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『マネーボール』 実話。ビジネスノウハウ本みたいな伝記モノ。

評価 ☆☆



あらすじ
ニューヨーク・メッツからドラフト1位の指名を受け、有望視されていたビリー・ビーン。現役時代は結果が出せず、いまはアスレチックスのゼネラルマネージャーをしている。現在、アスレチックスは資金難。チームの主力選手3名が他球団へと移籍してしまう。



リチャード・アッテンボロー監督の『ガンジー』を観たことがある。映画の出来よりも、ガンジーという人物像やその生きざまに感動した。こういうのってどうなんだろうか。映画がよくできているから感動したのか、人物の生きざまに感動したのか、よくわからない。



2011年公開の『マネーボール』も同じような印象を受けた。監督はベネット・ミラー、出演はブラッド・ピット、ジョナ・ヒルなど。これは野球の話ではなくてオークランド・アスレチックという弱小球団のジェネラルマネージャー、ビリー・ビーンの伝記映画。ビリー・ビーンという人間がどういう実績で、アメリカ社会に対してどれくらいインパクトを与えたか、それをアレンジして映画にしました、という感じ。



だから『もしドラ』や『メジャーリーグ』などの他の映画と比較しても意味がない。野球映画という括りで紹介して映画館に足を運ばされた観客は「?」と思うかもしれない。『マネーボール』はビジネス書や企業の成功例として読むべきテクスト。日本で最も苦手なターゲットとされている、映画館に来てもらえない30~50代のビジネスマンが客層の映画である。



生半可な作品では笑われる。ビジネスマンは空想物語に興味がない。リアルさを突き詰めたような観客が満足できるように作ってある。そのせいで、この映画は劇的な盛り上がりがあまりない。現実に近い。



そのせいだろう。『マネーゲーム』はアメリカらしからぬエンディングで終わる。まぁ、このところ『ダークナイト』と同じように、アメリカ映画も善か悪かの単純な二元論のエンディングが減っている。あれほどハッピーエンドが好きだったアメリカ映画が、である。これも時代の流れなんだろう。



ブラッド・ピットは嫌いな役者ではない。少なくとも自分で演技の幅を広げようといろんな作品に出演している点で好感が持てる。カッコイイ役しかやらない、という木村拓哉的あるいは田村正和的選択肢だってあったろうに。それはそれで哲学なんだけど。個人的にはいろんな役をやる俳優の方がなぜか好きだ。



こんな、といったら失礼なんだろうけど、地味で盛り上がりが微妙な映画でもしっかり主演として頑張っている。もっと評価されていいんじゃないだろうか。



それにしてもビリー・ビーンって短気なひとなんですね。僕も短気だけど、彼ほどではないです。彼みたいに怒るとイスを壁や窓に投げたことはない。一生に一度くらいは投げてみたいけど。絶対、後悔しそうだ。



初出 「西参道シネマブログ」 2012-11-09



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