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J2第10節 岡山vs新潟 ゼロ式【図解】レビュー

どうも、ゼロファジ(@Zerofagi)です。

3月5日の栃木戦以降勝ちから遠ざかっている岡山。433を採用するも、なかなかに攻守ともに課題の解決が進まず成績も低迷。再試合となった幻の山形戦や琉球戦の3-3のドローを振り返ってみても、チームの進歩をゲームから読み取りにくい試合が続いています。目先の勝ち点も大事ですが、それと同じくらい「前に進めている手応え」がほしい。そうして迎えた新潟戦でした。

写真提供:hide(@fagi1598)

2022 J2 第10節
4/17 14:00K.O. @シティライトスタジアム

ファジアーノ岡山 1-1 アルビレックス新潟

12分谷口海斗
70分ミッチェル・デューク


0.両チームのスタメンとフォーメーション


4231vs4231

この試合の岡山は433ではなく、喜山・河井を並べたダブルボランチを採用。右サイドには前節抜群の活躍を見せた白井、左サイドには木村太哉をすえ、トップにデューク、トップ下にムークを配する4231で試合に臨みました。この前線3枚のチョイスについては個人的にはかなり好感触をもっています。いま、一番観たい3人だね。

一方の新潟も4231。なかでも特に注目なのは「居ないでJ2」ランキングの上位に食い込む左SH本間至恩です。あとはもちろん島田譲でしょう。別れた彼女がどんどん魅力的になってモヤモヤする感じによく似た感情をまたしても味わうことになりました。


トップ下がやっかいだぞ

次に基本フォーメーションのかみあわせを確認しておきましょう。4231はおおざっぱに言えば442の仲間なので、4231同士の対戦となったこの試合ではかなりの局面で選手と選手がマッチアップする形になりました。その中で気をつけておきたいのは、両チームのトップ下のところ。伊藤涼太郎とステファン・ムークは比較的マークされにくいかもしれないなぁというところでした。

1.ボールを持つ新潟と前プレに出る岡山


ゲームの大まかな流れとしては新潟がボールを保持し、岡山が守備に回るという形で進んだゲームになりましたね。たぶんボールポゼッションで6から7割くらい新潟がボールを持ったので、ざっくり言えば攻める新潟守る岡山というタイプの試合であったと思います。

では、まず新潟の攻撃からチェックしていきましょう。


新潟の持ち場移動

新潟は4231のフォーメーションから、ボランチの選手が持ち場を移してCBと並ぶような格好になります(①)。それをうけて、右SBが高い位置を取り(②)、右SHはインサイドに入ってきてシャドー化する(③)。常に、というわけではありませんがこのようなおもしろい変化を見せていました。

攻撃時4141みたいな感じの新潟

さらに細かく仕事の内容を見ていきます。まず、ボランチ含めた最終ラインはパスを打ち出す砲台の係を担当します。ここから長短のパスを蹴り込んで攻撃を組み立てていくわけですね。新潟の2CBはキックの精度がクソ高いのでボーっとしてたらほれぼれする様なタテパスを刺されます。また、この図でいくと島田譲の位置に入るボランチにパスを通させてしまってはいけません。

次に、新潟の左右のワイドには持ち場移動でWG化した右SBの長谷川、そして左サイドに本間至恩。彼らは基本的に外に張ってボールを受ける外側のレシーバー(受け手)の係をします。

そして、高木・伊藤は内側のレシーバーの係。彼らはボールを扱う技術が高く、小柄ながらとてもうまい選手たちです。岡山のDF-MFの間のライン間に侵入してボールを受けることで、崩しのフェーズへと入っていきます。

したがって新潟としては、堀米・千葉・田上・高・島田の砲台係からパスを打ち出して、内側のレシーバーや外側のレシーバーへといいボールを届けたい。これが基本的な考え方だったのかなと観察します。

では一方の岡山はこうした新潟の特徴にどう対抗するか?

前プレで対抗

岡山は前プレでハメに行きます。433ではどうにもハマらず苦労した前プレでしたが、この試合では明確に守備時は442でプレッシングをかけていましたね。新潟は4141のような形になり、最終ラインは4枚なので、こちらの前の4枚とは同数になりプレスは比較的ハマりやすい。砲台からパスを打ち出したい新潟vs前プレで邪魔して高い位置で奪いたい岡山、基本的にこのような形で試合が進行していくことになります。

2.島田譲のロングフィードが光る新潟の先制点


岡山としては前から厳しくプレッシャーをかけて新潟のボール運びを阻害したい。しかし、非常にクオリティの高いプレーの連続から先制点を与えてしまいました。そのシーンを振り返ってみましょう。

島田の位置にボールを入れさせたくなかった岡山

堀米・千葉・田上の砲台係に対して、白井・ムーク・デュークの3枚がプレッシャーをかけています。デュークとムークの2トップの背後に入るボランチについてはボールを持たせないように、FWとMFが連携して警戒していました。ところが、このシーンではわずかに河井のプレッシャーが遅れ、島田譲のロングフィードを許してしまいます。もう、ここのプレーは脱帽ですよ。こんなに早い判断をされると、守備側は展開に追いつけず後手を踏んでしまうのも無理からぬ話です。

こうして島田からの超速ロングフィードを本間至恩が前向きに受ける形が作れました。レベルの高いドリブルを持つ本間至恩を高い位置で1対1に挑ませることができれば当然にチャンスは拡大します。まさに狙い通りといったところでしょう。

本間はそのままドリブルで前進します。成瀬を外して右足でシュートを狙いに行くか、それともタテに持ち出してクロスに行くか、さあどちらだろう?というところです。ここで注目したいのはゴールを決めた谷口の動き方。

谷口の動きを見る

谷口は本間の1対1に視線が集まる中、このようにやや遠回りでボックス内に入っていきます。まるでボールから逃げるような動き方ですね。

本間が成瀬をかわして左足でクロス、それをファーサイドで待っていた谷口が徳元の後ろからズドン!と。新潟の先制点はこのような形で生まれました。

徳元は「自分のマーク(谷口)を外してしまった」と言っていました。たしかに、谷口の存在を認識していたので悔しいところでありますが、そもそも谷口と徳元がボックス内でハイボールを競り合わないといけない状況そのものが不利なわけで。岡山としてはそうした形を作られる前段でもうちょっと邪魔をしたかったですね。

しかし、こちらにも大きなミスはないと思うんですよ。ここでは島田譲のロングフィードの判断の速さ・キック精度がまず素晴らしすぎたし、本間至恩のドリブルからのクロスもストップできなかった。そして谷口の動きも見事だった。3つもよいプレーが重なるとやはり得点は生まれるもんです。新潟うめーな・・・という解釈でいいんじゃないかと思います。

3.岡山の前プレの評価と体力の問題


試合を通じて岡山の前プレは結構効いており、433で前プレしていた時に生じていた問題はこの試合ではあまり起こりませんでした。(横浜FC戦2.岡山の前プレが空転することで押し込まれる を見てね)

したがって、前半の新潟は先制点にみたような大きなロングフィードを使った攻撃が主体でショートパスで内側のレシーバーへとボールを届けるシーンはあまり見られなかった。

ところが、後半になると事情が変わってきます。

岡山の前線の体力が落ちてきて、次第に新潟の砲台係に対してプレッシャーをかけることが難しくなってきます。こうなると、CBやボランチが十分に狙いを澄ましてタテパスを撃ち込むことができるので、

岡山のライン間に入る新潟の内側のレシーバーへボールを供給できるようになっていきます。さらには、本来タッチライン近くでプレーすることの多い本間至恩はその役割から解放され、かなり自由にボールを受けることになります。後半57分のシーンを見てみましょう。

デュークとムークのプレッシャーを新潟に回避され、CB千葉にボールを持ち出されてしまいます。つまり、”砲台係がパスを打ち出す準備が整った”ということですね。さて、新潟はどこにパスを撃ち込むか?

本間はインサイドに入ってきて、真ん中でボールを引き出します。そして高木に落として前を向く。このように、前半ではほとんど侵入を許さなかった岡山のDF-MFのライン間にテクニックある新潟の中盤の選手が入ってきているのがわかります。そして、ボランチの背後をケアするためにバイスがつり出される。ここはやむを得ない。さあ、崩しのフェーズだ!

高木は裏のスペースへのスルーパスを選択。そこに走り込む松田と徳元。若干パスが合わなかったので、決定機にはなりませんでした。

と、このように、岡山のプレッシングをはがして砲台が準備OKになる→中盤がライン間で受けて崩しのフェーズに移行する→裏のスぺースへ侵入と、とてもロジカルな攻撃が作れていていることがわかります。先制点みたいなクオリティを出されていたら失点シーンになっていたかもしれませんね。

でも、逆に考えると、前半はこんな攻撃の可能性の芽を摘んでいたんだなと解釈することができます。これまでの433のプレッシングではここまでの成果をだすことは程遠い状態だったことを考えると、この試合での守備に光明の兆しが見えたといってもいいんじゃないか?と思います。


4.ニアゾーンを攻略しまくる木山ファジ


今年の木山ファジのキーワードには「ニアゾーン」という言葉があります。


ニアゾーン

ペナルティエリアの左右のこのエリアのことを指しますが、ここにいい形でボールを持って侵入することができれば得点できる可能性が高いので、それを目指そう!という狙いです。ところが、ここまでの試合ではなかなかにこのエリアに侵入することができずチャンスを拡大することができていませんでした。

この新潟戦ではそこの部分が大幅に改善されていて、ここからいくつもチャンスを作ることができています。そのあたりを詳しくチェックしていきましょう。まずは、4231に変えたメリット、デュークの強さ、左サイドの木村太哉と徳元コンビの良さがいかんなく発揮されたシーンから。


新潟民「本間も反則やけどデュークもやぞ・・」

ゴールキックをうけた柳に対して、新潟の伊藤が寄せる。柳は顔を上げて前方をうかがい、デュークへのロングボールを選択します。ちなみに、この試合でもデュークのマークを担当した田上はハイボールでデュークを上回ることはできず、結構ボコられていました。その手におえない感は岡山の得点シーンにくっきりと出ています。

というか、デュークを抑えられているCBはこの10試合で見かけなかった。首位の横浜FCでさえも。ともかく、ハイボールに関してはほとんどのチームにデュークは勝つだろうと思っておいてよさそうです。デュークもコンデイションがずっと懸念されてきましたがここにきて2ゴールと、そろそろエースとして火がついてくるころじゃないか?と思われます。楽しみですね!

話をシーンに戻しましょう。

デュークとの競り合いで、こぼれたボールをトップ下のムークが拾います。4231のトップ下に入るムークはデュークとタテの関係になって、セカンドボールを拾いやすい位置に配置されています。これが442だとボランチが行かないといけないので少し距離がある。トップ下を置いた効果がよく出ているシーンだと思います。

ムーク→河井を経由して、左SB徳元へとボールが送られます。この間、新潟は守備に戻り4411のブロックを形成。さて、こっからどうしますかね?というところです。徳元の位置を見てみると、大外の木村より内側に立っていることがわかります。徳元は木村へのパスを選択。

徳元はパスした直後、新潟の右SB長谷川が木村に食いついたのをみつつ、長谷川の背中を通るようにしてタテに走り込みます。右SB長谷川とCB田上を線で結んでいますが、ちょうどSB-CBの門を徳元が抜けていくようなイメージ。ちなみにこのように内側を抜ける走りこみをアンダーラップ(インナーラップ)と呼びます。

デュークの前進に合わせてCBがついてきます。そうすると、SB-CBの門はこのように広がってきます。この広がった門を徳元がくぐってスペースに抜ける。

ついに、ニアゾーンにいい形で侵入できた木山ファジ。残念ながらクロスのイメージが合わずに、シュートまで持ち込めませんでしたが、しっかりと攻撃を作り上げることが出てきています。

このシーンと同じような形で、前半32分には徳元が抜け出しクロスをあげる。デュークのドンピシャヘッドをGK小島が掻き出すという決定機がありますので見てみてください。ここの徳元のランは完璧ですよ。誰も徳元にマークつけない。4人の新潟の選手の背中を通ってスルスル抜け出す姿は痛快です。絶対見て徳元すげー!!って言いましょう。もしかしたら?ですけど、ここの河井陽介は意図的にドリブルして徳元のアンダーラップを誘発していたのかも?と思うのは考えすぎだろうか。でもちょっと不思議なドリブルだったのでアレ?っと思ったんですよね。こういうの本人に聞いてみたい。まあこれは余談。


この試合ではニアゾーンの攻略を軸にして、5,6回決定機を作ることができていました。また、特定の個の力に依存した形でなく、チームで、グループで、有利な局面を相手ゴール前で作ることができていた。これまでの試合でなかなかできずにデューク頼みに終始してしまっていたことを考えると成長の痕跡を見て取れた試合でしたね。

決定機を3つくらい外したので試合後デュークが死んだ目をしていましたが笑どれかひとつでもとれていたら十分に勝てた試合だったと思います。

5.連戦に向けて


左サイドのキムトクコンビ楽しいなおい

ちょっと時間的に入りきらなかった分を最後に補足して終わりますね。

攻撃面での改善は他にも感じるシーンがありまして、一番大きいのは出し手・受け手の2者がからむシーンのみならず、そこに3人目が絡めるようになってグループとして「つながった」プレーが見られるようになりました。基本的にはデュークに当てて落としてという形が多いですが、下りていくデュークをおとりにして背後に抜けたりとバリエーションが増えてきています。

今節は左サイドが火を噴きまくっていましたが、前節では白井が大活躍で右ワイドは彼と成瀬でだいぶ計算が立つ。そう考えると、両サイド共に攻撃面では期待できそうな感じになってきました。

それから442でのプレッシングはこの試合で観た通りです。高い位置でボールを奪えるシーンも増えましたし、ズバーンとタテパスを通されて「ぎょええええ」と言わないといけないシーンはほぼなくなりました。

そしてダブルボランチですよね。やっぱり喜山はゲームに絡んできてチームを変えるなあという印象を強めた試合でもありましたが、攻撃・守備の両面のサポートは433のときくらべてはるかにスムーズです。木山さんが今後どうするのか?4231でいくのか?やはり433でいくのか?は今後の成績にもかかわる重要なポイントなので注視していきたいですね。

ここまでなかなか勝ちきれない試合が続いていますが、成長の痕跡をやっと見つけられる良い試合ができました。これで個の力依存じゃなくて、確たるチーム力の積み上げの上に「個の力で殴る」をトッピングできるチームになっていけそう。木山さんの言う通り、光は見えている。さあ、こっからの連戦で成長と勝ち点を積み上げていきましょう。

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