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テレンス・マリック監督『シン・レッド・ライン』圧巻の映像美



<作品情報>

太平洋戦争中の1942年、アメリカ陸軍の部隊がガナルカナル島へ上陸。兵士たちは日本軍と激しい戦闘を続ける一方、複雑な思いを抱えていた。手柄を焦る司令官トール中佐、彼に反発するスタロス大尉、志願して斥候隊に加わるウィット二等兵、勇敢なウェルシュ軍曹、戦地で知った妻の心変わりに困惑するベル二等兵。そんな彼らは大自然の中で繰り広げられる戦闘の果てに何を見たのか? 戦場の狂気、そして名もない兵士たちの苦悩を、20年ぶりに監督復帰したテレンス・マリックが描く。

1998年製作/171分/アメリカ
原題または英題:The Thin Red Line
配給:松竹富士
劇場公開日:1999年4月10日

https://eiga.com/movie/15407/

<作品評価>

75点(100点満点)
オススメ度 ★★★☆☆

<短評>

おいしい水
戦争を描きつつもテレンス・マリックらしい観念的なつくりが独自性を放っています。
戦争映画が苦手な僕でもテレンス・マリックの美学のおかげで長さが気にならず観ることができました。
戦争の過酷な現実を映しつつも、美しい自然や動物、光を同時に映すことでより戦争というものの不毛さ、無益さを際立たせています。

吉原
『シン・レッド・ライン』は、哲学的なポエムのような作品であると感じました。本作は、第二次世界大戦下のガダルカナル島で日本軍と戦うアメリカ兵たちのモノローグを通して、戦争や生と死について深く考えさせられるものです。登場人物が多く、物語がモノローグ形式で進行するため、時折誰が語っているのかがわからなくなることが難点ではありますが、それでも170分間飽きることなく鑑賞できるのはすごいことです。
戦争映画は反戦をテーマにしたものが多いですが、通常は映像で残虐性を表現します。しかし、ここまで言葉で内なる魂を露わにしようとする作品は他にないのではないでしょうか。もちろん、本作にも残虐性を示す要素はふんだんにありますが、身体的・精神的に疲弊していく日米の軍人たちだけでなく、途中で登場する動物たちの映像からも、命の儚さや脆さが伝わってきます。『ツリー・オブ・ライフ』でも感じましたが、テレンス・マリック監督は自然を映し出す手法に非常に長けています。銃撃に巻き込まれ絶命する鳥の雛や、兵士たちに冷たい目線を送るかのようにこちらを見つめてくる猿やフクロウの映像が印象的でした。
哲学的で難解な作品ではありますが、戦争映画としての映像美も十分に楽しめます。25周年記念などでデジタルリマスター版が劇場公開されることを願っています。

<おわりに>

 圧巻の映像美で紡がれた優れた戦争ドラマです。一見の価値ありです。

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