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ZEMAITIS Early Prototype

1969年製 トニー・ゼマイティス作 貴重なプロトタイプエレキギターをご紹介

ゼマイティスの創始者であるアンタナス・カシミア・ゼマイティス(通称トニー・ゼマイティス)が、若かりし頃に始めてギターを製作したのは1955年だった。
友人から借りたタダイというブランドの安価なクラシック・ギターをコピーしたものだったが、物作りが大好きなトニーは誰の手ほどきを受けることなくギターを完成させた。
以来トニーはたびたびギターを自作するようになり、やがて家具職人を経てギター製作の道を歩み出した……。

1960年代になるとトニーが製作するアコースティック・ギターは、ロンドンのプロミュージシャンの間で話題となり、ギターのオーダーが徐々に入るようになる。
しかしそれらは全てアコースティック・ギターで、エレクトリック・ギターの製作に着手したのは、60年代末である。

常に新しい情熱を持つトニーは、エレクトリック・ギターがポピュラー・ミュージックの中心となりつつあるロンドンの音楽シーンを見つめながら、来るべき70年代に向けてエレクトリック・ギターの開発に力を注いだ。
そして70年代初頭に、華やかで個性的なゼマイティス・メタル・フロント・ギターが完成した。
ゼマイティスは当時の有名ロック・ギタリスト達の心を瞬く間に鷲掴みにし、世界中のギターマニアに注目される存在となった。
それまで一部のアコースティック・ギタリストにしか知られていなかった
ゼマイティスだが、70年代初前半には英国を代表するハンドメイド・エレクトリック・ギターとしてその名を轟かせ、華やかな英国の音楽シーンを彩った。

[ エレクトリック・プロトタイプ ]

今回紹介するゼマイティスは、トニーがエレクトリック・ギターの開発にあたり製作したプロトタイプの中の1本。
ロッド・スチュアートやピート・タウンゼンドのサポート・ギタリストとして知られるゲイリー・グレインジャーが愛用したもので、トニーが親しいゲイリーのために1969年に製作した最も初期のエレクトリック・ギターのプロトタイプである。
写真を見て分かるように、伝統的なシングルカッタウェイ・ボディを採用したデザインであるが、まだメタルフロント装飾などは見られない。
オリジナルは全体に黒い塗装が施されていたが、現在はトップの塗装が剥がされて木部が露出している。
ゼマイティスのエレクトリック・モデルはブラック・フィニッシュが多いが、プロトタイプの段階ですでに黒い塗装を採用していたことが分かる
(ボディ裏側の写真ではオリジナルのフィニッシュが見える)。

ピックアップやコントローラー部分を見ると、いかにもハンドメイド感が漂い、音作りに関して様々な実験が試みられた様子が窺える。
リアピックアップをよく見ると、アルミニウムのエスカッションの横にボディの空洞が見える。
実はこのギターはソリッドボディではなく内部がホロウ構造になっている。
2枚の板材をくり抜き、日本の最中菓子のように、その2枚を張り合わせているため一見ソリッドギターに見える。
このホロウ構造は、アコースティックを長年製作してきたトニー・ゼマイティスらしい発想と言えるだろう。
また写真では分かり難いが、ボディトップは緩やかなアーチ形状に加工されている。
これもゼマイティス・ギターの特徴のひとつで、このプロトタイプの段階からその試みが成されていた。

[ ピックアップと音作りの研究 ]

トニーは、製作するモデルやサウンド・コンセプト、年代などによって様々なピックアップを使用していた。
写真は一見2つのハムバッカーがマウントされているように見えるが、実は4つのシングルコイル・ピックアップを組み合わせている。
フロント位置の2つがフェンダー・ストラトキャスターとジャガーの組み合わせ、リアのブランドが不明だが一昔前のフェンダーのコピーモデルに搭載されていたようなピックアップの組み合わせのようだ。

トニーは、当初からいくつものピックアップを試しながら音作りの研究を行なっていた。
ゼマイティス・ギターにボルトオン・タイプは存在しないが、写真のジョイント部分には、メタルプレートとそれを固定する4本のボルトがセットされている。
これはどう見てもボルトオン・タイプだが、実はセットネックである。
ネック・プレートとボルトはダミーで、装飾の一部として付けられている。
これはトニーの遊び心が現れている仕様で、エレクトリックの初期には
これと同じ仕様のギターをいくつも製作しており、ロン・ウッドの所有するギターにも同じ装飾が見られる。

ネックはマホガニー製で、ヘッドストックはオリジナルの5ポイント・デザインが採用され、初期のギターに見られるシルバー製鏃型のエンブレムに風格が感じられる。

[ 歴史的なギターを見る ]

トニーはいくつかのプロトタイプを製作したのち、
70年代の初頭から本格的にメタルフロント・モデルの製作を開始した。

写真はそんなゼマイティス・ギターの礎となった貴重なプロトタイプの1本である。
このギターは、現在大阪のZEMAITIS / GRECO OSAKA SHOWROOMに展示されているので、興味がある人はぜひとも歴史的なゼマイティス・ギターをご覧頂きたい。

■ZEMAITIS / GRECO OSAKA SHOWROOM■
〒541-0057 大阪市中央区北久宝寺町2-6-10-201
(最寄り駅 大阪メトロ 本町駅 OR 堺筋本町駅 徒歩約7分)

TEL : 06-6241-1184 / FAX : 06-6241-1185
営業時間 12:00-20:00
デジマート:https://www.digimart.net/shop/5325/
X : https://twitter.com/zemagreco_osaka
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MAIL : zemaitis_greco_osaka@kandashokai.co.jp

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