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黄剛Weibo:今後5年はデジタル経済の時代へ突入:物流サプライチェーンの最新動向(三大産業で今後5年間の傾向分析)②

今回は、中国のスポーツウェアブランドによって実現された「インターネットトラフィック主導」の物流サプライチェーンモデルを紹介していきます。

3.「注文駆動型」「先行販売型」が起こすサプライチェーンの変革

鸿星尔克(*)の人気が急激に上昇していた数日間、1日あたりのEC取引額は日本円にして19億円を超えました。鸿星尔克の商品を届けた宅配業者によると、「双十一(毎年11月11日に起こる中国におけるネットショッピングの大バーゲン)の到来を事前に感じた」と語っています。。 このような莫大な売り上げによって、在庫の早期消化が可能となりました。 そして気がつけば、彼らのライブストリーミングやECプラットフォームは、すべて「先行販売型」に順応する形になっているのです。 この点からも、新しいECの潮流が従来のサプライチェーンのあり方に変化を促したことがわかります。先行販売モデル、人気商品爆売りモデルの登場が、「注文駆動型」EC受注から生産に移るという新しいサプライチェーンモデルを実現したのです。 なぜ、鸿星尔克はあえてこのような戦法をとったのでしょうか?鸿星尔克は 生産能力の90%を中国国内の5カ所の自社生産拠点が占めているため、スポーツシューズやウェアのすべてを自社で開発・生産しています。開発から材料調達、生産までを自社で完全にコントロールすることによって、このような新しいサプライチェーンモデルの推進に成功したのです。


4.アパレル物流が変わっていく:インターネットトラフィック主導モデル

鸿星尔克の物流構造は、将来のデジタル経済における新しい物流のベンチマークになる可能性を秘めています。 鸿星尔克は中国国内に4つの中央倉庫、12の地域倉庫、7,000の実体店舗を擁し、これらを完全に連携したサプライチェーン運営システムを構築して、新しいサプライチェーンモデルを作り上げました。 これにより、彼らの倉庫の機能は、もはや在庫を抱えるものとしてではなく、迅速な集配機能として活用されていることが見て取れます。 爆発的な売れ行きが見込まれる製品は先行販売され、先行販売された製品は受注してから生産されます。受注は全国の物流網に入り、迅速な受注と配送を実現します。

鸿星尔克のサプライチェーンで起きた変化は、在庫ベースのアパレル物流の既存モデルが急速に時代遅れのモデルとなりつつあることを物語っています。 新しい「インターネットトラフィック主導」のサプライチェーンモデルは、デジタルチャネル、デジタル製造、デジタル物流、デジタルユーザー(ファン)マネジメントを実現するのです。 今後鸿星尔克のような会社と物流提携をするには、以下2つの条件を満たす必要があると考えられます:

1)実店舗または地域の倉庫から個人顧客へ、主に速達にて直接配送を行うこと
2)幹線道路沿いの店舗と都市間の配送を担当すること。配送規模は主に貨車1両貸し切り扱い貨物運送と小運送で、顧客へ迅速に配達を行わなければいけないためスピード感が求められる。

その他倉庫物流業務は、鸿星尔克では自社で完全統括されているため基本的に外注される余地もありません。

(*) 中国のスポーツウェアブランド。鸿星尔克の爆売り事件については前回記事(https://note.com/zenport/n/n1dadb22ccac7 )を参照。

次回

次回は、家電業界の最新動向について紹介していきます。

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