見出し画像

手塚治虫漫画全集のすべて【後編】

今回は前回の続き

手塚治虫漫画全集のすべてを語ります。

前回はこちら

「手塚治虫漫画全集」から見えた変態的「修正」の歴史!


手塚治虫漫画全集400巻の
発行順ですがこれも手塚先生が決めています。
今回はこれで行こうなんて決めておきながら
「新宝島」みたいに大幅な改編や書き直しがあるので
当然締め切りに間に合わないものが出てきます。
そうなると刊行順番を入れ替えていたそうですから
実は、意味があって並んでいるわけではないということですね(笑)

手塚先生は発表順に掲載されるという考え方はあまりなかったそうで
どちらかといえばベスト的な意識が強く
時系列が多少おかしくなっても
早い巻数に好きな作品を組み込んでいたそうです。

なので300巻までで時系列のおかしいものは
手塚先生の手が加わっている可能性が多い、
もしくはあまり好みではない
あとは締め切りに遅れた(笑)ような要因があるってことですね。


ブラックジャックやアトムにしても掲載順番ぐちゃぐちゃですからね。
もうこだわりが尋常じゃないです、ほんとに。

画像1

というように
これらを繰り返しながらも8年の歳月をかけ
出来上がった「手塚治虫漫画全集」
すべて手塚先生本人による監修となっているので
この全集版が最も作者の意図に近いオリジナルであると言えますし
今では手塚作品を読む基本のベースとなっているわけであります。


全集登場以前は、手塚作品を読もうと思ったら出版社が分からなかったり
それこそ書き換えでプレミア価格がついて手に入れられなかったり
もう絶版になっていたり
読者にとっては非常に読みにくくなっていた作家でありました。

なので
この全集の登場は当時のファンからしたら待ち待った代物だったわけです。

画像2

創刊当初は重版が追いつかないほどの売れ行きとなり
瞬く間に広まりました。
この功績は大きく
まさに日本の文化遺産ともいうべき功績だと思います。

このような今でこそ当たり前のことではありますが
個人の単行本を出すということが一般化して
一般の方々の誰もが
マンガというものが簡単に手に取って楽しめるものになってゆくのです。


そして2001年漫画全集の電子書籍版が出ました。


その時はB6判の手塚治虫漫画全集を元に一気にデジタル化したものです
つまりAmazonkindleの電子書籍版は
すべて「手塚治虫漫画全集」ということです。

新しい技術が登場すると
手塚作品はいち早く声をかけてもらえるのですが
その時は直接生原稿をスキャンしたわけではないので画質が良くありません

じゃあ最新技術で生原稿をスキャンすれば?

って話ですがそのためにはまず生原稿の修正が必要
吹き出し部分に入り込んだ写植の影や写りこんでいるゴミ
写植も一旦チェックしないといけない
原稿自体の懸念劣化もある

画像3


ホワイトがボロボロはがれているものもある
星空なんて見るも無残になっているそうです(笑)

昔は出版社に原稿を直接渡すことが当たり前だったので
原稿が当然傷んでくる

とにかく手塚作品を
生原稿からスキャンするのは大変なことなのであります。

なので今でも手塚作品のデジタルデータは
2001年のデータを使用しているため
現在の精度からみるとかなり粗い、解像度が低い
しかも全集のB6より大きくしちゃうともうダメ…。

今の漫画業界は雑誌掲載時にデジタル化されて
それを単行本にも使っているので修正もデジタルで消せるのでラクチン
しかもそれを印刷会社の方でやってくれる場合もあるので
制作会社や出版社の手も省ける
昔とは格段に原稿の管理がシンプルでスピーディーになっています。

これらと比べてしまうと
手塚作品を新作で出版するにはこれらの壁を越えなければならず
どうしても遅れをとってしまう

このような背景があるので
データ化においては手塚作品を押し出していくには
難しい現状があるので違う方向からアプローチしていかないと
なかなか厳しいなぁとは思います。

ちなみに文化全集も元の講談社全集のデータを使用しています


さて

全集以外の小ネタをひとつ
1985年「アドルフに告ぐ」単行本化の際には
小説の単行本と同じ四六判ハードカバーに挑戦し
漫画の絵を使わないイラストレーターの絵を使い出版しました。

画像4

漫画なのに漫画の絵を使わないなんて
「こんなの売れるわけがない!」

と言われましたが

これがベストセラーになりました。

これは漫画絵を使うと子供っぽくなってしまうという理由で
あえて小説っぽくした手塚先生のこだわりでした。

既存の常識にとらわれない手塚先生ならではの発想です。


べストセラーになったことで四六判ハードカバーの漫画本ブームになり
そのあと「ブラックジャック」「火の鳥」もハードカバーになり続々刊行

画像5



今ではすごく当たり前ですけど当時はやはり画期的でありました。
これを機に漫画は大人も読むものとして市民権を得ていくわけであります。


というわけで今回は「手塚治虫漫画全集」のすべて前後編ご紹介しました。
少しでも手塚作品に興味を持っていただき
手に触れるキッカケになって頂ければ幸いです。

おまけ ↓


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?