J2第5節 岡山vs横浜FC ゼロ式【図解】レビュー
どうも、ゼロファジ(@Zerofagi)です。
前節は町田に3-1と内容的に完成度の違いを見せつけられた敗戦でした。そして迎えた今節は4連勝で首位につける横浜FCとの対戦。相性の悪い3421のフォーメーション、4試合で9得点という高い攻撃力。再び完成度の高いチームに対し、どのように対抗していくか?注目の一戦でしたね。
写真提供:hide(@fagi1598)
こちらの記事はDAZNの中継の試合時間を付記してあります。該当する時間のシーンをDAZNで見ていただくと楽しさがよりアップしますのでお時間ある方はぜひそのようにお楽しみください。
0.両チームのスタメンとフォーメーション
3421のチームとの対戦はこれで3度目となります(甲府・栃木)。並びの上では相性の良くないうえにしかも首位ですからね。攻守ともに苦戦が予想された試合でした。
基本フォーメーションでかみ合わせを確認してみましょう。3421の2ところ、2シャドーをどういう形で使ってくるか?はチームによって個性が出るところですが、横浜FCは3トップのFWとしてではなく、トップ下っぽい運用をするチームでした。こういうチームと対戦するときに、特に注意すべきなのは本山の左右のスペースです。
相手のダブルボランチをこちらのインサイドハーフ(田中・河井)が見る。しかし、その背後には横浜の2シャドーがいます。彼らがナチュラルに本山の両脇のスペースにすっぽり収まる格好になるので、この時点で「横浜のパスの出し手を封じられない場合、シャドーが本山の両脇でボールを受けられそうだぞ?」という予測がつきます。
また横浜FCのメンバーで特筆すべき点としてCB陣がみんな運べる・蹴れるという性能が高いことがあります。そしてダブルボランチもまたうまいことうまいこと。ボールを前に運ぶ力はかなり高い印象を受けます。そのかわりに、CBで最も身長が高いのが中塩の181㎝で、中盤から後ろにかけて高さ不足は否めない。そういう布陣になっていました。
1.横浜のフォーメーションチェンジ”ミシャ式”
さきほど基本フォーメーションでかみ合わせを確認してみましょうと言いましたが、実は横浜FCは攻撃の時も守備の時も3421から形を変形させるチームでした。まずは、攻撃時彼らの配置がどうなるのか?をチェックしておきます。
横浜FCがボールを持ったとき、ボランチの手塚が最終ラインに落ちてきます。そして、左右のCBが広がってSBの位置に移動して、左右のWBはもっと高い位置に張り出していく。このようなメカニズムになっています。
最終的には4-1-5のようなフォーメーションに変化するのが大きな特徴です。この並びはいわゆる”ミシャ式”と呼ばれる形で、現札幌の監督のミハイロ・ペトロビッチ(愛称がミシャ)監督が広島・浦和時代に採用していたフォーメーションなんですね。ちなみに、横浜FCの監督の四方田さんは長く札幌でミシャさんの元でコーチをしていた人です。
じゃあ、今度は守備時の横浜FCの並びをチェックしてみましょう。
横浜FCは守備に532の陣形で守ります。前線には小川とシャドーの伊藤をのこし2トップにして、もう一人のシャドー長谷川はボランチのラインに落ちるのが特徴。
またボールサイド(ボールのあるサイド)のSBに対しては、WBが対応しボールを持たせません。この試合では特にバイス→徳元へのボールにはイサカが厳しくチェックしており、左サイドで自由にボールを持たせない狙いを感じさせます。また中盤ではこちらのインサイドハーフ(田中・河井)に対してダブルボランチで対応。そしてアンカーの本山は2トップでケアするかまえ。
岡山の右サイドへのサイドチェンジには、シャドーの長谷川が走ってこれを防ぎにいく。これが横浜の基本的な守備の考え方であったのだろうと思います。
2.岡山の前プレが空転することで押し込まれる
まずは、ファジアーノ岡山の特命広報大使に就任されたむっくんのこちらのツイートを見ていただきましょう。もう、現状これが一番デカいよ!
木山ファジは433で前からプレッシングをかけていくスタイルを追求しています。ところがですね・・・全然足並みがそろってなくて正直あまり効果的な守備になっていないんですよね。たとえば、こんなシーン。
DFラインに落ちてきた手塚へデュークがプレスをかける。手塚は岩武へと横パス。そこにチアゴが寄せていくというシーンです。
こんなに献身的なフル代表選手もなかなかいないんじゃないか??というデュークは、2度追いして岩武に近づく齋藤をケアします。すると、岩武は再び手塚にリターンのパスを送る。これで手塚が完全にフリーで前向きにパスを蹴れる体勢が整いました。さあ、問題はどこにタテパスを刺すか?
アンカー本山の脇、433の弱点のところです。冒頭のフォーメーションのかみ合わせで見たように、横浜の2シャドーはアンカー脇にすっぽり収まります。したがって、出し手(手塚や中塩、斎藤)がオープン(自由にパス出せる状態)になってしまえば、あとは花道を空けるだけ。この場合齋藤がデュークを釣ったので、DFラインとアンカー脇をつなぐ回廊が現出することになってしまいました。
このようなパスが通ってしまったときは「ぎょええええええ」と叫びましょう。叫び声はなんでもかまいません。なぜか?というと守備がうまくいっていないからです。
ボールをよりも相手陣内側にいる選手をわかりやすくするために色分けしてみました。このように手塚→伊藤のパスが通ったことで、本山より前にいた岡山の選手はただちに守備に参加することが難しい状況に追い込まれてしまっています。前にかけた守備力がパス一本で無力化されとるわけですね。
前プレをかけて高い位置でボールを奪う。これが最高の結果。そして相手に苦し紛れのボールを蹴らせ望み通りの攻撃をさせないそしてこぼれ球を回収する。これが次善の結果です。
そこへいくと、体力を使って追いかけに出たのに、ボールも奪えず苦し紛れにプレーもさせられず、パス一本で前にかけた守備力をパーにされてしまっているわけです。これでは、前プレの収支が正直合わない。骨折り損のくたびれ儲けとはこのことでしょう。
「相手のコートでサッカーをする」が木山ファジの大きな目標ですが、そのためにはプレッシングをどこまで磨けるか?が大きな課題と言えるでしょう。
3.押し込まれる岡山の451と横浜FCの攻め手
そういうわけで、なかなか前でボールがとれず終始横浜FCに押し込まれる形が多かった試合でした。この流れは前後半を通じて続いており、とくに体力の落ちた後半は陣地を回復するパワーがのこっていなくてかなり低い位置で守備をしなければならなくなります。このあたりが失点にもつながったかもしれません。では、その押し込まれた岡山の守備と横浜FCの攻撃のせめぎあいの部分をみていきましょう。
岡山は押し込まれた場合、451のフォーメーションで守ります。これに対し、横浜は415のミシャ式。その場合、前線にならぶ5枚の選手が非常にやっかいになってきます。
まず、岡山の最終ライン4枚の外側にWBが位置することになるので、そちらに注意を払わなければならなくなります。
つぎに、横浜FCの1トップ2シャドーが岡山のDFラインとMFのラインの間に位置することになります。いわゆる「ライン間」というやつ。
そして、齋藤・手塚・中塩などのパスの出し手がオープンであれば、コースさえ空けばアンカー脇のスペースにシャドーがいるのでタテパスが刺さる。そこには伊藤翔と長谷川がいる。
もう、このへんミシャ式だなぁという感じなんですがあとは前三枚のコンビネーションでCBをはがして真ん中抜きましょう!という。やはりアンカー脇の攻略を軸とした攻撃を見せていました。これに対して岡山はどう対応するか?
ライン間に入ってきたボールにはCBのどちらかが前に出てつぶしますよ!という考え方。横浜FCのアンカー脇狙いはもう数えるのも面倒なくらいたくさん見られまして、正直何べんMFの守備ラインを突破されるねん!状態でした。にもかかわらずその流れで失点しなかったのは、CBが潰せたシーンがあったことと、単純に横浜FCが肝心なところでかなりミスってくれていたからだと思います。うーん、この守備の感じであればたぶん下手すると前半2失点くらいは食らっていてもおかしくないかも?という印象をもちましたね。
岡山はほかにも、出し手にプレッシャーをかけよう!ということで、デュークの脇を使ってくる横浜FCに対してIHを張り出してちょっと2トップぽくなるいつものやつを見せたりはしていましたね。
横浜FCは他にも左CBから右への大きなサイドチェンジで右WBをイサカを使う形などもみせており、中を固めれば外へ、外を意識すればライン間へと、非常にバランスよく攻撃することができており、なかなか守備は苦しかったというのが正直なところでした。
ボールが運べて、パスで進めて、ライン間を使えて、コンビネーションで崩せて、前線に高さがあるので蹴っても収まって、ワイドに効果的にサイドチェンジが送れて、プレッシングがいいと。まあ、あまり隙がない。これは4連勝するよなぁというのが率直な感想ですね。
4.岡山のよかったところとは?
ドローなのに負け試合みたいな口調でしゃべってしまいましたが、岡山にもポジティブな要素はありました。まずは、やっぱりデュークの高さは反則であるということです。この試合では主に中塩・岩武あたりと競るシーンが多かったですが、かなりの確率でボールを落とせておりやはり空中戦においては無双だなぁという感を強めました。
前節中途半端に終わったデュークへのロングボール作戦ですが、今節では先制点の一連のシーンを見てもわかるように、デュークが競り勝つ前提での準備ができており競り合いが無駄に終わるシーンが少なかったです。これはこれでいい。
また、ビルドアップで横浜をはがして前進に成功するシーンもわずかながら確認できました。
このシーンではバイスから組み立てて、本山経由で田中雄大が横浜FCのプレッシャーラインを突破することに成功しています。結果的に小川がファウルで止めましたが、守備が失敗したからファウルしたわけですね。
あるいは、
532で守る横浜FCに対して、柳が持ち出して木村へのタテパス。
それを木村太哉がフリックしてデュークへ。デュークがスルーパスを送り、木村太哉を右サイド奥へ送って折り返しのクロスと。非常にスムーズな流れでシュートまでたどりつけており、こちらは少しづつ成長の痕跡が見られるなと感じました。
5.この勝点1をどうみるべきか?
この試合のドローをどういう風に解釈するか?じつはここはかなり重要な論点だと思っています。この試合、先制した形がロングボールでの攻撃だったのでその後の攻撃の割合もロングボールがほとんどということになりました。実際デュークというストロングがあり、相手のCBに競り勝てているのでそこで計算を立てるのはアリです。しかし、あくまでそれはサブウェポンであって、メインとなる攻撃はグループで攻撃を構築していく手法が担うべきでしょう。
そういう意味では、実戦の試合の中でそういったトライがそこまでできなかった点は見逃せないポイントであろうと思います。
この試合では横浜FCの前プレを警戒して、それを避けるためにロングボールを多用した狙いがありました。ということは、横浜FCのほうは横浜FCの方でデュークに勝てないかも?というウィークがあるために、通常通りの前プレに出ることができなかったということでもあるでしょう。前から行って蹴らせたはいいけど、デュークが落としてセカンドに負けたらそれまた前プレの収支が合いませんからね。
となると、ですよ。
横浜FCのプレッシングもまたセーブされたものであったということになります。岡山が多少ボールを動かせたといっても、セーブした横浜FCのプレッシングを相手にして、ということになります。つまり、ガチの前プレを食らったらどの程度対応できるのか?は未知数ということです。
また守備の面では上記のとおり、前プレははがされ、引いてはライン間とサイドチェンジを使われと、非常に苦しめられた印象です。そして体力的に消耗した分、後半はかなり長い時間押し込まれることになりました。「相手のコートでサッカーをする」が達成できていたのは横浜FCの方で、こちらとしては実力の差をまたしても見せつけられた格好になりました。優勝したかったらせめてここまでやれないととても無理ということです。
しかし、自分としてはこのドローでの勝点1はよくやってくれた!と思っています。なぜなら今の岡山が今シーズン一番弱いからです。ある程度出来上がっているチームに、新監督・新フォーメーション・新加入選手が半数のチームが熟練度で優ろうとするのはどだい無理な話で、岡山には成長に費やす時間が必要です。とはいっても、弱い岡山が強くなっていくのをどのチームも待ってはくれない。ですから、弱い状態でもそれなりに立ちまわって勝ち点をとっていかなければならない。そういう意味では、この試合で横浜FCから勝点1をとったことは十分評価できる結果だと思います。
また、前節は惨敗に近い内容でした。相手の前プレにいっぱいいっぱいになってロングボールを蹴らされデュークは競り勝つけどだれもセカンドを拾えず。町田の背中が遠いと感じさせる敗戦でした。リーグで上位を保つためにも、またチームの方針の正当性によけいな疑念を持たないためにもこの試合で連敗することはさけたいところだったんじゃないかなと思います。そういう意味でも収穫はあったと考えていいのではないでしょうか。
さて、次は大宮アルディージャ。433同士の対戦ですね。この試合よりもどのくらい成長して戦えるようになったのか?楽しみにしたいと思います。
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