大学でネイティブアメリカン(インディアン)の事を学んで気がついた事。人類学。
私はカナダの大学でanthropology(人類学)を専攻していました。30人位のクラスルームの大半がネイティブアメリカン、後は主に白人でアジア人は私1人だけでした。
90年台後半の話です。授業を受けていたネイティブ・アメリカンの方々は居住区から出てきた親の子供世代の人々でまだ親戚が居住区にいたりしました。
教授は白人でネイティブ・アメリカンの定義から歴史まで詳しく学ぶ事ができました。
あまり詳しくない方もいると思うので補足すると、アメリカやカナダにはインディアン居住区と呼ばれる保護区が存在します。保護区の中にいるネイティブアメリカンは何もしなくても衣食住に困らず生活ができるとの事でした。
ただそこから出たら他の人間と同じく労働して納税して自活していかなければなりません。ネイティブ・アメリカンの方々は都市部ではまだまだ差別もされますので社会に溶け込むのは非常に難しいというのが実情でした。
とはいえ居住区内にいても酒を飲んでテレビを観る生活。中には文化的なツアーを行ったり宿泊施設を作ったりといったビジネスを行っている人もいましたが、それはごく少数。
将来的には彼らの文化や血族まで絶やされてしまうのではないか?と危惧する程の厳しい生活でした。
元々北アメリカ大陸で暮らしていた彼らはおおよそ500の部族、1000近くの言語が話されていたのではないか?と言われています。
ざっくりですが、西側の海岸部で漁をしていた部族、山を越えて平原で狩をしながら遊牧する部族。東側の海岸部の部族(東側はヨーロッパ人が根絶やしにした部族が多く情報が無い)から構成されます。500の部族にそれぞれ違った文化があったようですがはっきりした事は分かりません。
何故はっきりしないかといえば彼らは文字を持たなかったと言われているからです。しかもヨーロッパ人がアメリカに入植する際に害虫の様に扱われ、文化を学ぶどころか出会い頭に撃ち殺す様な蛮行が平然と行われていました。彼らの文化や伝統などを知る前に殺してしまい彼らの事でわかっているのはごく僅かな事だけなのです。
今では生き残った老人から話を聴いて言語や言い伝えから彼らの文化の一部を知る試みをしている学者がいますが圧倒的に数が少なく、全てを知る事はほぼ不可能になってしまいました。
ヨーロッパ人の入植に抵抗を続けていた部族もいましたが圧倒的な武力の差で鎮圧されました。ネイティブ・アメリカンには鉄砲を作る技術が無かったのです。その点では組織的に鉄砲を作れた日本は恵まれていたなと思います。
アメリカ政府によって鎮圧された彼らは同化政策という名の民族浄化をやられました。西海岸の子供はフロリダあたりの寄宿舎に連れて行かれ英語とヨーロッパ人の生活様式を強要されました。代わりにフロリダの子供がシアトルに連れてこられて言語を遮断されました。なのでおばあさんの話がわかる子供がいなくなり文化と伝統を無くす事に成功したのです。他にも色々な蛮行が記録されていますので興味のある方は調べてみてください。
生き延びていた成人は奴隷として強制労働を強いられ、ウラン採掘やトンネル掘りなど危険な仕事をやらされました。
このようなネイティブ・アメリカンの歴史を学ぶうちに自分の中の日本人のアイデンティティが芽生え始めました。
アメリカナイズされていく日本人と同化政策をされているネイティブ・アメリカンが重なってきてしまったのです。
我々日本人ももしかしたら同じ事をされていないか?
学校では教わらない本当の日本の歴史。今の神道と昔の神道を比べて何が変わっているのか?
明治維新や戦後に一体日本人は何をされてどう変わってきたのか?
奇しくもカナダに留学する事によって私は日本への探究心の方が強くなってしまいました。
民族として日本人を考えるようになり、人類学として日本人とは?を考えるようになったのです。