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女に溺れお金にがめつい「アトム二世」は超絶に人間臭い

今回は「アトム二世」お届けいたします。
このアトムはすごいですよ。

曰くの最終回となった「鉄腕アトム」TV版アニメの後日譚になっておりますが太陽に突っ込んだアトムの続きが気になりますよね。

本作にはそれが描かれております。


そしてこれまでのどのアトムよりも強烈!!!


女に溺れお金にがめつく
ある種一番人間に近いアトムの姿
が拝める曰くの作品
通常の価値観をぶっ壊すアトム像が描かれているので
ぜひこの動画を最後までご覧になって欲しいと思います。

それでは本編行ってみましょう。

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さぁ本作は
1975年9月号「文藝春秋デラックス」に掲載されたものです。
1966年の大晦日、日本中のちびっ子を驚かせたあの伝説のTVアニメ版の最終回の続きという設定になっておりまして
どんな内容かといいますと…

アトムが地球を救うため核爆発抑制装置を抱えて太陽へ向かって飛び込んだあと、死んだのか分からない状況でしたが
宇宙の誰かがアトムを救ってくれて、小さな星で生きていることが判明するんですね。


そして地球のお茶の水博士とコンタクトが取れ
そこでアトムが戻ってくると思いきや…

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なぜか総理大臣の「第二のアトムを作れ」という声で
やっと見つかったアトムを助け出すんじゃなく
「アトム二世」を作り出すことになります。
ここら辺の設定が良くわかりませんけど…(笑)

「アトム二世」のコンセプトは人間そっくりではなく
人間そのものがコンセプト。
より人間的に改良されて造られることになります

そしていよいよ誕生したのが「アトム二世」なんですが…


これがまたすごいものが誕生したんですよ。
アクビをしながら顔を洗ったり
ケツをボリボリかきながら歯磨きをしたり
本当に人間臭くなっているんですね。

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そしてエッチなTVみたり女性とラブホテルに行ったり
異性に興味があるところも、より人間っぽくなっちゃって
そんな姿を見かねたお茶の水博士が
正義の味方になれんのかとアトムにいうと
「正義の味方なんて古い」とアトムに一蹴されちゃう始末。

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政府の仕事に対しては正当な労働賃金だといって
週休三日と年一億円のボーナスを要求
挙句にはアトムを世界中で大量生産して各国に安く売りさばいてお金儲けをして女を100人も囲って横領罪で警察に逮捕されてしまうというストーリーになっております。

どうですか。
ハチャメチャですよね。


でもこれはすべてパロディであります。

ご安心ください。
さすがにあの続きがこれじゃあ事件ですよね。
違う意味で伝説の作品になったことと思います(笑)


しかし、いくらパロディといってもこれは原作者が描いているので列記とした公式のパロディ作なんですね。
公式とはいえこの破壊的なパロディはなかなかですよ。
完全に正義の味方という作品を自虐的に皮肉っています(笑)
すんごいことになっています。

事実、発表当時は
当然のことながらアトムのイメージが崩れたと
評判は最悪だったらしいですね(笑)
それほどまでにぶっちぎったパロディになっております。

どんな形であれここまでの作品を原作者が描いていること自体がすごい。
国民的ヒーローがラブホテル行きます?
素っ裸の女100人も囲います?

手塚治虫ハンパじゃないですよ。
こういうところが好きなんですよね。

例えば
ディズニーやワンピースがここまで吹っ切れるかと考えたら無理でしょうね
ここまで自分の作り上げた国民的キャラクターを真正面から破壊できるのは
これまでの漫画家の中でも手塚治虫だけだと思います

パロディひとつとっても如何に手塚治虫が並外れた作家だったのか理解できるのではないでしょうか。


ここでちょっと
アトムにおける作品の線引きをしておきましょう。

基本的には雑誌「少年」「鉄腕アトムクラブ」で連載されていたものが正式なエピソードとされており
それ以外で掲載されたものはアナザーエピソード、外伝的な要素が強いので
別物語として捉えていた方が分かりやすいかと思います。

「アトム今昔物語」とか「アトムの最後」「アトム還る」
小学二年生と四年生に連載されたもの
そして今回の「アトム二世」ですね。
ですから今回ご紹介する作品も手塚先生本人が描いたものでありますが本編とは別のアナザーストーリー別物語の立ち位置として見て頂くと良いと思います。

だからどこで最終回とするか
どの物語が本筋なのか、読者としては非常に難しい線引きになっておりますがこれらについては別記事もありますのでぜひご覧になってみてください。


ちなみに
「アトム今昔物語」とは

雑誌「少年」に連載された「鉄腕アトム」とは別にサンケイ新聞に67年1月から連載が始まったものでこちらもテレビアニメの最終回の続編として描かれたものであります。
この連載自体もアニメ最終回放映のその直後から始まっているので続編っぽい立ち位置ですが実はタイムトリップしてアトム誕生の前日譚になっているんですね

太陽に飛び込んで鉄の塊になったところをイナゴの宇宙人に助けられ地球に戻されるのですがタイムスリップして過去に戻ってしまう…と。
そして
アトム誕生前夜の2003年に自分が生まれてしまうというタイムパラドックスを抱えて自殺してしまうという何とも言えない内容になんですね。

作中では川に沈められて死んだり本エピソードとは違った一面を見ることができますがこちらも手塚先生の手によって現在のバージョンになるまで二回書き直されております

こういうのも原作者が描いていることがすごいんですよね

○○版だから脚本家が違うとか
勝手に誰かが描いたとかじゃないんですよ
手塚治虫本人が描いていますからね(笑)


だからあるワンシーンだけを鮮明に覚えている読者はそれを本当だと思っちゃうんですよね。
これ結構「手塚あるある」なんですけど
「あれ?昔こんなシーン見たことんだけどなぁ」とか
「あれ?最終回ってこんな感じだったけかな?」
なんていう記憶の喰い違いは手塚作品を読んだ方なら結構頻繁に起こります(笑)

今回みたいなケースもありますし
改編、修正で有名な手塚治虫ですからむしろ起こって当然。
もはやマニアですら何がオリジナルなのか分からななくなるときもあるくらいですから(笑)

まぁ今回ご紹介した作品はそれとはちょっと毛色が違うんですけど
原作者ご本人が描いた国民的漫画の超絶パロディ作

ぜひお手にとってご覧になってみてください。

こちらは「鉄腕アトム別巻」1巻に収録されております。
鉄腕アトム 別巻 1 Kindle版

 
鉄腕アトム別巻 (手塚治虫文庫全集) 文庫


鉄腕アトム別巻 手塚治虫文庫全集 Kindle版

この別巻にはアトムの死が描かれている「アトムの最後」
復活したアトムの「アトム還る」も収録されているアトムファンには溜まらない1冊になっております。。

おすすめは「鉄腕アトム プロローグ集成」です。
ちょっとお高いですけど1話ごとに手塚先生のコメント付き解説がありますのでより製作の裏話が知ることができますし何より大判なのがいいですね。
この誌面の大きさで見る手塚作品はやはり最高です。
併せて概要欄にリンク貼っておきますのでぜひチェックしてみてください。

(立東舎) 鉄腕アトム プロローグ集成 ←必読!(「アトムの最後」収録)


というわけで今回は「アトム二世」についてお話しました。
最後までご覧くださりありがとうございます。

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