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McKinsey's Video: コンテナ輸送料金がやっと下落傾向に。果たしてコロナ前の水準に戻るのだろうか?

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コロナにより歴史上類を見ない勢いで上がったコンテナ輸送料金が、ようやく下落している。先々月、先月(*)には50%も下落していた。その原因は?今後コロナ以前の水準に戻るのだろうか?そして、荷主と輸送会社は今後どう対処していくのだろうか?Mckinseyの中国・深圳ベースのパートナー・Saxon氏による解説。
(*)本ビデオは2022年10月22日に収録されたもの


1. コンテナ輸送料下落の原因

振り返ってみようーコンテナ輸送料の上昇の原因は需要と供給のミスマッチによるもので、世界的な需要のブームではなく、北米の需要が急増したことがきっかけだった。コロナによるリモートワークや巣篭もり需要により、テレワーク用品等の購入が急激に増加し、港湾が大混雑。一時は100隻以上のコンテナ船がロサンゼルス・ロングビーチ港で引き揚げを待つ状況が続いていた。そして、適切な供給の欠如は価格の上昇を招いた。

コンテナ船は、実はミクロ経済の基本をいくつか示す産業であると言える。2022年を通じて、ミクロ経済の基本セオリー通り需要が供給を上回った時に価格は上昇し、荷主の支払える限界の価格まで上昇する。それが価格高騰に繋がった。
一般的なコンテナ内の荷物の価値は数十万ドルともなり、荷主は10万ドルを払って運ぶことをもちろん好まないが、他に選択肢がなかったらそうせざるを得ない。
しかし同様に、なぜ今価格が下がったのかということも、ミクロ経済の原則によって説明可能である。今は需要が減り有効供給量が増えているからだ。
供給が需要に十分対応できる時、価格はスポットサプライヤーが調達できるコストまで下がる。この2ヶ月間、需要が減少し供給が回復してきた事が見てとれるだろう。ロックダウンが解除され海外渡航制限も緩和される中、消費者の需要は商品から旅行や飲食等のサービスへと変わり、商品ベースの支出はコロナ以前の水準と変わらなくなりつつある。また、インフレも要因の一つと言えるだろう。ドルベースの消費者支出は維持されているかもしれないが、実際にドルで購入できる商品の量は減少している。

そのためコンテナ輸送量は今年に入りほぼ毎月2021年の水準を下回り、港湾は以前からあったボトルネック解消の機会を得た。
パンデミック中のコンテナ船の動静を示したグラフがあり、ある特定の日に実際に動いたコンテナ船の数を示しているものだが、これによると2020年9月頃にコンテナ船の移動量が最大になったことがわかった。その後現在に至るまで減少傾向だが、これは当初混雑が原因によるものだ。港が混雑して船が止まり供給ができない状況が続いていた。興味深いことにここ数週間は有効供給量が再び増加していない。混雑が解消されつつあるのでこの状況は矛盾しているように見えるかもしれない。しかし、今、船が動いていない理由は船会社が出航を見合わせるか、または一部サービスを中止していることによるもので、いずれも需要の枯渇が要因なのだ。


2. コンテナ輸送料の今後の予測:コロナ以前の水準へと戻るのか

まず、今後数年間は比較的安定した需要が続くと予想しており、大きな需要ブームはないと見ている。設備の面では、港湾の混雑が解消され大量の供給がある限りは、現在世界で新造船が25%注文中であり、十分な供給があると見ていいだろう。輸送会社のコストが運賃を決定する重要な要素となっている。
したがい、価格はコロナ以前の2019年の水準まで下がることはないと予測される。なぜそうならないのか?それは、運送会社のコストの元となる費用が2019年よりも高くなっているからだ。

燃料費は 40~60%高くなっており、LNG を使っている場合はさらに高くついている。船員不足で船員コストが上がり、チャーター料が上がったので船自体のコストが増加。運河、港湾の使用料も上がっているので、輸送船の単価は2019年に比べて30%ほど高くなると考えられる。したがい、需要が安定的に推移し供給が十分であれば、運賃は2019年当時より50%程度高くなると推測される。

もちろん、別のシナリオもあり得る。米国西海岸では労働契約がまだ結ばれていないため、混雑がまた起こる可能性がある。また、ヨーロッパではさらな労働組合によるスト、中国では コロナによるロックダウンが港湾に影響を与えるリスクもある。このようなリスクはまだあるものの、その可能性は比較的低いと考えられるだろう。


3. 荷主と輸送会社はどうなっていくか

3つ目は、運賃の見通しが2019年時点の50%増しになる可能性があることだ。多くの荷主と輸送会社は、実際にはそれよりも高い運賃で契約を締結している。歴史的に見れば、コンテナ輸送は問題ではなかった。5年前を振り返ってみると、強い強制力のある契約はなく、あるのは運賃協定だった。荷主はある程度の量を担保するが、輸送会社が実際にその最低量を強制することはほとんどなかった。また、輸送会社は価格と容量を約束するものの、コロナのパンデミックの中で見たように、それが必ずしも守られるわけではなかった。

しかし、運賃の高騰により、荷主と輸送会社の両方がより市況に見合い安定した契約を求めるようになっている。そのため2021年までの契約は、過去の運賃契約よりも強力でより強制力のあるものとなっているため、多くの荷主は、現在のスポット運賃よりも高い運賃で数量を確約していて、それゆえに荷主は輸送会社に対して不満を抱いている。
そのため、輸送会社と荷主の再契約が進んでいる。
いくつかの契約は再交渉され、お互いにとってWin-Winの関係を模索している。輸送会社は長期的なコミットメントや量を求めており、荷主は短期的な運賃の引き下げを求めている。
また、多くの企業が契約内容に市況価格を反映させることを検討しているようだ。


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