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【映画所感】 インフィニティ・プール ※ネタバレ注意

カルト女優、ミア・ゴスの魅力全開

スタジオA24が制作、タイ・ウェストが監督したホラー映画『X エックス』(2022)と、その前日譚を描いた『Pearl パール』(2023)。

ホラー・ガチ勢の溜飲を下げたこの2作品において、圧倒的な存在感を放っていた、怪優ミア・ゴス。

ラスボス感ありありのフルネームからして、その後の役者人生では、つねに勝者の側にいるにちがいないと、勝手に妄想してしまう。

1978年に日本サンライズが手掛けたTVアニメ『無敵鋼人ダイターン3』の主人公“破嵐万丈(はらんばんじょう)”にも匹敵する、衝撃的なネーミングだ。

前置きはこのくらいにして、本作『インフィニティ・プール』。

監督・脚本は、ブランドン・クローネンバーグ。

珍しいファミリーネームからもわかるように、父親はカナダが生んだ変態映像作家、デヴィッド・クローネンバーグ。

デヴィッドのほうは昨年、新作『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』を発表し、80歳を超えてもなお、その特異なグロ表現に磨きをかけ、ますます意気軒昂のよう。

本作での息子ブランドンは、父親の変態性を受け継ぎつつ、デヴィッドはデヴィッドでも、リンチのような狂気と不条理を孕んでいるように思えた。

帰宅を急ぐ夜の田舎道、疾走する車の不気味で不穏な雰囲気は、デヴィッド・リンチの代表作のひとつ『ロスト・ハイウェイ』(1997)を彷彿とさせる。

このシーンを境に売れない作家ジェームズ(アレクサンダー・スカルスガルド)は、セレブたちの格好の遊び道具、慰みものに堕ちていく。

ミア・ゴスの巧みなリードで、作家という立場から“汁男優”へと誘われ、物語後半ではとうとう“犬”にまで成り下がり、最後は“赤ちゃんプレイ”でゲームセットを余儀なくされる。

その名の響きだけで無条件に帝王感ハンパない、アレクサンダー・スカルスガルドをもってしても、ラスボスであるミア・ゴスの暴走からは逃れられない。

英気を養うつもりで訪れた、リゾートアイランドで引き起こされる、身勝手で理不尽な犯罪の数々。

善悪の判断が次第に曖昧になり、快楽を伴うせん妄を見ているような状態になってしまったその先に待ち受けるものは…

公開が終了してしまう前に、劇場にすべり込むしかない。

そして、ミア・ゴスに絡め取られてしまえ!

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