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AI×HRで人々を幸せにする〜事業構想から社会実装までのリアル〜

新卒説明会の特別編として【AI×HRで人々を幸せにする社会実装のリアル】をテーマに、弊社代表の野澤とデータサイエンティストの小荷田がセミナーを実施いたしましたので、皆様にもお届けしたいと思います。

本講演は、日本を代表するIT企業の社内研修の一環として実施し、400名以上の参加、質疑応答は2時間以上、満足度98%という結果になりました。好評につき、同様の内容で学生向けに実施したものとなります。

「AIってよく聞くけど、実際どのようにサービス化し、社会実装するの?」
「AIの社会実装の背景にはどういう考え方が重要なの?」

テクノロジーに興味を持ち、こうした疑問を抱く方に少しでも参考になればという思いで、AI×HRで事業を展開する弊社の事業構想から社会実装までのプロセスについて、AIの技術的な部分にも触れながらお伝えしていきます。

では早速、セミナーの内容をまとめてお届けします!

なぜ、ZENKIGENはHR領域で創業したのか?

※ZENKIGEN創業に至るまでの背景についてお伝えさせて頂くにあたり、野澤の経歴についてはぜひ一度こちらをご覧ください。

ソフトバンクグループ会長の孫さんは、こう提言しています。

インターネット革命によって国内産業が成長したのは、GDPにしてたったの7%であり、残りの93%は何も変わらなかった。しかし、これからの時代はAIが全ての産業を再定義する。

ではそんな中で、なぜZENKIGENはHR領域で創業したのか?

ZENKIGENというと、「Web面接サービスの会社」というイメージを持たれているのではないかと思います。しかし、設立当初からWeb面接サービスが我々の事業ゴールだったわけではなく、そのさらに先の事業展開を構想していました。(これについては後ほど触れさせて頂きます)

社名にも掲げている「全機現」というのは、「人が持つ能力の全てを発揮する」という意味の禅の言葉です。
大人が一日の大半の時間を過ごすのは「仕事」であるにも関わらず、その仕事において全機現できていない大人がたくさんいます。上司から言われたことをいかに確実でスピーディーに対応するかを考え、自分の意思を持たずにただ働く人が圧倒的に多いのではないでしょうか。
米国の調査会社であるギャラップ社が従業員エンゲージメントの調査を実施した2017年の調査結果によると、従業員エンゲージメントに関わる「熱意にあふれる社員(Engaged)」の割合が日本ではたったの6%であり、139カ国中132位と最下位に近いレベルとなっています。そんな大人が社会を作り、30年間負け続ける結果となった今の日本社会を次世代に引き継いで果たして良いのだろうか、という強い危機感を野澤は抱いていました。

であるならば、多くの大人が全機現する社会の創出に貢献すべく、テクノロジーを活用して「働く」ということに直結するHRの領域で事業を立ち上げようと決めたのです。

なぜ、Web面接なのか?

先程の孫さんの話に戻りますが、「これからの時代はAIが全ての産業を再定義する」という提言に続いて、「AIにおいて最も重要なのはビッグデータである」と明言しています。

弊社のWeb面接サービスは、この「ビックデータ」の収集エンジンとして位置付けられています。我々が保有する1分間の動画は、Webサイト3,600ページ分の情報量に相当するビックデータです。
従来のHR領域における膨大なデータはほとんどがテキスト情報であり、動画のビックデータはほぼ存在しませんでした。また、防犯カメラや車載カメラなどの動画のビッグデータは存在するものの、これらは画質が粗いこともあり、解析レベルに限界が叫ばれています。
これに対し、当社が保有する動画のビッグデータは、「表情」まで解析できる非常に鮮明な動画であり、そのデータ数がすでに150万件以上を突破していることから稀有なデータを大量に保有していると言えるかと思います。

加えて、データを保有しているだけでは意味がなく、活用、事業化し社会実装をしていかなければ意味がありません。
手前味噌ですが、これを実現しているZENKIGENの強みは以下の5つだと考えます。

①大手企業を中心とした約500社の顧客基盤
②指数関数的に増え続ける動画データ
③事業構想力
④AIを内製できる技術力
⑤UI/UXを洗練できる専門家

これらが高速で回転し、PDCAサイクルを回せることが、ZENKIGENの圧倒的な強みです。

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AI×ビッグデータによる採用DX

日本独自の「新卒一括採用システム」は、ここ60年間ほとんど変わっていません。現代の現実に即していないシーンも多く見受けられます。
これを抜本的に改革する為に、弊社はAI×ビッグデータを活用して採用DXを実現しています。

弊社が提供する採用DXサービス「harutaka(ハルタカ)」は、以下の2つのツールがあります。

①エントリー動画
②ライブ面接

さらに、これらをそれぞれAIで解析するのが、「harutaraエントリーファインダー」と「harutakaインタビューアセスメント」です。
それぞれの機能を開発した背景と、期待できる効果についてご紹介します。

(1)harutaraエントリーファインダー:エントリー動画をAI解析する機能です。
従来の採用では、選考初期のスクリーニングはエントリーシートや適性検査などの文字情報をもとに、各社の基準と担当人事のバイアスを含みながら行われてきました。文字情報だけで多くの候補者は不合格になり、面接で会うことはありませんでした。しかしここで、不合格とする人の中に、本来であれば自社で活躍するかもしれない候補者が埋もれている可能性があるのではないか、という大きな疑問が浮かび上がってきます。

harutakaエントリーファインダーは、1分程度のエントリー動画から「顔の表情」や「声」など様々な情報をAIが解析し、複数の項目に分類して定量化します。文字情報だけでは伝わらない、また評価のバラつきが大きくなる「印象」の評価指標が定量化されることで、属人性が高い評価に客観性を持たせ、より多面的かつ公平性の高い採用を実現します。

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(2)harutakaインタビューアセスメント:ライブ面接をAI解析する機能です。
従来の面接は、面接担当者の裁量で実施されており、人事部門の採用担当者がその実情を掴みきれていない”ブラックボックス”と化していました。不適切なコミュニケーションは、候補者の辞退や採用後のミスマッチ、企業の評判などにも大きく影響するため、企業にとって面接担当者のコミュニケーション改善や面接後の候補者に対するフォローが重要となります。

harutakaインタビューアセスメントは、このブラックボックス化した面接をAIで解析することによりコミュニケーションの品質を可視化し、候補者の面接体験の向上をサポートします。面接の映像データから候補者の「表情の動き」や「発話比率」をAIがリアルタイムに解析し、5分サイクルで面接担当者にフィードバックすることで、面接担当者がコミュニケーションの改善アクションを自発的に実践することを促します。

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採用から職場領域へ

ZENKIGENは、『テクノロジーを通じて人と企業が全機現できる社会の創出に貢献する』というビジョンを掲げています。
このビジョンを実現するためには、採用の先の”働く”職場領域こそが重要と捉え、設立当初から事業を構想していました。ただ当時は、職場で上司と部下が1on1をオンラインで実施するということがいつ現実になるか、については確信を持てておりませんでした。
そんな中、コロナウィルスの感染拡大によりテレワークが普及したことで、オンラインで1on1を実施することが当たり前になったのです。

話は少し変わりますが、「全機現」の真逆は「鬱」であり、現代社会において鬱は世界最大の疾患とされています。WHOの調査によると、世界人口の約5%に相当する3億人もの人々がうつ病または不安障害を発症しているとされています。これにより世界経済に毎年1兆ドルの費用が発生しているとも言われています。さらに前述の通り、「熱意を持って働く人」の比率が日本はたったの6%であり、これは世界139カ国中132位という非常に低い水準であるのが現状です。

そんな中でコロナ拡大がさらなる追い討ちとなり、現在の職場状況は非対面コミュニケーションが急増したことにより、人間関係の希薄化がさらなる課題となっています。

こうした課題を解決するべく、兼ねてより構想していた職場領域のプロダクトである1on1の改善サポートAI「revii(リービー)」を今年11月にリリースしました。

MIT(マサチューセッツ工科大学)元教授のダニエル・キム氏の「成功循環モデル」によると、職場において「関係の質の良化」がすべての起点とされています。
関係の質が上がると思考の質が上がり、思考の質が上がると行動の質が上がります。行動の質が上がると結果の質が上がり、それがまたさらに関係の質の向上に繋がるのです。

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reviiは、マネージャーとメンバーの1on1をAIで解析することにより、この「関係の質の良化」をサポートします。

reviiを使って1on1を実施するだけで、AIが発話量や発話内容、顔や目線の動きなど、マネージャーとメンバーごとにそれぞれ10項目以上の特徴量を測定して関係値スコアを算出し、50パターン以上の改善案から最適な施策をアドバイスします。
さらに、1on1を継続的に行うことでデータが蓄積され、その変化の推移をダッシュボードで確認することができるため、より良い関係性を築くためのPDCAサイクルが生まれます。

こうしてマネージャーとメンバーの関係性を定量化することにより、これまでブラックスボックス化していたマネージャーとメンバーの人間関係、マネージャーのマネジメントスキルやメンバーの状態などが可視化され、チームや組織全体の関係性を定量的に把握することで、職場のつながり強化やマネジメントスキルの改善に取り組むことが可能となります。

ZENKIGENのAI技術

続いて、弊社のAI技術についてご説明します。

AIには、主に3つのパターンがあります。

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ZENKIGENは上記の全ての技術セットを保有しており、タスクに応じて使い分けをしています。

エントリーファインダーでは、主にDeep Learningを活用しています。
エントリー動画を顔画像、全身画像、音声に切り分けてネットワークに入力し、それぞれの特徴量を統合してルールを学習する仕組みになっています。音声については、画像化することで、顔の画像と同じように学習に利用します。こういった、いくつかのタイプのデータを入力し、学習させるアプローチをマルチモーダルと呼びます。

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また、もう一つのAIプロダクトであるインタビューアセスメントは前述の通り、候補者と面接官の映像データをAIがリアルタイムに解析し、5分サイクルで面接担当者にフィードバックする仕組みになっています。
従来は面接後にAI解析が実施され、まとめてフィードバックするのが一般的でした。採用面接においては、面接後にレポートをもらっても時すでに遅しということがあります。弊社のインタビューアセスメントは面接中にフィードバックすることで、面接官が瞬時に改善アクションを行うことが可能となります。

さらには、あまり質の良くない面接があった際には人事担当にアラートが飛ぶようになっています。面接官と候補者の相性が悪いというだけで今まで不合格になっていた候補者のフォローをできるように、管理画面も現在開発しています。

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最後に、バックエンドの仕組みを簡単にご説明します。
harutakaで実施されるライブ面接は、ライブサービスAPIを通し、リアルタイムで映像通信機能を提供します。そこでの通信映像を5分間に区切りクラウドストレージにお送ります。そのデータがhobbitエンジンに入力され、複数の機械学習モデルに入力されたのちに推定値を返します。最後にharutakaに解析結果を送り返し、フロント側で処理します。

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AIの社会実装に必要な視点

ここからは、野澤が考えるAIの社会実装に必要な視点をお伝えします。
大きく以下の4つがあります。

(1)ビジョン
まず第一に、ビジョンを持つことが必要不可欠です。
「どういう社会を実現したいか?」という明確なビジョンを持つことに尽きます。
弊社のビジョンは設立当初から一歩もブレていません。
しかし、ビジョンを実現するには一人では何も成し遂げられません。ビジョンを掲げ、それに共感してくれる仲間が集まるからこそ、ビジョンの実現に近づけるのです。

(2)タイミング
野澤自身もこれまで数多くの事業を立ち上げてきましたが、タイミングというのは極めて重要なポイントです。早すぎても、遅すぎてもいけません。
弊社の場合、オンライン化が常態化する数年前からWeb面接の事業を開始し、膨大なデータが蓄積されていた為、採用のオンライン化が普及したタイミングですでに安定運用を実現できる体制が整っていました。また、その蓄積されたデータがあったからこそ、AIの自社開発が進み、自社でデータサイエンティストも採用できたのです。

(3)スピード
スピードも非常に重要なポイントです。
特にITやAIの領域において、進化のスピードはとても早いです。
弊社はビッグデータを保有し、事業構想力を持ちながら開発を内製する体制が整っているからこそ、スピード感を持って世界最先端の技術を提供することができています。

(4)志高く
最後に、常に「志高く」あることです。
「今だけ、自分だけ、お金だけ」ではなく、何かしらの形で社会に貢献し、この日本をより良くしよう、という意識を持つことがとても大事です。
弊社はテクノロジーを活用し、採用の在り方や職場のコミュニケーション、強いては働き方自体を改革することで、人と企業が全機現できる社会の創出に貢献したいと思っています。そして、そんな社会を次世代に引き継いでいくことが弊社の使命であると考えています。

ZENKIGENのさらなる発展

最後に、弊社の今後の事業展開についてお伝えします。

弊社の事業は採用領域から始まり、職場領域へと参入しました。
今後はこの技術を活用し、「AI×HR」からさらに領域を拡大していきたいと考えています。そして、グローバルに挑戦したいと思います。

現代の日本において、IT産業は数少ない成長産業であるにも関わらず、グローバルに挑戦しているIT企業が圧倒的に少ないのではないかと思っています。戦後の焼け野原から日本がここまで発展してこれたのは、先人の功績があったからこそです。そんな日本を、我々は食い潰しただけの世代になるのではないか、という危機感があります。
だからこそ、グローバルに挑戦することで、より良い社会を次世代へ引き継ぐことが弊社の責任だと考えています。

我々1社だけでは当然叶えられることではないですが、こうした姿勢を世の中に示すことが重要であり、我々自身がグローバルに挑戦することでさらなる価値を提供し、世界を少しでも良くすることに挑戦し続けたいと思っています。

質疑応答

Q:全機現する社会を創るために、いち個人としてできることややるべきことは何だと思いますか。

A:(野澤)「自分の人生を生きる」ことだと思います。
自分の人生を生きずに、他人の価値観や評価のために生きていることに気づいていない方が多いように感じます。本当はやりたいことがあるのに、「社会的にこうあるべきだから」「周りにこう言われているから」等の理由で自分の能力を開放しきれず、諦めてしまう人が多いのではないでしょうか。
まずはそのことに気付くことが、「自分の人生を生きる」ための第一歩かもしれません。

Q:自分の人生を生きることが大事だということはとても理解できました。
一方で、皆が全機現する社会になったらある意味ストッパーがなくなるのではないかと心配になります。これについてはどのようにお考えでしょうか。

A:(野澤)「自分の人生を生きる」ことと「自分勝手に生きる」ことはイコールではないと私は思っています。
ハーバード大学のロバート・キーガン教授の「成人発達理論」にもありますが、人は自分自身の幸福感が満たされることで、社会の役に立ちたいと思うようになります。はじめは、その対象が身近にいる家族や会社の仲間だったりしますが、次第に住む地域や日本全体、そして世界や次世代へと、段階を経て広がっていくのです。
自分自身が全機現することで社会に目が開いていくと思っていますし、そうであって欲しいと願っています。

Q:面接が終わった後に、学生が選考結果のフィードバックを見ることは可能でしょうか。

A:(小荷田)昨年の取り組みとして、「#メンココ(面接を、ここから)」という、就活生と企業の面接官が本選考に影響なく模擬面接を行えるオンライン面接トレーニングを開催しました。この模擬面接を受けた就活生には、面接の評価結果とあわせて評価のフィードバックをお送りしました。
今年度も「#メンココ」を実施予定ですが、これはあくまでも練習の場であり、面接本番のフィードバックを就活生にするか否かは各クラインアント様に判断を委ねております。
実際には、昨年度、本番の面接で全就活生にエントリーファインダーの選考結果をフィードバックしたクライアント様もいらっしゃいましたので、こうした動きについては今後もぜひウォッチいただけると幸いです。

最後に

いかがでしたでしょうか。

ZENKIGENが人々を幸せにするためのAIの社会実装について、どのような思想で取り組みを行っているか、少しでも参考になっていたら幸いです。

読者の皆様それぞれが「全機現」できることを心から願うとともに、それが結果として「全機現社会」に繋がることを強く信じています。

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