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あなたの表現ひねくれていませんか 思いを素直に伝えるには

思いを素直に言葉にするのは難しいです。無意識のうちに、本心とは違う言葉を発していることがよくあります。

どうすれば、素直になれるのでしょうか。
どうすれば、本心を言葉に出来るようになるのでしょうか。



言葉にするほど伝わらないことがあります。
言葉にするほど相手の心が離れていくことがあります。



これまで1万時間以上のセッションをしてきて、どのクライアントさんにも共通していることがあります。

それは、自分のことを上手く表現できていないということです。

もう少し申し上げると、皆さん状況や原因、他人を分析する言葉は持っています。しかし、これらの言葉は、自分を素直に表現する言葉とは違うのです。

セッションを始めて数年が経つクライアントさんがいます。

セッションし始めたころ、この方は、「〜したくない」「〜は嫌」という言葉を使っていました。特に自分のことを語るときには、否定形の表現が多かったのです。

ところが、先日のセッションで、「フリーでいたい」と表現されたのです。
それまででしたら、「なれ合いの関係が嫌い」「あの場所にはいたくない」という表現でした。

「〜したくない」、「〜が嫌」というのも、正直な気持ちです。でも、表現するに当たって、自分の中から顕れてくる思いを、どこかで変換しているのです。これを「ひねくれた表現」と呼んでいます。



ひねくれた表現をすると、他の人に、どう映るでしょうか。
気難しい。冷たい。嘘っぽい。どこか表面的。批判的。
このように映ります。



ひねくれた表現は、人に影響があるだけでなく、その人自身の生きるエネルギーも奪っています。完璧を求めて難しく考えすぎていたり、評価を気にしすぎていたり・・・。


また、自分らしい言葉を知らない方も多いです。


自分らしい言葉を知らないと、自分の気持ちを上手く表現できません。伝えながら、いつも何か違う感じがするのです。言葉への変換が上手くできないことで、本当の自分の思いも分からなくなります。そして、気持ちを素直に表現しようとすると、今度は相手を傷つけてしまったりします。

このように、自分の思いを上手く表現できないことに悩むクライアントさんは多いです。

もし、あなたも同じような悩みがあるのでしたら、まず、自分の思いを何も気にせず言葉にしてみることから始めましょう。

ちなみに私のセッションでは、好きなように話すことから始めます。何を言ってもいいです。悪口でも批判でも何でもいいのです。セッションでは、良いことを言う必要はありません。感じたことをそのまま言葉にすることが、素直な表現に出会う第一歩といえます。

気兼ねなく話せる親友に話してもいいですし、そういう方がいなければ、コーチに話すのも一つの方法です。

私のセッションでは、言葉に込められた本当の思いをクライアントさんといっしょに探していきます。すると、ご本人も気づいていない真の思いが必ずあるのです。それを何度も確認することで、自分の本当の思いに気づけるようになっていきます。

どんな表現も最初は角張っていますが、何度も使う中で、だんだん表現が磨かれてエッジがとれて、丸くなっていきます。

素直な表現に出会うには、いきなり上手く言葉にしようとしないことです。言葉は拙くていいのです。足りなくていいのです。もっといえば、言葉でなくてもいいのです。たとえば、表情で示すこともできるでしょう。ジャッジやエゴを離れて表現するのがポイントです。

素の言葉は、どれだけ知識を増やすかではありません。
むしろ、知識やエゴが増えるほど、表現はひねくれていくのです。



素の言葉とは自分のエゴをいかにそぎ落としていくかです。



禅の修行は、本当の自分に戻ることです。そのために、いかに素直に自分を出せるか。

禅の師匠である藤田一照さんの仏教塾に参加していて、坐禅の前に股関節のストレッチをしていたときのことです。

周りを見ると、さすが皆さんベターっと両膝がついています。心の中に動揺が走りました。少しでも曲げようと、ストレッチする手に力が入ってしまいます。

「赤野さんは、股関節が固いですね」と一照さんがみんなの前でおっしゃいました。

いつもだったら、恥ずかしくて恐らく顔を伏せていたでしょう。情けなくて、その場から逃げ出したくなっていたでしょう。言い訳をしていたかもしれません。なんでそんなことを言うのだろうと腹が立っていたかもしれません。

一照さんに認めて欲しい。これまでは、どこかそんな修行でした。

でも、なぜかこのときは違いました。
笑っていました。それも、最高の笑顔で。

自分の中の何が変わったのかは、分かりません。

そんなことをFacebookに書いたところ、めったに反応してくれない一照さんが珍しくコメントをくれました。

「僕の指摘を柔らかく受けとっていた時、いい表情してましたよ」

股関節は固いままですが、心が開いたように感じました。




素直な自分とは、心が開いています。一方でひねくれているとき、どんなにいいことを言っていても心は閉じています。

素直になるのは、難しいものです。

「今不安だ」「今悲しい」「今ワクワクしている」「今傷ついている」「今怖い」という素の感情は、とても繊細で脆いものです。

素の自分で出した言葉ほど、批判や否定されると傷つきます。傷つく経験を重ねる中で、人はだんだん素直な言葉を出さなくなります。そして、いつしか本当の言葉を忘れてしまうのです。




これも人に与えられた課題です。傷つき、そのままひねくれてしまうのか。それとも、もう一度自分を取り戻すのか。

論理はいくらでも議論できます。
一方で、湧き出てくる感情は議論できません。

素の自分は、議論の対象ではないのです。正解か不正解かもありません。本当の自分は、自分で探していくしかありません。

本当の自分を「ありのままの自分」と表現されることがあります。
「ありのまま」という表現が好きなコーチは多いです。私も以前は「ありのまま」という言葉をよく使っていました。確かにありのままというのは大事です。

私もそうでしたが、人に合わせて、気を遣いすぎていた人は、どこかで大きな反動がやってきます。人の気持ちよりも、まずは自分。自分のありのままを受け入れてほしいと願います。




ありのままに生きたい。




この願いは誰しも持っています。一度は、この「ありのまま」を通らないと、本当の言葉にはたどりつけません。だから、ワガママになっていいのです。嫌われてもいいのです。別れがあっていいのです。




ただ、「ありのまま」は偏っていきます。独りよがりになっていきます。自分の正直さを人に押しつけてしまったり。分かってくれない人をありのままを邪魔する存在として切り捨てたり・・・。

「ありのまま」もまだ本当の言葉への旅の途中なのです。




素の表現には、さらに戻るべき源泉があります。
それは「生かされている表現」です。
生かされている表現とは、「いのちから生まれる言葉」ともいえます。



2種類の坐禅があります。

1つ目は、心を落ち着ちつけるための坐禅です。呼吸に意識を向け、息の出入りをただ感じる。最近、瞑想するためのアプリがいろいろあります。誘導に従いながら自分の世界に入っていけます。

瞑想アプリを使っているクライアントさんも多いです。心が落ち着く。すぐに眠れるようになった。眠りが深くなって朝の目覚めがいいというような声を聞きます。

周りのさまざまな出来事に惑われていた状態から、今この瞬間にフォーカスできると穏やかさが戻ってきます。誰にも邪魔されず、自分の世界が深まっていくのは、とても興味深いです。

ただ、禅の師匠である藤田老師は、1人でする坐禅の危険性について指摘されていました。そのときはよく分からなかったのですが、1人で坐っていると、どうしても自分だけの世界に入っていきます。自分のありのままの心地よさを追求するようになると、周りと切れてしまいます。

この世界は、いのちの中にすべてがあります。「わたし」も「いのち」の中のひとつの働きです。

自分の世界だけの坐禅になると、残念ながら、いのちから離れた瞑想になるのです。




もう一つの坐禅は、周りの世界とつながっている坐禅です。見えているもの、聞こえてくる音、空気、身体の重さは重力の働き、すべてに生かされて、今ここに坐っています。周りを含めた自分自身を感じるのです。そして、人というのも周りにあるものです。もっとも煩わしく、そして愛おしい存在。

仏教では「サンガ」という集団で修行をします。お寺での修行は、いろいろ人間関係があったりして大変みたいですが、この人間関係の煩わしさも周りとの「ご縁」。好き嫌いではなく、それも含めて「わたし」が存在している。それを切ってしまうと、1人よがりな「ありのまま」になっていくということではないでしょうか。

坐禅は1人で坐っていると同時に、周りの世界と坐っているのです。これは、日常も同じです。私たちは1人であると同時に、周りの世界と生きている。これが生かされているということです。

生かされていると感じられたとき、自然に「ありがたい」という気持ちが湧き出してきます。あるいは、すべてが新鮮に感じられるかもしれません。

そういうとき、素の表現が生まれます。


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