20200115 無題

 僕は正義の味方だ。ヒーローではない。

 バンド活動に勤しんでいた頃、地元バンドの多くが曲間で、「誰かの側で寄り添えるような歌を唄いたい」的なくだらないことを謳っていた。土地柄だろうけど、いつだってライブハウスには、所謂「歌モノバンド」が飽和していた。
 時折、僕もそれらに紛れることがあった。政令指定都市のひとつを拠点にしていたけれど、場所の選択肢は多くなかったのだから仕方がない。その中で僕は「馬鹿だ」「愚図だ」「奇天烈だ」とばかり喚いて、歌詞が飛んだものなら当時に嫌厭していた奴について語った。そして、バカのように一等デカい音量でギターを弾いていたのだから、いつだって浮いていたのを覚えている。「あっ、話すと意外と普通なんですね!」と不敬な物言いをする輩もいた。斜に構え過ぎた僕は地べたに這い蹲っていたやも知らない。今もそのしくじりに、忸怩ってしまう。
 彼らの歌は三ツ矢サイダーくらいの爽やかさでなんの味もしなかったけれど、女郎イエローな声援はいつだって彼らの味方だった。僕には野郎ブラウンな後押しがあったくらいだ。

 僕の言う正義はそこにはなかった。客観的な価値ではなくて、主観的な価値で決められている。あとは法治国家のルールに則っていれば十分だ。僕にでき得る限り人への迷惑をかけてはならない。更に、運よく還元できれば尚のこといい。
 滅私奉公をするにも、公共の福祉を優先するにも、必要なものは正義だけだ。ただ、好き勝手になんでもしたい。それは僕の味方をするために。それは僕の味方の味方をするために。
 僕は”正義”の味方なのだ。

映画観ます。