そりゃわたしは水商売のマリに想いを馳せる『天国までの百マイル』

数年前、同期のマッキーに最近どうよ、ときかれて私は「失恋した!!」とこたえた。そう。密かに思いを寄せていた人が結婚してしまったのだ。
これ以上好きになれる人はいないと思ったのに。
 
やさしいマッキーはさらっとこう言った。
「いちばん好きだと思った人とは、結ばれないんだって。」
 
その時、妙に納得した。
むしろ一途に恋ができたことは、幸せで嬉しいことだったのだと、
ほんとうに妙だけど、納得した。
 次は自分にとってもっと幸せな恋愛ができる気もした。
(実際、しばらく後に出会い、お付き合いをし、結婚をしたのが今の最愛の夫である)

『ヤッさん。あたしほんとにヤッさんのこと、好きだよ。たぶん、男の人をこんなに好きになることなんて、もう一生ないと思う。』

 
浅田次郎の『天国までの百マイル』は落ちぶれた主人公と、その母の心臓病をめぐる感動的な作品。読んだ人がどこに感激し、涙するかは、人それぞれかと思うが、
 
私はマリのこのセリフで胸がキュウウとなって、あの時のマッキーの言葉を思い出した。
 
「いちばん好きな人とは、結ばれない。」不思議な法則。
でも受け入れれば今度は、人を大いに愛することができたことを幸福に思うようになる。愛されることではなくて。人を愛せることが幸せなのだと。


水商売のマリは、自分から愛するヤッさんのもとから姿を消してしまった。
明るくて一番ヤッさんを想っていたマリが姿を消した。

「いちばん好きな人とは、結ばれない。」

マリはこの法則を知っていただろうか。はじめから心で感じ取っていたのだろうか。

きっとわかっている。
そして心の中で、一人の男性を一途に愛することができた幸せをかみしめている。
 
そんな風に考えないと読み終わったあとの切なさがなくならない。
そんな風に考えてもマリに思いを馳せると、
やるせなくてやるせなくて、悲しみのドキドキが止まらないのでした。
 
読書嫌いの読書スタート。よいスタートとなりました。





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