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黄剛Weibo:今後5年はデジタル経済の時代へ突入:物流サプライチェーンの最新動向(三大産業で今後5年間の傾向分析)③

今回は中国の家電業界で生まれた新しいサプライチェーンモデルについて、具体的な事例をもって紹介いたします。

デジタルエコノミーにおけるサプライチェーンの変化:大手家電メーカーの例

これからの5G時代に最も変革をもたらす領域はと問われれば、貴方はどこだと思いますか? それは家庭生活です。 玄関を入った瞬間から、家電のひとつひとつが人工知能で操作され、これからの家庭生活はスマート家電が支えることになります。 テレビ、エアコン、照明、床掃除ロボットなど、生活習慣に合わせて完全に自動化することが可能なのです。

次の3~5年内でスマート家電によってすべての世帯がアップグレードされ、家電業界の物流のサプライチェーンが「アップグレードのピーク」を迎えることになりそうです。 家電物流サービスの主要なプラットフォームの現状を理解するために、物流ニュースの「物流指闻」は、8月18日のバーゲンセールである実験を行いました。それぞれ京東、蘇寧、国美真快乐の3大家電プラットフォームで同じ型番のスマートテレビを購入し、受注生産のプロセスを通じて、サプライチェーンと物流の運営モデル、そこから運営状況と将来のトレンドを見る、といった実験です。

実験の条件:8月18日、購入する家電は国内の家電メーカー・ハイセンス。店舗の属性:ハイセンス京東自営旗艦店、ハイセンス蘇寧旗艦店、国美オンラインの真快乐プラットフォーム(なお、国美真快乐は自動的に近くの実体店舗とマッチングさせています)。

1.発注:3つの家電ECサイトでの発注方法や価格は基本的に一致。

2. 物流と配送:京東は京東物流、蘇寧は委託先のSF流通エクスプレス(なぜ自社の蘇寧物流ではないのでしょうか) 国美は国美安迅物流による配送で、京東の物流と類似。大きく分けて京東と国美、蘇寧の間に違いが見られました。

3. 配送および設置サービス:京東の場合は設置料金が155元で配送料別で、京東サービスチームが対応。蘇寧は設置料が360元で配送料別、配送を担当したのはSF宅配便で、ハイセンスアフターサービスの担当者が家電の設置を行いました。国美は200元で配送・設置料込みでした。安迅物流の配送担当者が設置を行いました。

ユーザー体験の分析:今後のデジタルリテール時代におけるオンラインとオフラインでの流れから、物流と家電製品の据付工事、実体店舗の在庫調整まで様々なサプライチェーン関連業務の詳細を見ることができ、非常に興味深い消費者体験となりました。
 
1. 取引の観点から:オンライン取引、都市の倉庫から配送するのは、従来の電子商取引モデルですが、どのように人、物、場所の構成を変えるのかという点は各社の研究で模索されている領域です。オンライン注文のこのランダム評価から、地元の実体店舗への配送は位置情報によって自動的に決まり、関連の取引やサービスの実行は実体店舗が現地で実施したことから、ユーザー体験は良かったものと評価されました。
 
2. 物流と配送の観点から:大型家電製品として、都市部の倉庫から顧客の自宅まで直接輸送するという運営上の流れは変わりません。しかし、今回の実験で蘇寧プラットフォームにおいてユーザーが体験したことは、商品が何度も転送されたことから輸送時間が伸びてしまい、貨物が傷んでしまうなど損壊のリスクが高まったことでした。いずれにせよ、京東、蘇寧、国美真快乐の3社は、いくらネット経済圏が発達していても、実体輸送の物流網が独自の重要性を持つ点を教えてくれました。
 
3. 設置工事サービスの観点から:配達業者が設置工事も一体化して行うサービスは、満足度の高い消費者体験を提供することができますユーザー自ら設置も行うとなると、まず荷物として受け入れ検品して、その後改めて設置工事の予約をして、工事が終わったら再度チェックしなければならないことを想像すると、かなり時間の無駄ですし、万一商品に問題があると、返品のための輸送手続きを待つ必要が出てしまいます。特に働いている人にとっては自宅の住所でものを受け取る場合、何度も往復するやり取りで手間がかかってしまいます。
 
4. これからはスマート家電製品の集大成の時代を迎えることとなります。物理的に設置工事で済むだけではなく、スマート家電システムの集約や設定も必要になるかもしれません。そうなると、配達と家電製品の設置工事に限らず、スマート家電の技術やシステム操作などもよく理解する必要があります。
 
中国製品はデジタル時代に突入しています。スマート家電産業の将来は、単一製品ではなく、複数の家電をつなぐスマートインターネットに依存し、ユーザーのニーズに合わせた個別設定や構成が必要となります。同時に、家電販売のビジネスモデルにも巨大な変化が起きることになるでしょう:家電のハードウェアの将来は徐々に無料に近づくものの、サービス面で継続的な消費をもたらすという、新しい形のビジネスモデルに生まれ変わります。例えば、テレビは無料でもらえるが、3年間会員としてサブスクリプションする必要があると言ったものです。美団とハイセンスが共同でスマート冷蔵庫を作れば、冷蔵庫は無料でもらえるが、美団新鮮食品からのみ3年間食材を購入する契約する形となるのです。これにより、美団新鮮食品は3年間確実に消費してくれる顧客を獲得することになります。 このビジネスモデルは、過去にイギリスの生鮮食品eコマース「Ocado」が、顧客の冷蔵庫のニーズに合わせて「The Future's free refrigerator」(未来の無料冷蔵庫)を発売したケースがあり、決して目新しいものではなく、驚くにはあたりません。

いずれにしても、大型家電のサプライチェーンは大きな変革期を迎えているのです。 注文集約モデル、個人の好みに併せたオーダーメイド家電、「ファン経済」向けの製品を作るためのクロスプラットフォームの関連付け、新しいオンラインとオフラインの小売の統合、そして物流間の統合に至るまで、その変容は様々な分野に亘ります。 従来の単一事業の配送物流会社にとっては、この変容にうまく順応できなければ、今後ますます経営が厳しくなる可能性があります。

次回

次回は、農産物のサプライチェーン変容について紹介していきます。

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