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【手塚治虫漫画全集】全巻紹介 第10弾!251巻~263巻編

手塚治虫と言えば
ギネスブックにも載るほど膨大な数の作品を残している作家であります。
だから「名前は知っているけど何を読んでいいのか分からない」と言う方も多いと思いますし、ファンの方でも全部読んでいる方は少ないと思います。
そこでこの【note】では講談社発行の手塚治虫漫画全集をベースに
手塚作品をガイド的に紹介しています。

手塚治虫漫画全集は全400巻あり、今回はその第10弾!

251巻~263巻までのご紹介となります。
それでは本編をお楽しみください。


「ユフラテの樹」

1973年作
誰でも1度は考えた事がある「超能力を手に入れたい」という願い。

これを普通の高校生が思いのままの超能力を身につけたとしたら—
というストーリー

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「ユフラテの樹」という樹になる「ユフラテの実」を食べると
自分の想いのままの特殊能力を得ることができる。
とある高校生3名がこの実を食べ、
頭が良くなったり、
ピアノが天才的に上手くなったり
自分の欲望をかなえていくのですが
主人公の1人だけは思いのままの念力を使えるようになり
自分の思い通りに社会をコントロールしようとし出します。
念で悪人を懲らしめ、世界の平和をつくろうとして
主人公の考え方が徐々にズレはじめていくんです。

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「あいつらなんて殺したってかえって社会のためにはいいのさ」
「ボクは世の中のためにこの力を使うつもりだよ」

悪人は裁かれて当然
自分こそが世界の支配者と屈折した精神が暴走しだすんですね。

やがては
「なんでも思い通りになっちまうことが
こんなに恐ろしいことだとは知らなかった」

現実と暴走した精神に耐え切れなっていきます。

そして3人の結末は如何に…?

というストーリーですけど
あのDEATH NOTEの元ネタなんじゃないの?
という噂があるんですが真相は不明です。
超能力を身につけ、世界征服をたくらむという展開は確かに似てますね。
元ネタを辿ると手塚作品だったなんてことは
結構あるのでまぁあり得る話だとは思います。

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…でこのマンガでは人を裁く事で引き起こされる悲劇
分相応の持て余した「力」の暴走
人間の制御不能な欲望のコントロールが描かれています。

思い上がったエゴや社会との協調性が欠落した人間になると
大変なことになるよという教訓が示されています。
というのもこの作品は「高1コース」という学習雑誌に掲載されたもので
ターゲットは精神が発展途上にある高校生だったからです。

まさに禁断の果実を描いた
手塚治虫の青少年に向けたメッセージだったと言えるでしょう。


「地底国の怪人」

1948年作
飛行機事故で父親を亡くしたジョン少年は、安全な乗り物を新たに造ろうと誓い、地球を貫通したトンネルの中を走る「ロケット列車」を設計。
彼の助手となったウサギの耳男とともにロケット列車に乗り、
トンネルを掘っていくが、地底で遭難してしまう。
ほぼ一緒な内容ですね。まぁ当たり前ですけどリメイクですから。

SFと言えば普通は宇宙なんですがこういう地底という設定を放り込んでくる辺り見事であります。
そして動物との共生、共存、いかにもありそうでない世界観を描き出しているのも見事!
このウサギの「耳男(みみお)」というなんとも短絡的なニックネームですがこのキャラが愛らしいほどにカワイイ。さすが先生が愛着を持っていると語るくらい可愛く書かれています。


ですが…死んじゃうんですね。(あ、言っちゃった)
こういう自らが大好きと語る、大切にしたいからこそ破壊する 哲学的・文学的な要素、手塚先生が目指すドラマの完成形の原型がここにあるんではないでしょうか。

ちなみに悲劇を初めて漫画に持ち込んだ作品とも言われております。


「地球を呑む」

1968年作
たとえ写真であってもその女ゼフィルスのことを知った男は、誰でも彼女に夢中になってしまう…そんな絶世の美女が中心の物語

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謎の美女ゼフィルスは、実は男によって人生を狂わされて死んだ母の遺言によって世の中すべての「男に復讐する」という理念があるんです。
その美貌の虜になってゼフィルスに翻弄される男たち

そこに酒にしか興味のない飲んだくれ男の五本松が現れ
ゼフィルスは持ち前の美貌で五本松を誘惑して殺そうとするが失敗…。

男なんてクソ喰らえと思っていたゼフィルスが徐々にこの五本松と絡むことによって心境や行動に変化が起きてきます。

しかもゼフィルス一家には男に恋をしてはいけないという規律があり
あろうことか男を恨み、男を虜にする絶世の美女が
女に全く興味のない大酒飲みの五本松に恋をしてしまうんです。

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恋の話かと思いきや
ゼフィルスの狙いは世界経済を崩壊させてやるという
大胆不敵な計画を目論んでいる
ゼフィルスの手法は、戦争や武力ではなく「お金」を崩壊させるという至極現代的な破壊手段を用います。
世界中に金塊をばら撒く事で紙幣の価値を失わせ
世界経済を混乱させるというストーリー

女と金と政治と人間の欲望の大人社会が、
手塚流ブラックセンスで描かれているんですが
現代のように行き過ぎた資本主義の末路を見せられているようで
非常に末恐ろしい作品です。

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女性の美しさから金の価値がゼロになる流通経済パニック作になっていく様はどこまで初期設定にあったのか分かりませんが

あとがきで手塚先生は
「物語が広がりすぎた、大河ものの欠点が露呈した」
と漏らしています。

どうやら編集者から好きに書いていいと言われていたみたいで
好きなように描いた結果こういう壮大なテーマになったようですね。

タイトルから創造するに大まかには設定されていたようですけど確かに物語全体としては広がりすぎた感はあります。


「時計仕掛けのりんご」


1970年作

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スタンリー・キューブリック監督の映画『時計じかけのオレンジ』のパロディですがタイトルと本編には全く関係がありません。
内容はダーク色の強い短編集となっております。

「処刑は3時におわった」はクライマックスが秀逸

「バイパスの夜」
1991年『世にも奇妙な物語』にて実写で放映されました。この作品は手塚短編作品の中でも比較的有名な作品なので
なるほど実写化されてもアリかなという感じです。
タクシーという密室の中で二転三転するスリリングな展開は見ものです。

「イエローダスト」
沖縄を舞台に日米間の政治の在り方を超絶に皮肉った問題作、この作品は1972年作でこの年に沖縄がアメリカ合衆国から日本国に返還された年です。
戦争でなくても戦争のような悲惨な現状があるといわんばかりの
日本政治へ突き付けた強烈なメッセージに写ります。

「悪魔の開幕」
これは内閣総理大臣を暗殺するお話し。
しかし暗殺は失敗…その裏に潜む黒幕の正体は実は?
そしてクライマックスには犯人の仕掛けた最後のどんでん返しが。


「帰還者」はSFエロティックサスペンス。
宇宙から帰還した女性がセックスをすると男が変死を遂げる
実は女性が宇宙からの性病に侵されていたことが判明
宇宙の性病って凄まじい発想力です
結末はいかに?

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とまぁ
どの作品も最後にじわりと心に来るブラックなラストばかりです。

いづれの作品も手塚節全開の異色短編となっております。



「I.L」


1969年作
手塚先生の変態性欲が炸裂する異色漫画
冒頭からして浮世絵調のお戯れから始まりますからね。

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売れない監督に世界をプロデュースして欲しいと依頼する謎の男
思いのまま命ずれば動く絶対服従の女優をプレゼントされ、どんな人間にでも変身できるる能力で問題を解決していくという一話完結もの。

前半は上手くこの設定を元に面白い話が進むんですが
後半は尻すぼみというか、
設定が活かしきれていない方向へ進んでしまいます。

女とはときには愛らしく、ときには残忍に、ときには気まぐれに
愛のオムニバス作品
と語っていたんですが
そういう作風ではなくなってくるんですね(笑)

あとがきで先生は「女性が描けない」と悩みを漏らしており
リアリティに欠けるきらいがあると語っておりますが
手塚先生は画力で魅せるエロというより
目に見えないエロさ人間の内面的なエロさを描く事が卓越していると思うんですけどね

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本作にはそれが
前半は上手く融合していたのですが後半はちょっと

画力に関しては晩年までずっと悩んでいたそうですが
この作品では手塚先生の変態的なダークエロシーンが満載に織り込まれています。



今回はここまで

次回第11弾はこちら


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