見出し画像

あんた昼間何してんの

雨の土曜は昨晩から実家に来ている姉と 母
私一家で昼食でも という事で滅多にない降雨
の外出 雨に花を撮るのがいい 水と植物の
組み合わせ おそらく好きな人も多いだろう
普段は皆が好きなものにわざと目をそらす天邪鬼
を気取って実のところ変な自意識のもつれによ
って半ばそうさせられていると内心厄介さを
抱えていることに気づいている もう人生も終盤
へと差し掛かりつつあるから と カメラを持って
ラベンダーの天然の花束 その下に日本共産党
のブルーの 少年の書かれたポスターが板で
掲げられて 雨に濡れているところを撮り 草叢
にオレンジのくしゃくしゃな花を見つけて ディス
プレイに何か注意文字がちかちかしているのに
気が付くとノーカード またやった すこし上がり
かけた雨のテンションがすっと減衰していくのを
感じ

姉は年齢不詳 相変わらず ライダースジャケ
ットにスキニージーンズ 黒いブーツといった
いでたちで 近辺での友人のライブのために実家
入りとのこと 小柄だが何となく大きく見える押し
出し 顔が大きいのかもしれないと今書いていて
思いつく 姉のSNSは見ていないという体にな
っているから 姉がいいと言っていたインディ
プログレバンドのキーボードが 大学の後輩だ
ったと知ったことを あくまで知らずに言っている
ようにして姉に話すと 何だかそれ 私がいいと
思ったバンドかもしれないと思い通りの反応を
返してきて いつも比較され見習えと言われた
姉を出し抜けたようで後ろ暗い愉しみを感じた
近所であった少女自殺について口を開くと母が
話を横どってしまい そうなると母は自分の事し
か話さなくなるので助手席で私は鼻じらむ

いつもの中華へ 娘息子が同学年だった家の
お母さんがパートしているところで 席に来て
わざわざ挨拶してくれた その家は兄はもう大学
を出て下町で働き 弟は手に職のために専門
学校に通っているという 弟はアルバイトでひと夏
百万円稼いだという 凄い今生の持ち主だと
思った 以前いたちょっと動きが緩慢で ほわん
としたなかなか飲食店のアルバイトはきつそうな
ともすればほかのアジア系の国を母国とする親
を持つかもしれないと言葉の端から見え隠れす
る年若い店員はもういなくなっていて かわりに
てきぱきして大柄の これもまた若年と思われる
女性のアルバイト店員が 注文を取りに来た
各々好き勝手を注文し 餃子は一皿別にとって
私だけ少し待たされて注文が忘れられたのかも
しれない などと不安を口にし始めた頃 本日の
ランチ定食が運ばれてきたのだったがその塩分 
濃度の濃いこと濃い事 大概に塩分愛好家の私
の許容塩分をはるかに超えていて 舌に痛み
に近い感覚が広がる それでも和やかな昼食
の場を崩すまいとすべて食べおおせた結果 夕
食まで引き続く味覚障害に苛まれることとなる

帰りの車内で 話が そういえばあんた昼間何
してんの と姉からの問いかけにどうこたえよう
かと口ごもっているとその話をまた母が引き取っ
て ほんとだわ一体何してるんだか と言ったの
を聞いた私は一息に感情を高ぶらせて それは
家族の歴の中で積もりに積もったもの それを
多分なにも感じ取っていない母への苛立ち 他
うずくま思いに簡単に口頭は暴発し 何やって
たっていいだろううるせえな とまるで復活した
というよりずっと継続してきた反抗期が老いの発露
の短気と相まって吐き出される暴言となり せっ
かく本当に極たまにしか来ない姉を含めた三代
のひとときを一瞬に台無しにしてしまう 下車して
そのまま引き留める母を振り切って帰宅し その
苦い気持ちのまま雨の午後を悶々と過ごした 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?