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故人の作家の出版物について思うこと(手塚治虫編)

1月4日のヤフーニュースにこんな記事が出ていました。

どうやら手塚先生の
が13、14歳ごろに弟や妹と共作した秘蔵の長編「ママー探偵物語」が、
2022年2月に出版されるそうです。

子供の頃の落書き?作品とは言え
天才漫画家の片鱗が垣間見れる貴重な史料的役割を持っているので
この公開は大変意義のあるものになるのではないでしょうか。


詳細はこちら

 「ママー探偵物語」(2万4200円)
出版社888ブックスの公式サイトで予約販売だそうで
書店では3月以降に発売予定。


ヤフーニュースにも出るくらいですから結構な話題になるかと思いきや…

この出版には賛否両論

どうやら手放しには喜べない声が挙がっております。


「亡くなった人の作品を許可なく公開するのは如何なものか」

「作品と呼べる程度のクオリティを売り物にするって…」

「なにより高い!手塚プロダクションが儲けすぎ」

「販売ではなく美術館などで公開すればよいのでは」

「手塚先生が生前出版しなかったから公開したくないのでは?」

などのように
どちらかと言えば否定的な声が多いように思いました。


まぁ諸々…個人的には気持ちが分からなくもないところはいくつかありますけど、こういうときの「需要と供給のバランス」について
いつも思うことがあるんでちょっと書いておきます。


まず「儲けすぎ」という点

結論を言うとですね…儲けたっていいじゃないすか。
なぜそれがダメなのか本当に意味不明であります。
極論すると世の中のほぼすべてが「儲け」のために生産活動をしているわけだから儲けるのは当たり前で儲けがなければ商売なんて成立しません。

そして「儲け」がなければ、その商品が世に出ることすらないわけですから
多くの人にその商品を届けることすらできないということになります。

つまりは「儲け」があるから
多くの人に商品やサービスが提供することができ
社会が成り立っているとも言える訳で…
それを否定しちゃうとなると、
それはただの感情論で「嫉妬」以外のなにものでもないと思います。

ここら辺のリテラシーって日本は本当にヤバイレベルになってきているなぁって感じます。


あとは原価も分からないのになぜ「儲けすぎ」という発想になるのか?
これも意味不明。

「高い」という反論はまだ分かります。
だけど「儲けすぎ」という声には全くもって意味不明です。

だってもしかしたらこれ原価が24000円だったら儲けは200円ですからね。
(実際はそんなことあり得ませんよ。極論の例えです)

まぁそんな意地悪な事は抜きにしまして
実際こういう復刻のようなものって結構手間がかかっちゃうんですね。
ですから思いのほか出版にあたりコストはかかっていると思います。

そもそも大量生産するものでもないし
当然原価率は上がってしまいます。
そして安いから売れるってわけでもないので
当然それなりの売価にならざるを得ません。

みなさんが欲しいと思うもので大量生産が可能であれば
もっともっと安い価格で提供することは可能でしょうけど
じゃあ
この「ママー探偵物語」が200円くらいで販売していたとしましょう。

みなさんは買いますか?

そりゃあある程度は売れるでしょうけど
100万部売らないと元が取れないとしたらどうでしょう。
間違いなく売れませんよね。

安くしたって売れないものは売れない。
つまりは
安ければいいってものでもない。

だとするなら…
これだけのコストがかかって、このくらい販売するから
このくらいの価格にしないといけないという数値が導き出されるわけですがその数字が「売価」であって
決して、
「めちゃくちゃ儲けてやろう」「オタクどもから銭を奪ってやろう」
という安直な設定ではないと思います。


ですから必然的にこの手の復刻版や豪華版などの類って
市場からちょっとかけ離れた売価にならざるを得ないんです。
でもこれが市場原理なのでしょうがないんです。

み~んな買ってくれれば安くなりますけど
そんなに沢山の人が「ママー探偵物語」買わないじゃないですか(笑)

手塚治虫関連の書籍がいい値段するのも、そもそも購買数が低いんですよ。

だから高いのはしょうがない。

とはいえ今回のこの「ママー探偵物語」
実は500ページ以上の圧倒的ボリュームで表題作の他に11~15歳頃に描いた作品も初収録されているという非常に優秀なコレクターアイテムとなっています。ここら辺の詳細もお伝えせずにただ価格だけ高いって煽るのもどうかと思うんですけどね。

逆に「鬼滅の刃」や「呪術回戦」関連の方が「儲け」てると思いますけどね。だって小さい訳わからんキーホルダーが800円くらいしてましたから
あれには文句言わないんですね…。


…という訳でこの手の話題になったときの
ボクが感じていた「需要と供給」のバランスのお話でした。


最後にボクの個人的感想を述べておきますと…

この作品が手塚先生の13、14歳頃のものだとすると
今から約80年ほど前であり戦時中の作品であります。

漫画なんか描いていたら非国民、打ち首にされても不思議ではない時代に
これだけの作品を残していたことがもはや奇跡!

しかも500ページ以上残っているってマジですごい!

生きるか死ぬか死と隣り合わせの時に「漫画」を描いていたことも「奇跡」
その「漫画」が残っていたことも「奇跡」
漫画を描く紙があったことも「奇跡」

数々の奇跡に彩られたまさに「奇跡的」な漫画だと思います。

歴史的、資料的価値も恐ろしく高くこれが単なる普通の漫画ではないということがこれだけでも理解できるかと思います。

スゴイ!

本当、この一言に尽きる。

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