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飲食店からの悲鳴。締め付け過ぎだよ。

飲食店は悲惨な状況だ。

 東日本大震災時、仙台で複数の飲食店を経営しており、壊滅的な打撃をくらったが、借入れをし、スタッフ一丸となって頑張り、危機を乗り越えることができた。当時のような大変な状況はもう二度と経験することがないだろうと思っていたが、正直、コロナ禍はそれ以上だ。

震災は大変だったが、一時的だ。2019年末から始まったコロナ騒動は、ズルズルと長引き、1年半を過ぎており、未だ先が見えない。

惨状は街を歩けば容易にわかる。都内を歩けば、沢山のテナント募集の看板が目につく。一等地でも空いたままの物件。全階でテナント募集しているビル。居抜きの物件情報も溢れている。

殆どの飲食店は小・零細事業者であり、業界団体や政治団体は殆どない。政治力は皆無で、飲食店の生の声は、政治家に届きにくい。飲料メーカーや大手外食企業もだんまりだ。

個々の事業者が声をあげていかなければならない。多少なりとも飲食業に関わるものとして、微力ながら書いておこう。

飲食店は悪者か?明らかに締め付け過ぎだ。

 西村経済再生担当相は、7月8日、飲食店に時短営業やアルコール提供の自粛を要請するだけではなく、酒類提供を続ける飲食店との取引を行わないように酒販店に要請することを表明した。(13日に撤回) 

また、休業要請や命令などに応じない飲食店に関し、融資元の金融機関と情報共有して協力を求め、要請に応じるよう働きかける方針を明らかにし、「酒類提供停止を徹底する」と説明した。(9日に撤回)   

 さらに、インターネットのグルメサイトを通じて、感染防止対策の取組状況の情報を収集し、店に改善を求める制度の導入を検討している。これは、来店客の主観による「密告」制度のようで、社会に分断をもたらしかねない悪手だ。

国だけではない。東京都は、酒販店向けの支援金の申請時に「酒類の提供停止を伴う休業要請等に応じてないことを把握した場合には当該飲食店との取引を行いません。」旨の誓約書を提出させている。(15日撤回)


本当に飲食店やアルコール提供が、コロナ感染拡大の要因になっているのだろうか?

飲食店での感染率は? 

クラスター発生率は? 

マスクやパーテーションは効果があるのか?

重傷者数・死亡者数が減少しているにも関わらず、経済活動を止めるべきなのだろうか?


倒産数は低水準。しかし、閉店は止まらない。

 東京商工リサーチによる2021年上半期(1-6月)「飲食業の倒産動向」調査によると、国や自治体、金融機関などによる資金繰り支援により、飲食企業の倒産数(負債1,000万円以上)は330件と低水準となっている。

しかし、飲食業の多くは小・零細事業者で、数字に含まれていない負債1,000万円未満での倒産も多い。また、企業としては倒産していないが、店舗は撤退しているというケースも少なくない。


 「居酒屋・バーをチェーン展開する上場の主要14社」のコロナ感染拡大前の2019年12月末と2021年3月末を比べると、1000店以上減少しており、四半期ごとに100~200店のペースで閉店が続いている状況だ。

2019年12月末:7200店(新型コロナ感染拡大前)
2021年3月末:6152店
1048店減(14.5%減)
(出所:東京商工リサーチ資料)


「またか…」繰り返される要請にうんざり。

 飲食店への休業、時短営業、アルコール提供停止などの要請は、2週間〜1ヶ月間の短期間を何度も繰り返すのではなく、2~3ヶ月以上の長期間で出すべきである。そして、その間の補償をしっかりすべきだ。

これまで短期間の要請が幾度も繰り返されてきたが、これでは事業者は予定が立てられない。しかも、その決定がほんの数日前となればなおさらだ。

短期の要請の場合、それが終わったら通常通り、もしくは、それに近い形で営業できるものとして準備している。仕入れ、予約の受付、スタッフのシフトなど様々。

直前での再要請なら、仕入れ在庫の積み上がり、廃棄ロス、予約キャンセル、過剰人件費など影響は多大だ。その都度、それらを調整する労力と時間もばかにならない。

小・零細飲食店ならそれらを全て1人でやっているというオーナーもいるだろう。協力金や雇用調整助成金などの申請手続きも同時並行で行っているだろうから、本当に頭が下がる。


後手後手の支援に、飲食店は疲弊。

 協力金の支給は遅れ、体力のない小・零細飲食店では耐えきれないところも出てくるだろう。

 対象期間の苦しかった状況を様々な書類で証明し、それを確認し、給付するといった時間を要する精算払い方式ではなく、先に給付(あるいは減税、社会保険料減免など)し、余剰を決算時に吸い上げる概算払い方式にできないものだろうか?これなら迅速に事業者に届き、支援が十分な事業者は、税金という形で戻すことになる。

 協力金や雇用調整助成金は大変な助けとなっているが、幾度となく申請を繰り返すことは、事業者も行政側も疲弊させる要因になっているだろう。

 コロナ支援として様々な補助金や助成金があるが、それらは設備などを購入した後にその何割かが給付される仕組みが殆どで、先にその費用を支出できるだけの余裕のある事業者しか利用できない。本当に苦しい事業者にそんな余裕はない。

 金融機関からの借入は平時より容易になったが、借金に変わりない。必ず返さなければならないし、利息も取られる。

政府系金融機関からの無利息無担保融資は一番必要としていた時期には申込みが殺到し、待ってる間に危機的状況に陥る可能性があったために利用せず、普通の利息付きの融資を申し込んだ事業者も多かった。ここぞとばかりに、他社よりも優先した迅速な融資をセールトークに普通の融資の契約を獲得した金融機関も多かっただろう。

 給付金、協力金、補助金、助成金いずれにおいても、申請の手続きができない、苦手という事業者もいる。そういった人向けに申請代行のコンサルティング会社がいくつもあるが、勿論、手数料がかかる。数万円~給付額の20%程といった感じだ。満額もらっても苦しい状況にもかかわらず、手数料を捻出しなければならない。

 協力金などをもらってウハウハという小規模で家賃も安く、スタッフも抱えていないような飲食店も一部にはあるだろう。しかし、これだけ閉店が増えている現状から考えれば、協力金では全然足りていない飲食店が多いの実情であろう。

公平で迅速な支援を期待。

 支援策はいくつか考えられる。例えば、社会保険料の減免であれば、行政側で引き落としを停止するか、減額するだけなので、迅速に実施可能だろう。社会保険料を払っていない事業者との不公平感も是正される。
 消費税の減税であれば、飲食店、関連事業者(酒販店など)、消費者など、まんべんなく大きな支援となり、経済刺激策としても有効だ。

国や自治体に下記を求めたい。


・感染者数ではなく重症者数、死亡者数に重きをおいた対策。

・各種要請は、1ヶ月以上前告知。(短期間でないものを)

・社会保険料・税金等の減免など、行政で迅速に実施可能な支援。(事業者が先に支出する形式の補助金・助成金は改善してほしい。)

・飲食店がコロナ感染拡大の要因になっているというデータの公表。(もしあるなら)

・飲食業だけではなく、その関連業種への支援強化。

・随時の科学的根拠に基づいた情報のアップデート。

・今回、借入を受けたにも関わらず継続できずに廃業した人への支援。
 借入をせずに廃業していれば、借金が少なく済んだはずが、借入ができたがために大きな借金を抱えて廃業に至った事業者もいるだろう。今回ほど長期に渡っているとそういった悲惨な状況に置かれた人もいるだろう。彼らの再出発を支援してほしい。

 国や自治体はどれだけやっても褒められることは殆どない。一方、少しでも効率が悪かったり、問題点があればクレームや批判の嵐だ。大変な仕事だ。国や自治体の職員たちも疲弊していることだろう。各種のコロナ支援策を利用してきたものとして、申請手続きなどが当初より改善されてきていることは実感している。素直に感謝したい。

 はじめから完璧なものなど作れないし、ミスもあれば間違った判断をすることもあるだろう。必ず起こりうることで、そこは問題ではない。問題は、これまでとの整合性をとることに重きを置いて突っ走る「無謬性」だ。

ミスや間違った判断は正せば良いし、新型コロナに関する新たな科学的な知見があれば、アップデートすれば良い。我々、日本人が得意とする真の「改善」あるのみだ。

最後に

 本当に大変な中、飲食店を継続してきた猛者たちよ、国や自治体の発表に一喜一憂せずに、引き続き淡々とやっていこう。今回のコロナ騒動で、志半ばで廃業せざるをえなかった人たちの分まで頑張っていこう!そして、声をあげよう!

 コロナ支援に携わっているすべての方々に感謝いたします。

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