出た!手塚医療マンガの傑作「きりひと讃歌」オリジナル版登場!
今回は手塚医療漫画の金字塔「きりひと讃歌」のオリジナル版をご紹介いたします。
来ましたね。
手塚医療漫画と言えば「ブラックジャック」でしょう。
しかしガチ勢に聞いたなら「きりひと讃歌」ではないでしょうか。
知られざる医療マンガの傑作にして「ブラックジャック」の原型ともいえる本作はめちゃくちゃ面白いにも関わらずそこまで知名度がありません。
そんなある種のマイナー作がこの度オリジナル版として立東舎より発売決定いたしました。
最高!出ました!立東舎!
この出版社が、結構変態出版社でありまして、
復刻にあたり有名どころの復刻ではなく過去にも数多くの手塚マイナー作のオリジナル版出してます。
「ボンバ」とか「ブルンガ一世」とか誰も知らなくないですか(笑)
そんなドマイナー作を平気でぶち込んでくるあたり間違いなく立東舎の編集にはガチ勢がいると推測してます。
だって売れないですよ。こんなん。
売る気あるならこんなチョイスしませんしね。
相当な手練れが生息している出版社なのでしょう。
そのド変態立東舎がこの度目を付けたのが「きりひと讃歌」です、
これで間違いなくガチの手塚ファンがいるのは確定しました。
でもこのマイナー作は面白い。見る目あります。
歴史的傑作といっても間違いありません。
そんな素晴らしい作品のオリジナル版をご紹介していきますので
ぜひ最後までご覧ください。
では早速本書の特徴をご紹介していきます。
まず何よりこのシリーズ最大の特徴はオリジナル版での掲載ということであります。立東舎HPから引用してみます。
とあります!
これが本書の特徴です。
誰の何も手をつけていないありのままの姿が拝める。
雑誌掲載時そのままの形式で読めるっていうのが超嬉しいんです。
なんといっても手塚治虫という作家は
今の常識では考えられないくらいに改編、修正を行うことで有名な作家ですからオリジナルの姿が残っていない事がめちゃくちゃ多いです。
なので原型ともいえるオリジナル版の存在というのはファンにとっては貴重なアイテムとなっているんです。
ということで
まさに文句なしの内容となっております。
さらに個人的にはこちらにも注目しています。
現代詩人の女性作家、最果タヒさんによる
「手塚が「生きる漫画家」であった頃」という特別寄稿が掲載されているようです。
これはいい。
最果タヒさんと言えば
詩集が異例の売れ行きを見せる今最も熱い詩人といっても過言ではない謎多き女性詩人であります。
だいたいこういう寄稿って手塚を知り尽くしたおっさんか
小難しい大学教授みたいなハゲ散らかったおっさんのものが多いんですけど
この1986年生まれの女性詩人が何を語るか非常に興味あります。
「きりひと讃歌」は当然、最果タヒさんが生まれる前の作品であり、
なおかつ手塚治虫がスランプのどん底にあった時の
ドス黒い世界観が充満したカオスな作品であります。
それを若き女性詩人が何を語るか。
これは興味そそられますよね。
「きりひと讃歌」をどの角度から切り取って来るのか大注目の寄稿です。
そしてどうですか。コレ。
見てください。この表紙。
医学のかけらも感じられない澱んだ表紙。
なんすかこれ?
どうしてこの絵を表紙にチョイスしたのかちょっとビビります。
これを見て医療マンガって想像できる人なんておそらく一人もいません。
確かに「きりひと讃歌」というタイトルはキリストの十字架をなぞった演出から来ていますけどこれを表紙に持ってくるのは、なかなかに読み込んだガチ勢らしいチョイスと言えます。
(というかやはり変態的チョイス)
本作は医療マンガではありますが「ブラックジャック」のような
医療技術を扱う正統派タイプではなく
医療業界を通して描かれる「人間とは」「命とは」というアダルト色の強い作風が特徴です。
本編ストーリーは
ゴルゴダの丘へ向かうキリストになぞらえて
様々な困難に立ち向かう主人公の受難が本線となっており
文字通り主人公には様々な困難が立ちふさがります。
もう、絶望的とも思える壮絶な展開が次々と襲い掛かってきます。
物語冒頭から主人公の医者が謎の奇病「モンモウ病」に感染してしまい
犬みたいな姿になっていきます。
そして医局から抹殺されていき見世物として扱われたり
縄や鎖で縛られ引きずり回されたり
人間の尊厳をズタボロに引き裂かれて、
普通なら生きていけないくらい悲惨な状況まで
追い込まれていきます。
まさに人生の絶望とも言える描写が続くんです。
これまでの手塚作品のような明るさは微塵もなく
ずっとず~~~~~~っと重苦しいダークな展開が続きます。
生々しい残酷シーンも多くマジでアングラな雰囲気が漂い散らかします。
一部読者の声ではあまりにもショッキングな描写が故に
「ほんとにヤバイ手塚治虫の作品」の代表とささやかれるくらいに
トラウマ級の絶望感を味わうことができます。
しかしこの絶望感こそが
本作の魅力のひとつでもありこの時期の手塚治虫を象徴しているんです。
ちょうどこの時期はスランプと呼ばれる時期で
手塚先生自身めちゃくちゃ悩んでいました。
これまでの丸っこい手塚タッチは時代遅れと世間で言われ
「手塚は終わった…」と業界でも手塚時代の終焉が定説になっていました。
そんな中でも手塚先生は様々な試行錯誤を繰り返し意識的に手塚タッチの変更にチャレンジし続けるんです。
そのもがきにもがきまくって辿り着いたのが本編のタッチなのですが
見て一発で分かるようにまだタッチが定まっていません(笑)
(ぜひその内容は本編でご確認くださいませ)
ですがどこか実験的とも思えるこの劇画タッチが
作品の不安定さを演出させる効果となり
よりグロテスクな印象として本作の魅力を引き立たせています。
これまでの手塚タッチと新手塚タッチが融合した不可思議な世界観が奇妙な相乗効果を生んでいくんです。
そして絵のタッチも本作の見どころではありますが
やはり秀逸なのは最後まで目を離せないストーリー展開でしょう。
単なるグロいだけのマンガではなくストーリーがマジで秀逸!
医療業界の闇、医局の権力闘争を絡めて謎の奇病の正体に迫っていく非常に重厚なミステリー要素を含んだストーリーがコンパクトにまとまっており
あっという間にクライマックスまで到達してしまいます。
本当に「え?もう終わったの?」って感じです。
めちゃくちゃ面白いので是非ともおすすめします。
本編の解説は下記記事にてどうぞ ↓
各社、いろんなバージョンが出版されておりますが
この度、発刊されるのが完全オリジナル版であります。
個人的にも大好きな作品なのでこれは問答無用の余裕のマストバイなアイテムなんですけど、、、、
ちょっとお高い、13,200円
立東舎ってこれまでお求めやすい価格での発売が多かったのですが
これだけ異様に高く感じる13,200円
おっと、、、ちょっと眩みますね。
でもすんごいボリュームなのでこれが相場かなと思います。
全900ページに迫る圧倒的数の暴力を放出するにはこれくらいは致し方ないんですよね。きっと。
これまで立東舎のオリジナル版ってほとんど満足のいく仕上がりをみせているので今回も間違いなく価格以上のクオリティを提供してくれると思っております。
発売日は2024年の4月19日
チェックしてみてください。
というわけで今回は
異形の人間の悩み、苦しみを描いたメタモルフォーゼに憑りつかれている手塚治虫の医療マンガの傑作「きりひと讃歌」オリジナル版のご紹介でした。
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