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リンガラ音楽

リンガラ音楽

本当にインターネットはすごいもんだ。と思えるのはネットが影も形も知らない時代を生きていたからで、その点ではネットネイティブとは確実に人種が違う。それがどうこうはわからない。判定する立場にもない。ただ、リンガラ音楽がただできけるのが、また、リンガラという言葉自体調べられたのがその音楽がどういうもの知らずに聞いた30年前には思いも寄らないことであった。

リンガラ音楽とは中央アフリカあたりのポップスで、ルンバロックとも云われるリンガラ語圏のものだそうだ。私はその音楽を千葉のとある喫茶店で聞いた。二階はライブハウスだった。オレンジ色のビニール張りシートでジンジャーエールをすすりながら流れてきたのがそれだった。

やけにリバーブのかかったペナペナしたエレキのアルベジオがループされ、そこに後ノリのパーカッションがすっとこすっとこビートを刻む。男性の複数ボーカルがほぼユニゾンで歌を歌う。曲は二部構成で最初はボーカルメインのミドルテンポで、ちょっとした変調の後アップテンポでアルペジオループ。曲は変われどみんな同じようなもので、ラジカセで聞いたほうが似合うような、南の島で浜辺に寝そべりながら聞きたい明るい音楽だ。

その音楽に妙にひかれた私は普段なら絶対に聞いたりしないのにマスターにその音楽の詳細を聞いた。「ショックスターズ」というバンドで渋谷の「めるり堂」というレコード屋に売っているとのことだった。親切にもレコード貸そうか、といってくれたのだがさすがに悪いと思い断った。

それから、リンガラにたどり着くまで、ネットが普及するまで、20年近く待つことになるとはそのときは思わなかった。ディスクユニオンやレコファンの民族音楽の棚から、ジャケ買いでそれらしいものを何枚か買ったが、記憶の音楽とはどれも違った。

そんな中、パパウェンバという人のCDを手に入れ、聞いてみたら記憶の音楽と一致した。ほぼ同時に我が家にもネット環境が整い、調べてみてようやくリンガラについて判明したというわけだ。

今、ユーチューブにはショックスターズも複数上がっているし、リンガラの代表的バンドらしき、ザイコ・ランガ・ランガというバンドもある。ザイール、キンシャサ、コンゴ、ルンバロック、などリンガラ音楽のキーワードも知った。

バンドはベース、ドラム、パーカッション、ギター3人ぐらい、そしてボーカル4人というのが代表的な編成だ。ドラムは裏のヘッドを張らないシングルヘッド、ギターはストラトやアレンビック系のつまみがやたらついた奴、ベースはジャズベースといったところを使っている。そして、厚みのない音をバックに少しアフリカっぽいユニゾンの男性ボーカルがべたっと入る。マイナーの要素はこの音楽にはほとんどない。そして曲後半のループがなんといってもリンガラの醍醐味だろう。

延々と同じフレーズをギターが弾き、ドラムは16ビートっぽい跳ねたハイハットを刻む。そこにボーカルのかけ声が入り、それが延々と続く。だいたい1曲が8分ぐらいありうち5分がループだ。そもそもの録音もあまりいい音ではされていないが、リンガラはローファイで聴きたい。できればテープに録音して、何度も何度も再生を繰り返した延びたテープで聴きたい。ハンモックで漫画でも読みながら。そういう聴き方が正規の聴き方に思える、地球の裏側からくる明るい音楽、それがリンガラ音楽。


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