20200112 いつぞやの成人式

 今日、成人式があったらしい。目出度く成人式を迎えた人々には、僕の分までガッツリと納税をしたり、子孫を繁栄させて大日本国の礎となっていただきたい。
 うらぶれまくりの僕にも式典へ参加した過去がある。あれからもう随分と時間が経ったのだと気づいて、自分がおじさんへと変貌する中途で、二の足を踏み続けていることに恐怖を感じている。いや、最早僕はおじさんなのでは? どちらでもいいけれど。思えば遠くへ来たもんだ。
 昔を懐かしんで、当時の友人の顔を見てやろうだとかは、微塵も脳裏をかすめやしなかった。アルバイトもそこそこの貧困大学生だった僕は記念品のプリペイドカード欲しさに会場へ足を運ぶことにした。それに、友人が車を出そうと提案してくれたことが何より大きな要因になった。
 友人のJくんの運転する車で行った訳だけれど、このJくんというのは何を隠そう僕が初めてバンドを組んだ友人だった。彼についての大した話はないけれど、いつか書き残させていただきたい。
 式典では、市長さんが何やら心に響く御高説を宣っていたようだけれど、僕は一番後ろの席に座っていために、式典会場に反響するリバーブに阻害されて一言一句余さず聞き漏らした。
 そんな有難いお言葉を頂戴していた最中に、お約束の光景が始まった。袴姿のヤンキーらが壇上へ驀地。「ウオォオオオイ!」と怒鳴り声が響き、「フゥウウウウウウ!」と奇声が響く。ああ、これってフィクションじゃなかったんだな、と僕は思った。警備員に捕らえられ、引き摺られて見えなくなっていく彼らをなんて愚かなんだろうと思って、僕は悲しくなった。
 それから、会場は移り各々の母校で集まるらしかった。イワシの群れに溶け込むように、流れに身を任せて人々の溜まりに到着した。僕はJくん、会場で出会ったYくん、Sくんと共に、そこにぽつねんと立っていた。
「——じゃないか? 久しぶりだなぁ!」
 と、僕の名を呼ぶ方をよく見れば、先程に見た袴姿が4人。
 当時の友人はただのヤンキーになっていた。

 会場外で煙草を吸う僕に、
「おい、煙草なんか吸うなよ。身体に悪いからやめた方がいいぜ?」
 と、尤もな忠告をする袴。数十分前の行動について問い質したかったが、すんでのところで飲み込んだ。
「なぁ、健康にいいのはマリファナだぞ」
 と、尤もから最も離れたことを言う袴。勿論、僕はやっていない。
 彼は、ちゃんと公正できたのだろうか。
 あの日から、僕は一度も彼を見ていない。

映画観ます。