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『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』

原題「Dark Waters」

◆あらすじ◆
1998年、企業弁護士ロブ・ビロットのもとにウィルバー・テナントという男性がやって来て、ある調査を依頼する。テナントによると、彼の農場が巨大企業デュポン社の工場から出た廃棄物によって汚染され、牛が次々と死んでいるというのだった。最初は断ろうとしたビロットだったが、現地の惨状を目の当たりにして原因を突き止める必要性を痛感する。やがてデュポン社に請求した大量の資料と格闘する中で、"PFOA"という謎のワードが意味する深刻な事態に辿り着くビロットだったが…。



ウエストヴァージニア州デュポン社水質汚染訴訟。

環境破壊もだが権力の不徳は今や他人ごとでは無く、つい最近もそんな光景を目の当たりにしとても興味深い。

法曹界の裏側や成立ちにも焦点が当てられてるから大企業やそれに属する上級国民を相手にする弁護士事務所の内部事情の群像劇として楽しめる。

腐敗した体制や巨大企業の隠蔽に立ち向かう事の困難や幾度も襲いかかる挫折、仕組まれた嫌がらせは憤りや哀しみ以上に欺瞞に麻痺した人間のおぞましさが憐れ過ぎた。

日本では水俣病が似た様な案件なだけに遠い世界の話では無いない。

気の遠くなる様な長期に渡る裁判、それをわざと助長し原告側の気力を削ぐ様に仕向ける遣り口、尚且つ巨大企業の恩恵で生活する住民からの冷たい視線など、あまりの理不尽さに絶望感が漂う。

そしてやはりなかなか結論の出ない月日に剛を煮やす原告者。

マーク・ラファロ演じるロバートの四面楚歌ぶりが気の毒でならない。

ただ、エンタメとしてはヘインズ監督の過去作に比べ何処か淡白さを感じてしまった。

確かに主人公が苦しんでる様には見えるがその苦悩の深さがあまり感じられ無い。前述した四面楚歌ぶりに深刻さがイマイチ足りない。

案外、囲まれた壁には綻びや隙間が簡単に見つかる印象だ。

周囲の彼に対する是非表現にも半端さを感じてちょっと残念。


マーク・ラファロは『スポットライト 世紀のスクープ』と言う悪事を暴く系の名作があるだけにどうしても比べちまうよなぁ…

エピソードの配置は悪くないしサプライズの用意も周到にされてるだけにもう一つエッセンスが欲しかったなぁ。

2021/12/21


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