窓這う羽虫にエールを

鉛色の冗長で低い雲たちに覆われた世界

鈍い薄黄色した太陽が空を回ったかも
分からぬまちの窓硝子を寒風が忙しなく叩く

ガタガタと音を立てるこちらの世界の急斜面
暖とる一匹の羽虫が登ってゆく

隔たれたこの世界からどう逃げ出すのか
家主が洗濯物を取り込んだその時か
いつ訪れるかも分からぬときを固唾を飲んで待っている

登ってはぶつかる見えぬ壁
答えはすぐそこにあるのに近づくほどに
確信が持てなくなるのはなぜだろう

砕けては溶けてゆく蝋燭
まだそこに望みがあるのなら
絶やすことなく火を焚きつづけよう

あなたの諦めた夢は誰にも拾えやしないから

寒風が吹きつける急斜面を
今日も羽虫は這い上がってゆく

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