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『影裏』

◆あらすじ◆
転勤で盛岡へやってきた今野。慣れない土地で心細さを感じていた彼は、同い年の同僚・日浅と親しくなる。交流を重ねていくうちに、唯一心を許せるかけがえのない存在となる。しかし、日浅は何も言わぬまま突然会社を辞め、姿を消してしまう。


⚠️ほぼほぼバラしちゃってる。


知り合い(岩手出身)の1人が『岩手のブロークバック・マウンテン』と仰ってたけど確かにそのニュアンスはあったな。展開が少し似てる。

説明じみた台詞は無く、逆に接写や滑べる様なパーン、或いはカメラワークでの描写が彼等の何たるかを物語る。
オープニング、裸の足先からのパーンは不覚にも【女の人】かと思っちまったよ。
下着を過ぎるまでずっと思ってて肩あたりでようやく「あっ、剛君だ!」って思って・・・いやぁ大友監督綺麗に撮るなぁ・・・ってなった。のっけからのサービスショットじゃん!!ww

で、剛君の役が男性を好きなセクシャリティだって確信。

逆に松田龍平演じる日浅は絶えずタバコを吸いコーヒーを飲み今のご時世なんかは関係なく己の道を突き進む的な・・・どう言うのか・・・あまり周りの反応は気にしないタイプ。平気で大胆な嘘を付ける。でも自分なりの【一線】はあって多分今野はその【一線】の範疇だったんだな。それは自分に対して利害無く向き合ったからなのかもしれない。それを目線の強さや言葉の選び方で感じた。

そんな風にこの映画は表情や間や仕草、癖なんかで凄く人物像を表してる。


そしてもう一つこの映画を表現するとすれば【人の営みなど1つのカテゴリーには収められ無い】この作品はそんな映画だ。

人生の中で二度と会わずとも忘れられない出逢いや人が居る。そして忘れられずとも人は生き、人生は進む。
あのラスト、今野は多分ずっと日浅を忘れられないでいる。震災で死んだと言う噂を信じずに自分なりに彼の足跡を追い、そして彼の生存のヒントを得た。自分の中に日浅が生きている確信を手にした。その喜びはずっと継続しているはずだしもっと探そうとすれば出来たかもしれない。でも彼は日浅のして来た事を考慮したか否か分らないが(多分考慮して)自分の【会いたい】気持ちを押し殺しただ生きている確信だけを胸に日々を送ったんだと思う。

そして新しい出会いがあり、また【別の感情】で新しい相手を受け入れてるんだろう。

どう見てもあのラストシーンは日浅LOVEだもんね。

震災を絡めたシリアス路線ではあるが恋愛映画が主線で、でも彼等の会話はしっかり震災と言う大参事を踏まえて成り立っている。

その上、すんごいサプライズがあって途中で中村倫也が登場するんだがそれがもう・・・全部かっさらうくらいの衝撃!( ✧Д✧) カッ!!
今野との関係がこれまた動くぜ!
あの二人は過去に付き合ってたのか?そいでもって倫也演じる副島和哉がゲイでは無くトランスジェンダーと言う事で別れたか?ここ結構重要なシーンだったと思うんだけどね。ゲイは男の姿で男が好きだから多分トランスジェンダーで女性性になっちゃうとこれは恋愛対象ではなくなるよね?

とかいろいろ考えさせられる・・・
そう、まさしく一つのカテゴリーには収められない作品なのだよ。


美しきシーンで言えば【苔】【祭】【天気】【川】【光の明暗】など、この作品のメタファーは個人的には非常にしっくり来た。
川での釣りのシーンはホントに心が洗われる程に瑞々しさに包まれた綺麗さがあったな。

苔が倒木の上に新しい生命を作りだす的な言い回しは凄く好きだった。


悲痛な出来事の中でも人は生命力に道を見つける。大友監督の今の日本への想いが痛烈に盛り込まれてる。

それにしても、岩手県版のポスターの方が良いと思うんですけどぉ~。

だって全国版の「突然消えた親友」ってだいぶサスペンス風になっちゃうじゃないかぁ。
もしかしたら原作はそうなのかもしれないんだけど観たイメージはそれ違うしな。
岩手版の「北の大地での出会い、その男は唯一心を許す友となった―。」の方がずっとイイ。合ってる。(と個人的には感じた)

しっかし綾野剛って男は誰かが「歩く孤独」って言ってたけどまじそれ!ww
剛君演じる今野が気持が複雑になっちゃって日浅に突然接吻しちゃうシーンがあって、でも日浅はそれを突き飛ばすわけでも無く受け入れるわけでも無く「やめとけ」と冷静に制する。アタシはね、あのキスがあったから日浅は今野を蔑ろに出来なかったんじゃないか?と思うわけ。「人を見るときは影の一番濃い所を見るんだ」と言い放った彼なりの今野への愛情が感じられて日浅は家族や今野以外の職場の人間には結構な嘘を付いて金借りたり勧誘して入会して貰ってたりとちょっとアコギな人格が見えるけど今野のアパートに入会を頼みに来た時の状況はきっと本当だったんだと思う(思いたい)。
成績なんてちっとも良く無くてお決まりの身内営業でなんとかギリギリ首を繋げてたんだろうね。
多分今野なら自分を信じて入会してくれるの解ってたと思う。でも敢えてそれをギリギリまでしなかった彼の今野への忠義と言うか友情が結構切なかったんだよね。

いやね、この映画が震災で敢えて自ら行方不明者(死者)になった男を描いているとしたらそれもありなのかもしれないな・・・ってちょっと思った。

ホントはね、あの未曽有の災害をそんな風に利用しちゃイケナイんだろうけど、でもそういう影の一番暗い部分を少しでも薄めようと、自分の陽の当たらない人生に少し陽が当たるかもしれないと思った人も居たかもな・・・ってさ。

でも、人間の本質ってそう簡単には変らないものだから、また同じ人生繰り返すんだろうけどね。

だから本当は1人だけでいいから信じられる相手が近くに居る方がイイんだと思う。
あの2人に【誰にも秘密な小さな接点】があると言いなぁ・・・なんて思いながら岐路に着いたのであった。

こういうシーンとか『ブロークバック』っぽい。


それにしてもあの新恋人?
ありゃダメだ。
日浅の魅力には到底太刀打ちできないので多分3ヶ月で別れるに300点!!(笑)

この視線の先に何を見てる?



2020/02/25




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