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深いところで陰性

ぼんやりしている 今朝変えた水槽の水の澄ん
だ窓際の 魚影が文字通り黒いシルエットに
なってゆっくり浮き沈みしている 気がもちあげ
られるような本を何冊かこの間読んだが そう
そう興奮できる本もなく 内容も何でこれで気が
上がるのか といった寒々しいものだったり ひ
との陰の部分が強調されたようなものだったり
しているけれど 私にはそれが心動かされる
つまり感動作で しかし 奇をてらう訳でもなく
そんな心持ちの人はそれほど奇異なものでは
無いと踏んでいる

と虚無を気取ったりしていて本物の虚無という
のはそんな恰好のいい ニヒル 苦み走った
ダンディズム そんなものとは無縁なのだと
気づかされた本を読んだ 本物の虚無というも
のには苦悩も苦みも孤独感もなく ただ単に
限りない無関心が眼前に広がるばかりの世界
で たとえ自分の町が戦場となって隣人が犠牲
になっても何の感慨も湧かず しかしながら
生存本能に従って逃げ隠れは反射的にするの
かも知れない あるいは何の関心も 自分の
生き死ににも関心がなく 弾丸の雨の中で泰然
と固まっているだけなのかもしれない 精神科医
春日武彦の新刊 自殺帳 晶文社 にそういう
人物のことが書いてあった

ところで いくつか心惹かれる言葉があって た
とえば自殺 死刑 それから依存症 摂食障害
そういった言葉が目につくと視線が止まって前後
を読み探ったりする こういう引っ掛かりのキーワ
ードというのはその人の深い部分に直結している
というこれまた著名な思想関係の論客の受け売り
で とすればキーワードの陰性さから私は深い
ところで陰性なのか と短絡したりするものの
その短絡性から言って深い虚無とか暗黒とは
無縁の浅はかさばかりがうっすら自覚されてくる
といって深い自覚ではないところがまた結局
平凡の範囲内のわずかな誤差でしかないという
結局の凡夫的堂々巡り

学徒出陣壮行会から80年経ったそうで第一回
の神宮球場における学徒出陣壮行会では東京
帝国大学以下首都圏の77校が参加して とさ
まざまな媒体で報じられているのだが その77
校というのがネットの何処を探しても見当たらな
い ヤフーの質問箱でwikiを読め などと書いて
あっても77校の一覧などどこにもありはしなくて
大学ばかりではなく旧制高等学校 専門学校
高等商業学校など おそらく今は大学になって
いるだろうそれらの学校の一覧すら提示されて
いないというのは何のネット阿保加減なのか
それとも 私が検索しきれていないだけなのか
それを知った所でどうという事もないがこうなる
と何らかの形で調べてネットにアップしたくなる
図書館で学徒動員の本を借りて見よう

熊が出ている 本州で人を襲っているのは羆
ではなくツキノワグマらしい 羆は津軽海峡を
渡って本州に来ない 本州の羆は絶滅したと
のことだ 日本の熊で検索したらその二種だけが
日本にいる熊とのことだった 羆についてはこ
れはもう吉村昭著 羆嵐 が恐ろしさを伝えて
余りある手に汗握る傑作で 是非一読をお勧め
したい作品だ という事は山梨でたまに聞いた
熊の出没の町内放送はツキノワグマと この
種はそれほど狂暴ではないと勝手に思いこんで
いたが 死者が何名も出るに至り 所詮動物
とは意を交わせないものと再認識を強くする

まして動きのない植物と意思疎通などと思われ
るところ 熊の餌となるドングリは何年かに一度
示し合わせたように凶作になるとあって 植物
と動物は何らかの方法で意思疎通を図っている
らしいと検索派生のニュースで読んだ となれば
地球上で人類は覇者のように好き放題の現在
だけれど動植物の結託により人の滅亡などと
いう短絡的かつ古典的な思考に陥りもする
そのような考えは忌まわしいものと同時に
退廃的な魅力を纏っていると感じられもする
とは少しかっこつけすぎと自嘲しつつとはいえ
ある種の植物の生命力の強さはありていに言
って邪悪なものを想起させる 軍勢 などと言う
言葉が連想される

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