コスプレという名の現実逃避
私は昔から矛盾したものに心地良さや楽しさを感じる。
やらなくてはいけないことが多い日に、カレーをグツグツと煮ることが最高に矛盾していて、最高に心地良く、とても興奮する。
カレーが食べたかった訳でも、美味しいカレーを作りたかった訳でもない。
ただ、忙しいからこそグツグツさせたかった。
そんな矛盾が好きな私は、コスプレに一時期ハマっていた。
コスプレとは一般的に、アニメやゲームのキャラに扮装することを指すだろう。
しかし、私がしていたコスプレは、本来の自分とのギャップを手に入れる為や、自分に足りないものを補う為のコスプレである。
それがこちらです。
No.1 大学生コスプレ
Instagramで#今日のコーデを見ては、男受け満載の服を片っ端から真似して、大学でサークルクラッシャーしてそうな女になりきる。
専門学生時代、課題の量が多すぎて2年間ほぼ遊ばずに終わった為、服装だけでも暇で遊びまくって、男を食いまくってる大学生に見られたいが故のコスプレである。
恋愛のれの字も興味ないことが少しコンプレックスだった為、ちょっとでも女として生きている風に見られたかったのだろう。
No.2 ギャルコスプレ
ヘソ出しトップスにピチピチスキニーを履いて髪を少しかき上げ、太めのアイラインを引く。
ギャルとは真反対に属する人間性の為、ギャルの溢れんばかりのバイタリティと、人の懐に入るのが上手い、そんなギャルマインドが欲しかったが故のコスプレ。
No.3 ロックコスプレ
髪を紫や青、グレーなど派手な色に染め、rolling stonesのスタジャンなどを着る。
もともとロックをよく聴くのだが、見た目を寄せた上で敢えてクラシックや徳永英明を聴くのが心地よかった。
(逆にロックを聴くことは、そのまま過ぎて恥ずかしくなり、暫くロックは封印された。)
No.4 お姉さんコスプレ
淡い色のワンピースを着て、髪を緩く巻く。
メイクもナチュラル志向で。
大人な余裕が欲しく、当然のように親友や彼氏がいて、家族とも仲が良く、読書家で知識も豊富な、ふわふわしているけど芯のある女性になりたかったが故のコスプレ。
当時は自分のことが心底嫌いであったため、こんなことをしてまで変化しようと試みていた。
けど、どれも手に入らなかった。
大学生みたいに遊ぶ友達も居ないので結局1人で美術館に行ってその帰りにバーに寄ったりしてたが、終電になれば真っ直ぐ家に帰るし、
バイタリティやギャルマインドなんてものは1ミリも湧き出ないどころか、ただのギャル風コミュ障人間でしかなかったし、
ロックで派手な見た目も、電車などで人にジロジロ見られるのが腹立つ私には耐え難かったし、
常に周りに噛み付いていた私に大人な余裕なんてあるはずも無く、ただの"ある程度本を読む頑固女"でしかなかった。
そんなこんなで、毎回1ヶ月もするかしないかで惨めになり、服も一式捨てて辞めるのである。
そして結局、全身真っ黒に薄いメイク、髪の毛も染めず巻かず、香水もつけず、ネイルもせず
という省エネファッションに戻ってくるのであった。
最近はコスプレをめっきりしなくなった。
それは本来の自分を20年以上経ってようやく認めることができたからだろうか。
それとも、社会に揉まれてそんなことを気にしていられなくなっただけなのだろうか。
後者であれば悔しいので、また余裕ができたらコスプレしてみようかな。
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