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MARVEL SNAP:資産と課金について ~DCG経験者向けの概観

MARVEL SNAPの課金圧は高いのか? 低いのか?

MARVEL SNAPにかなりハマっている。ゲームルールやその面白さについてはそれなりに語られているので、私はその資産形成と経済、要するに課金のことについてメモしておくことにしよう。ふんわりと聞き及ぶところによれば、MARVEL SNAPの課金圧は「高い」と思われているようだ。その意見は「どちらかというと正しい」。では、なぜそう言い切れないのか?それを判断する材料について、MARVEL SNAP未経験者向け、カードゲーム経験者向けに列挙したい。
そして敢えて私なりの結論を述べておくなら「プレイを躊躇している理由が課金の不安なら、始めたほうがよいよ」ということだ。

ユニークなカード入手システム

MARVEL SNAPのカード入手に特有のシステムに「シリーズ」と呼ばれる概念がある。プレイヤーはゲーム内通貨によってカードのレアリティを強化することで、カードの見た目を派手にし、コレクションレベルが上昇していく。コレクションレベルの上昇に伴う報酬として支給される「コレクタートレジャー」を通じて、カードはランダムに支給されている。……ランダムなのだが、当分の間は限定された範囲から抽選されている。この範囲というのがシリーズだ。シリーズは1から始まり、シリーズ1とシリーズ2は、そのシリーズ内のカードが全種類入手するまで、次のシリーズのカードを入手することはできない。そしてマッチメイキングはコレクションレベルが近いものとされるので、必ず資産状況が近いプレイヤーとしかプレイすることになる、と言える。

さて、この「資産状況が近いプレイヤーとマッチングする」という前提があるのだが、ポイントはシリーズ3以降だ。シリーズ3以降に設定されているカードはシリーズ1~2(50+25)にくらべて非常に多く(現在109?)、また各カードのデッキにおける重要度(≠強さ)にかなり差がある上に、コレクションレベル一定以上ではカード自体の入手確率=頻度が下がっている。シリーズ4と5以降はシリーズ3をコンプリートしても確定で入手することはない。シリーズ3以降が入手できるようになった時から、シリーズ4はシリーズ3の1/10で出現し(レア)、シリーズ5はシリーズ3の1/100で出現(激レア)する。

カード入手難度の極端な高さと、それを前提としたデザイン

前述のような仕様はどんな体験を引き起こすのかというと、敢えて前向きに表現するのなら「プレイヤーごとにユニークな体験」ができるということだ。まずマッチアップから観点では、シリーズ3以降のカード入手順はプレイヤーごとに全く異なるため、ごく一部の廃人コレクションレベル帯以外では様々なアーキタイプ(あるいはその変形)のデッキと当たりやすい。
次に、自身のデッキビルドも、「入手したカードからどんなデッキを作るのが良いか」を考えることが重要だ。

Tier1のデッキリスト

(ごく一部の廃人レベル帯、と表現したのは大げさではないと考えている。なぜならインフィニティ帯(他DCGに置けるレジェンドなどのランキングされるレート帯)の配信者の多くもカードをコンプリートしているわけではなく、入手しているカードでやりくりする要素がそれなりに見受けられるからだ)

じゃあ、好きなデッキ組むにはいくらかかるの?」カードゲーム経験者なら誰もが真っ先に考えることだ。しかし、このゲームではTier1のカードリストを完成させようと思ったら、いくらかかるか検討もつかない。CLの上昇に伴うカードの入手頻度が著しく低く、またカード全体が多いからだ。シリーズ3が当たりだした程度のゲーム進行度では、2万や3万かけたところでリストは99%揃うことはないだろう。

「……そんなに? ヤバ……このゲーム……

課金よりも圧倒的にプレイを求める課金構造

たしかに、従来のDCGからすると特定のカードを揃えるハードルはかなり高い。しかし、それは課金に対する効率であって、プレイに対する効率とは少し違う。具体的に比較してみよう。
カード入手に直結するコレクションレベル(CL)の増加には「クレジット」が必要だが、これを課金で入手するには「ゴールド」からの変換という形を取る。

課金でCLを上げる場合。ゴールドは最小単位で購入すると300ゴールドで800円。クレジットに変換すると、500クレジットにいかないくらいだ。(厳密には異なるのだがこのテのもののお約束で計算しづらくなるように変換レートが量で変わるようになっている。概算)500クレジットが資産と噛み合えば、CLは10上昇する。

プレイでCLを上げる場合。最も分かりやすく効率が良いのはウィークリーチャレンジだろう。ウィークリーチャレンジはデイリーのミッションを5つ消化するたびに入手でき、非常に容易かつ短時間で達成できる。デイリーミッション自体の報酬とは別に一週間で5つまで入手でき、合計で1350クレジットと200ゴールド入手できる。合わせて約1500クレジットほどの価値となり、CLは30以上上昇するだろう。ごく短時間、平日少しづつ遊ぶだけで2000円分を超える資産を無課金で入手することができる。

以上のことから、見出しの通り、課金ではなく圧倒的にプレイを求める課金構造であることが分かる。インタビューでも「一枚のカードをよく吟味して使ってみて欲しい」旨が言われている他、倍プッシュである「SNAP」というシステムそのものが「デッキの1枚の重み」を増させている……と語りだすと、カード資産についての話題から逸れてしまうが。明らかに意図された仕様であり、MARVEL SNAPを続けられなかった人はこれが受け入れられず、続けた人はその資産形成の過程をある程度は楽しめた人なのだと思う。

競技的なプレイ、カジュアルなプレイ、友人とのプレイ――全てに「足りていない」資産

カードゲーム経験者が何かデッキを見出した時、そしてMARVELの特定のキャラのファン……いや、もはやすべてのプレイヤーか。いつか、ある特定のカードが欲しいと思ったとしよう。

一応救済措置は考えられており、8時間おきに未入手カードプールから抽選され、トークンショップでカードが直接入手できるようになっている。それがシリーズ3のデッドプールならなんてことはない(それでも貴重なトークンの消費だ)のだが、私のようにシリーズ5のサノスだのギャラクタスが欲しいと思った日には、修行僧としての日常が始まったに等しい。要求されるトークンの量は6倍。トークンはゴールドやクレジットとは違い常設されている課金手段では入手できず、気まぐれに出るバンドルかトレジャーのレアドロップから僅かに入手できるのみだ。それゆえに、シリーズ5のカードの大当たり感はハンパではなく、まさに子供の頃のレアカードと出会った瞬間のような感動を味わえる、とも言えるのではあるが……

上記のような事情で、カードゲーム経験者の友人をこのゲームに誘うのはちょっと難しい。だって、カードゲーム好きな人って好きなカードを好きに使うのが好きじゃないか。そんなの当たり前なのだが。カードゲーム経験者は、(一定の課金を前提に)全カードプールから好きなカードを好きに使えることが当たり前だと思っている。それが競技的なプレイであり、ときにはカジュアルに遊ぶ場合にも、友人と遊ぶ場合にすら、そうだ。だが、このゲームはそうなってはいない。カード効果とスタッツを見て使うカードを決めきってしまうに、全試合で変化するロケーションとカードとのシナジーに頭を悩ませ、そしてSNAPの心理戦を楽しもうということらしいのだ。

デフレを楽しむ

今私が参加しているMARVEL SNAPのコミュニティでは、単にカードゲームプレイングの話には終始しない。絵違い(ヴァリアント)カードの話とか、シリーズ4,5カードの大当たり(大ハズレ)報告とか、公式が売り出すバンドルの内容に一喜一憂して盛り上がる。これは、他のDCGとはちょっと違うんじゃあないかと思う。例えばハースストーンなら、新拡張が出るたびにバンドル一つ買っておりそこそこプレイしているとすれば、組みたいデッキが組めないということはほぼないだろう。それはそれで快適かつ健全だ。だがそれゆえに、課金を容認したプレイヤーにしてみれば、敢えて話題にすることは何もない。必要ならば必要な額を課金して。それで終わりだ。

一方で、MARVEL SNAPはつまり、インフレから起こされたデフレを楽しんでいる。これがユニークなのだが、外側から全く理解されることなく奇異に映ることだろう。手持ちのカードを何かの劣化にならないように遊んで、その工夫が予想外の牙となってキューブ8個(大量点)をかっさらったり、かっさわれたりする。こういった世界観をカードゲームとして半ば強制していることをどう捉えるか、捉えるべきか。実際にプレイして確かめてみて欲しいと私は思う。



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