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『1640日の家族』

原題「仏LA VRAIE FAMILLE/英THE FAMILLY」

◆あらすじ◆
生後18ヵ月で母を亡くしたシモンは、父エディひとりでは子育てができないとして、児童相談所を通じて里子に出される。そんなシモンの里親となったのは2人の子を持つ夫婦アンナとドリス。アンナはシモンに実の子と変わらぬ愛情で接し、シモンも2人の子どもたちと兄弟のように仲良く元気に育っていく。こうして幸せな4年半が過ぎようとしていた時、突然実父のエディがシモンと一緒に過ごしたいと相談所に申し出るのだったが…。



「子供のため」とはなんて都合の良い言葉なのだろう。

何が子供の為かなんてホントに大人は解っているのだろうか?

「本当の親」も「嘘の親」も無い。
子供を手放す理由は全て大人の都合であり我儘なのだと観ていてよく解った。

里親の女性と妻の死のショックで幼な子を手放した父親には何の感情も生まれなかった。

でも、恐らくこの二人の子供に対する『想い』がこの展開の要だからここに感情移入出来たら号泣ものなんだろうな…ワタシは違ったけどね。

改めてワタシの母性の欠如が露見?…(笑)

先ず、この里子制度では血の繋がる父親と子のシモンは定期的に会っていると言う事。そして血の繋がる父親の状況が回復したから里子は解消するんだと・・・。
で、里親側はそれを突然言われて養母は納得が行かない。養父は状況を見極め最善を探るタイプ。
(此処にはちょっと複雑な家族間の背景がある。養母は『ママ』と呼ばれ、養父は『パパ』とは呼ばれない。何故なら実父と定期的に会いその存在があるからだ)

で、当然の様に大人同士の【子供の腕を綱の様に引っ張り合い大会】が始まるわけ。

ちょっと待って!!

実の親だからってそんな勝手な事ありなの?って実は思った。だからちょっとこの父親には感情が湧かなかったんだよね。自分一人が生活する分には安定して来ただろうが子供を一人で育てるのは至極大変な事、フランスの福祉制度がどうなってるのかはワカラナイがちょっくら不安が生じる。

だがそれを超える養母の悪行が目に余ったのだよ。「あぁ、ワタシって凄く常識人だったわ」と思うくらいにこの養母の行動は頂けなかった。子供の為では無く自分の欲望の為にルール違反を起こすのだ。
気持は解る、我が子同然のシモンを返したくない、自分の方が正しくて良い環境で育てられる、そしてこの4年半の家族との繋がりは血より濃い筈・・・と思うよ。当たり前。
でもだからと言ってルール違反を起したらそこで終わりなの!
アナタがどんなにシモンを愛してると主張しても、いやシモンへの愛情から起してしまったと言い張っても【ルール違反】はそれでしか無い。

残念過ぎた、この養母。
だから彼女が冷静さを欠いて精神的にヤラレタ時点で綱引(いや腕引き)の勝者は見えたんだよな。

むしろ個人的には複雑な関係性を抱えながらも全ての事情を冷静に捉える養父の感情や行動は理解出来た。

彼が居なければこの養母はどうなっていたか・・・それだけこの家庭は良い家庭だと言う事なんだけどね。


ただ、子供の幸せは外見からは見えにくいと言う事。

正直、あの父親がシングルファーザーの大変さで毒親に変身しなければ良いが・・・と小さくは思ったよ。
4歳半・・・多分自我が凄く出る時期だし分別が無い時期だし、楽しかった兄弟との時間や母親の温もりから引き離された思いも抱えてる、でも子供って大人の顔色も見てる、さぁ大変・・・。


ラストはとても解り易い結末になってたので映画としてはフランス映画特有の複雑さは無く素直に里親問題を考えられる作品になってると思う。

そして子供達の純真で無垢な言動と愛情表現にこの物語の残酷だが血も水も同じ濃さなのでは?と思わせる家族の定義みたいなものを感じた。

成長に子供同士の世界はとても大切なのだ。

大人の事ばっかり書いてしまったが(一応自称"オトナ"なんでね)とにかくその子供達が素晴らしかった!
正直、少なくともシモンと里親ファミリーの兄弟は定期的に会わせてあげて!!って思ったわ。

養母は"ルール守らない認定"されたから当分無理なんでね!
あんな事しなければもっと自分にとっても利のある条件が整えられたと思うけどね。
そしてシモンは余計な経験をしなくて済んだのでは?
とにかく残念だよ、養母!

2022/08/13

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