入感」を与える魅力的なキャラ提示し、序盤以降に「世界観」に深みを与え、物語内隠喩などで「新しい価値観や発見」をそれとなく気づかせてくれる全体構成、というのが理想的な構成です。
序盤で驚きと興味が得られないと没入感に繋がらず、中盤以降にキャラや物語を深く理解するための時間と労力を割く事ができず、物語世界に入り込めないまま物語から脱落してしまいます。
ジャンル全体を俯瞰して言語化・一般化するのは難しいですが…
・SF/ファンタジー/異世界転生などは、面白いコンテンツにベクトルが向くと思っています。作者世界観の統一性を重視。突飛で目新しい設定も良いが、物語世界内で設定法則が違和感なく統一適用されてることが重要。後付やご都合の盛り展開で設定がズレると没入感が失われ冷めます。
悪い意味での量産型の異世界・なろうモノは、気持ち良いコンテンツではあると思うのですが、他所から設定や世界観の借用とツギハギが透け、原作者の新規性や統一感に欠けると感じることも多いと感じています。
・日常/学園ドラマ/成長物語などは、気持ち良いコンテンツにベクトルが向くと思っています。
会話や空気感や心情などの展開に共感性(あるある)と気づき(なるほどなー)が多いとツボに刺さります。
・コメディ・メタコメディなどは、現実の世界観や物語内世界観を上手いバランスでズラしてくれると良い。笑いのツボとなる世界線のズレのベクトルが大きくなれば笑いは大きくなるけど、ズレすぎると外すのでバランス感覚は大事かも。
追記。物語の「接地性」について考えてみる。
そんな視点で見る2024年アニメの「面白い」作品
2023年通期アニメの「面白かった」作品
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