20200125 無題

 くたばり損ないのお膝元へと、またしても休日が巡って来やがった。どうしてこうも性懲りもなく僕のところへ帰ってくるのか。遡河魚か貴様は。切り身に分けて、塩に漬けて、風に晒してやろうか。味が凝縮されて極上に違いない。炙ってもやろう。貴様は月曜日が門扉を叩けばまた罷免される運命にあることを、一体いつになれば学習するのだろうか。
 休日になれば小さな憂鬱が巡る。無為無聊という名の病巣は、僕の扁桃体に纏わりついていて、でっぷりと肥え続けている。僕の交感神経は活動の自粛を余儀なくされ、諸々にあった筈の選択肢をぷっつりと途絶えさせる。僕は傀儡師を失ったマリオネットのように、ヘンテコの関節で這いつくばっている気分だ。
 自室にいるというのに、何故だか鞠躬如としてしまう。愷悌や奢侈を求めることがどうにも面倒くさくなる。僕の思考は煩瑣が過ぎる。要らんことも要ることも、伽藍堂の頭蓋の中で知恵の輪となって絡まっている。環形動物の交媾のようなグロテスクな形に絡まって、解きようがない。
 ずうっと僕の行程表は白紙なのだから、もう一層のこと酒を吞んでしまおうか。そうだ、それが最善策に違いない。ミュンヒハウゼンは、僕にふわりと、そう語りかける。ああ、何という妙案。稀代の軍師がここに顕現せり。太公望も脱帽だ。気づかなんだ、気づかなんだ。そいつはスコトマの中にいたんだな。一旦、匙の投擲をしてしまえ。些事なんかもうない。
 この酒は、喰らった歳の分だけの矜持を兵糧にして、趨勢に残された自身を棚に上げ続ける、難癖垂れの因業爺が演ずる夢芝居の味がする。
 今日という日は、僕を馘首せんとする味がする。
 ああ、瞳孔を焼き切っていった、夢想して止まなかった、僕に振り向くことのない婀娜や嬌羞を知らないままに、ただ僕のバイタルサインは等間隔で生存を訴えかけている。
 正常性バイアスが、またしても僕を窘めている。
 酒をかっ喰らった。明日の我が身は一体何処へ。

映画観ます。