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はじめての声優学入門*11時限目「界隈でよく耳にする【生っぽい演技】とは具体的になんなのだ??の巻(前編)」

●今回のお題

僕がレッスンしている生徒さんにはプロの声優で所属事務所のレッスンも受けていたり、プロ声優を目指して声優専門学校や養成所に通っている人もいるのですが、その方々から最近本っ当に良く聞くのが
「講師の方から『最近はアニメでも生っぽい演技が求められるからできるように』と言われます」「生っぽいアニメが主流」と言う「生っぽい」と言うワード。
さて今回の声優学は僕の中でパワーワードとなりつつある【生っぽい】を前編、後編2回にかけて考察していきたいと思います。
※できる限りの科学的根拠、検証をしていきますが研究論文や対象素材が充分ではない為、私見となりますが、生っぽいを議論する要素になれば幸いです。


●生っぽい演技の認識

さてこの【生っぽい】ですが、昔から言われていた言い方ではあると思います。
僕の認識ではジブリ作品、ディズニーや新海誠監督作品などのアニメ映画において主にアニメで演技されている声優さんではなくテレビドラマや映画など実写で演技してる役者さんが声を担当している際に使われる言葉の印象です。
【生っぽい演技】とはアニメっぽさのない、ドラマの役者さんがするような声、芝居かと思っています。
もう少しボイストレーナーの立場から専門的に言うと、
・海外でTWANGと総称される咽頭収縮や喉頭蓋狭窄やLMN(喉ちんこのとこの襞の中心への閉鎖)を用いたデフォルメされたキャラクター声ではない事。
・抑揚の幅がアニメよりオーバーではない、狭い。

何故これらが起きるかは、画面に映る身体と声が同じ人かアニメーションかによる情報量の違いに由来します(次回解説しますね)

逆に上記2つを用いるとアニメっぽくなりますので(何故かも後に解説)
「最近はアニメでも(ジブリとか新海監督のような映画作品ではなくTVアニメでも)【生っぽい演技】が求められる」となるんだと思います。
それは何故なんでしょうね。時代か、文化か、好みか、アニメvsドラマか。

【生っぽい演技】の意味、わかりますよ、わかるんですよ、どんなものか。とは言え、それを生徒さんができるようにする時に超絶リアルに具体的に科学的にどんな音声でどんなお芝居か説明できるか?って言われると、先程上げた2点でも、「じゃあTWANGを使わないとどんな声?」
「抑揚の幅がオーバーではないってどの程度?」など業界の基準といいますか音声の基準が定まってないので(作品を作る人の認識によって違うし)なんとなくフワッとしてる気がするのですよ。
生徒さんに専門学校ではどう教わるの?って聞くとやはり「アニメっぽくない」「ドラマっぽく」「ナチュラルに」「声を作りすぎないで」など言われると言います。
理解はできます、でもその理解には個人差があるかと思います。
なのでなんだかモヤモヤとするんです、なので気になるんです笑。
そして本当に最近よく【生っぽい】【生っぽく】と言うワードを耳にするのです。声優をされている方、目指す方、アニメを制作されている方もこの言葉を耳にされる機会が増えていませんか?


問題提起


「生っぽく演技して」と言われてわかる人、できてしまう人は何の問題もありません。素晴らしいです。
しかしながら、そう言われてできない人、わからない人、自信を持ってわかると言えない人結構います。。
そんな人は、だからそれを習いたいんです。
しかし習う際に「実演を見て学ぶ」事のみや「ドラマっぽく」とか「あまり作らないで」とか、最終的には「センスを磨いて」「作品をみて学んで」と言われてしまうと習得ができません。僕もそれでは片付けられない性分です。さあどう教えましょう。

とある生徒さんは「生っぽい演技=素の話し方」と認識して、専門学校では講師の方にそれはそれで違うと言われたとの事。確かに僕が聞いてもそれは違うでした。ドラマってリアルな日常の素とも違いますからね(音声的な意味でも)。

そして若者世代の中には「生っぽい演技」が主流となったアニメを「アニメの演技」としてすでに認識している人もいます。大体講師は上の世代なので「アニメっぽくなくもっとドラマっぽく」との言葉とのズレがあるように思えました。
さらに【生っぽいアニメ】と言われるアニメを見比べても全ての作品が何かの基準で統一されてる訳もありませんし、作る人、演じる人によっても違いがあると思いました。ただ何かしらの「そう認識させる音声」があるはずです(それを紐解こう)
そして「ドラマ」と言ってもこれまた20年30年前のトレンディードラマ(101回目のプロポーズとか、東京ラブストーリーとかビーチボーイズとか)と言われてる頃の演技と2023年現在のドラマの演技の仕方、発声、発音は違うのです(実はここに答えありですが)。どの時代のドラマを指してドラマっぽくなんでしょうか?何を持ってドラマ演技なのでしょうか?

【生っぽい】【ドラマっぽい】演技が求められるなら何故アニメの声は映像を主に出てる役者さんにならないのでしょうか。そうきっとポイントは【っぽい】【っぽく】。そう塩梅なのですよね。声優さんならではの塩梅。【っぽい】便利な言葉ではあるが、だからこそふんわりもする。

TVアニメで【生っぽいアニメ】と聞くのはリコリス・リコイルとか、ダイナゼノンとかチェンソーマンとか、スーパーカブとか明日ちゃんのセーラー服とか。うむわかる。逆にアニメっぽいのはドラゴンボール超とかドラえもんとかイナズマイレブンとか?プリキュアも?では歴代プリキュアをアニメっぽいレベルは一緒?それともシリーズによって違いあったり?推しの子、鬼滅の刃、呪術廻戦、進撃の巨人は?ワンピースは?ジョジョは?感情の動きとかドラマとかはかなりリアルだと思うのだが。そこではない??人が【アニメっぽい】【生っぽい】そう判断を分ける、認識するきっかけとなっているであろう音声的要素はどこだ!


"生っぽい"&"アニメ”でググってみたw

さて困った時はググれ(古い)と言う訳で、「生っぽい&アニメ」と言うワードでグーグル大先生に聞いてみました。結構出てきましたw ざっとですが下記に並べます。

花垣武道役・新祐樹×稀咲鉄太役・森久保祥太郎 対談
当時、タケミチ役だけが決まってない状況で、「熱いお芝居や、生っぽいお芝居ができる人を探しているらしい」というお話を聞き


●津田健次郎:アニメ「無限の住人」で感じた熱量 生っぽく骨太に
「生っぽさ」とはどんな表現なんだろうか?

 「型にはめず、きれいな音ではなくても、根底にあるエネルギー、感情、呼吸などを表現する感じでしょうか。『無限の住人』の表現は説明的でもないんですよね。出演が決まった時、そこも面白いと感じました」

●TVアニメ「チェンソーマン」は優しい作品!?デンジ役・戸谷菊之介に聞くアフレコ裏話

――「チェンソーマン」では生っぽいお芝居が声優陣に求められているそうですが?
オーディションのときから「ドラマみたいなお芝居をしてほしい。アニメよりもドラマ寄りのお芝居で」と(スタッフから)言われたんです。デフォルメ感や抑揚も抜いてアニメっぽくなく演じてほしいという方向性


安済知佳 Anzai Chika | エイベックス・ピクチャーズ株式会社

芝居力には定評があり、特に生っぽい芝居を得意とする。

●「リコリコへようこそー、イヒヒ!」台本になかったセリフが『リコリス・リコイル』を作るまで
主人公たちを演じた2人に、演技然としていない“生っぽい”会話劇の魅力はどこから生まれたのかを聞いた。
https://bunshun.jp/articles/-/60268


撮影監督インタビュー|TVアニメ「安達としまむら」公式サイト
ふたりが生っぽいというか、実際の高校生っぽい感じがあるんですよね。


●大物アニメプロデューサーが語る〝売れる声優〟に共通する表現力
女子高生役を自然にこなす生っぽい声は劇場映画でも映える!
「本当にスッと入ってくる感じの生っぽい声は、どちらかというと実写の役者系。


●TVアニメ「宇宙よりも遠い場所」制作秘話 いしづかあつこ監督インタビュー
アニメだからと開き直らずに、もっとちゃんとした生っぽい人間ドラマをやりたいという話を脚本の花田十輝さんにしました。


いやあ、結構出てきましたね。
やはり界隈で【生っぽく】と言われるんだなあと実感しました。そして【生っぽく】とはやはり「アニメっぽくなくドラマっぽい声と演技」と言った感じなんだなと読んでいて思いました。

さてさて【生っぽいアニメ演技】に迫りたい導入部はこんなところで、次回後編はTheアニメとTheドラマとで認識される「音声」の違い、時代と共に変化している発音や発声の違いを発声生理学と音響の知見に基づき考察し【生っぽい】の正体に触れていきたいと思います。【生っぽい】の姿が今よりもっと捉えられるかと思います。

では次回の講義までしばしご休憩くだされ。

最後に「面白い」「思うことあった」などありましたら記事をシェア頂けると声優技術の議論もより活性化されるかと思いますので、是非とも!


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